目標を立てているという会社は少なくないものと想像しますが、それでも、99%の会社が立てていないであろう目標があります。それは何なのか?考え方や目安をふまえてお伝えします。
持続・成長を考えるうえで欠かせない
目標を立てているという会社は少なくないものと想像しますが、僕調べでは99%の会社が立てていない目標があります。さすがに99%は言い過ぎだろう、とおもわれるかもしれません。でも、このあと挙げる3つすべての目標を立てている会社を僕は見たことがないのです。とはいえ、それは僕が見ていないだけだろうという点もふまえて、99%としました。
では、99%の会社が立てていない3つの目標とは何なのか?次のとおりです。
- 預金の残高
- 借入の残高
- 利益剰余金
さて、あなたの会社ではこれらすべてについて目標を立てているでしょうか。いずれも、会社の持続・成長を考えるうえでは欠かせない項目です。しかし、なかには「これが目標になるのか?」と不思議におもわれるものもあるかもしれません。そこで本記事では、それぞれの目標の考え方や目安などをお伝えしていきます。
99%の会社が立てていない3つの目標
繰り返しになりますが、3つの目標はいずれも、会社の持続・成長を考えるうえでは欠かせない項目です。ゆえに目標を達成できれば、おのずと「よい決算書」に近づくので、銀行からの融資が受けやすくなり、資金繰りがより安定する効果も期待できます。
後述する、それぞれの目標の考え方や目安などを理解して、自社の目標を立ててみましょう。
預金の残高
99%の会社が立てていない3つの目標、1つめは「預金の残高」です。
たとえ赤字でも預金があれば会社はつぶれず、逆に、たとえ黒字でも預金がなければ会社はつぶれる。そういう意味では、預金は利益以上に重要だといえます。ところが、利益の目標は立てていても、預金の目標は立てていない会社がほとんどです。
では、目標としての目安をどのように考えればよいのか?
まずは、平均月商(年間売上高÷12か月)の2か月分を目指しましょう。それくらいの預金があると、資金繰りはスムーズにまわるはずです。逆にそれを下回ると、ちょっとしたことで資金不足を起こす可能性が高まります。
次の目安が、平均月商の3か月です。それくらいの預金があると、資金繰りにも余裕が出ますし、銀行からもそのように見られます。結果として、よい条件での融資提案も受けやすくなるため、資金繰りはさらによくなるものです。
そのうえで、平均月商の6か月分が最終的な目標になります。ここまでくると、新型コロナのような不測の事態が起きても慌てることなく、腰を据えて状況改善に取り組めますし、施策を実行するにあたっておカネをかけることも可能です。ところが、不測の事態におカネが少ないと、社長は大慌てですし、何か施策を実行しようにもおカネがない…ということになりかねません。
利益の目標とあわせて、預金の目標も立てましょう。
借入の残高
99%の会社が立てていない3つの目標、2つめは「借入の残高」です。
ここでいう借入とは、銀行からの借入金を指します。「借入=借金」と考えると、借金の目標を立てるなどおかしなハナシに聞こえるかもしれません。ですが、前述した「預金の残高」とからめて考えるのであれば、けしておかしなハナシではなないことがわかります。
預金を増やすには、利益だけでは不十分です。1年で出せる利益にも限りがありますし、その利益で預金の目標を達成しようとすれば、達成までに何年もかかってしまう…というケースがほとんどです。そのあいだに不測の事態などが起きて、会社がつぶれてしまえば元も子もありません。
そこで、銀行借入を活用します。銀行からおカネを借りて、預金の残高を増やすのです。いくら借りればよいかは、「預金の目標」と「いまの預金の残高」の差額から考えます。
もっとも、会社が借りたいからといって銀行が貸してくれるとは限らず、利益が出ているほど借りやすいし、預金が多いほど借りやすくなることは覚えておきましょう。
なお、預金の残高を増やすための借入(=借入してもすぐには使わないおカネ)であれば、「借りすぎ」ということはありません。たとえば、1,000万円借入すれば1,000万円の預金も増えるので、いつでも完済できる状態であり、1,000万円の借入はないのと同じだからです。
預金の残高を増やすための借入を、過度に恐れないようにしましょう。恐れるあまり預金が不足して、資金ショートを起こしているようでは、やはり元も子もありません。誤った「借りすぎの感覚」にならないためにも、預金の目標にもとづく借入の目標を立てましょう。
利益剰余金
99%の会社が立てていない3つの目標、3つめは「利益剰余金」です。
利益剰余金とは、貸借対照表の純資産の部を構成する勘定科目のひとつです。といっても、あまりよく見たことがないという社長が少なくありません。よって、利益剰余金の目標を立てている会社は皆無といってもよいでしょう。
ところが、利益剰余金は「債務超過」に関わるだけに重要です。債務超過とは「資産<負債」の状態をいいます。負債のほうが多いのですから危険だとわかりますし、実際、債務超過になると銀行からの融資が極端に受けにくくなるものです。
その「資産<負債」の状態とは、「純資産がマイナス」に置き換えることができます(「資産ー負債=純資産」なので)。そして、純資産は「資本金+利益剰余金」であることから、「資本金<利益剰余金のマイナス」になると債務超過です。
では、どうなると利益剰余金がマイナスになるのか?
そもそも利益剰余金とは、過去の税引後利益の累計額です。黒字であれば利益剰余金は増えて、赤字であれば利益剰余金は減ります。赤字が続けば利益剰余金はマイナスになり、そのマイナスの累計額が資本金を超えれば債務超過です。
だとすれば、債務超過を避けるためには利益剰余金が大きいほうがよいとわかります。目安として、まずは最低でも「赤字が2年続いても債務超過にならないくらい」です。
たとえば、資本金が300万円で、赤字が1年で500万円くらい出る可能性があるなら、利益剰余金の目標は700万円です。すると「資本金300万円+利益剰余金700万円=純資産1,000万円」なので、500万円の赤字が2年続いても債務超過(純資産がマイナス)は免れます。
同じように、次の目標は「赤字が3年続いても債務超過にならないくらい」です。3年連続赤字の確率は少ないでしょうから、それくらいの利益剰余金があれば、銀行からもひとまずは安心と見られます。そのうえで、さらに利益剰余金を積み上げることを目標にしてみましょう。会社の財務はより盤石になります。
まとめ
目標を立てているという会社は少なくないものと想像しますが、それでも、99%の会社が立てていないであろう3つ目標についてお伝えしました。
- 預金の残高
- 借入の残高
- 利益剰余金
いずれも、会社の持続・成長を考えるうえでは欠かせない項目です。それぞれの考え方や目安をふまえて、自社の目標を立ててみましょう。目標を達成できれば「よい決算書」に近づくので、銀行からの融資が受けやすくなり、資金繰りがより安定する効果も期待できます。