銀行融資における税務調査の注意点

銀行融資における税務調査の注意点

税務調査は、会社と税務署との問題であり、銀行には関係がないものと考えるのであれば間違いです。税務調査の有無や税務調査の結果は、銀行もまた気にしています。

目次

銀行が税務調査を気にする理由

社長が気になるものの1つに、税務調査が挙げられます。税務署が会社にやって来て、いろいろと調べられる。これは怖い…イヤだ…と感じている社長は少なくないものとおもいます。とはいえ、それは会社と税務署との問題であり、銀行には関係がないものと考えるのであれば間違いです。

なぜなら、銀行もまた融資先の税務調査を気にしているからです。

わかりやすい例を挙げます。融資先が「脱税」をしていたらどうでしょう?売上のいちぶをなかったことしたり、架空の費用を計上していたり。すると、実際よりも利益が減るので税金を減らすことができます。ですが、そんな悪事をはたらく会社に銀行がおカネを貸すわけにはいきません。

銀行は「社会の公器」とも呼ばれるものであり、脱税するような会社におカネを貸し続けていたら、社会から非難を浴びることになってしまいます。それでは銀行も困るのですから、融資先の税務調査の有無を気にしているし、税務調査があれば結果も気にしているのです。

また、税務調査によって「追徴課税」となれば、会社は納税にともない支出が増えることになります。結果、資金繰りに支障をきたし、借入返済が滞る可能性があるとすれば、これまた銀行にとっては気になるところです。よって、銀行は「税務調査があった」と聞けば、追徴税額はいくらなのかや、資金繰りの影響を心配することになります。

以上が、銀行が税務調査を気にする理由です。これをふまえて、このあとは次のお話をします。

  • 税務調査の結果を隠してはダメ
  • そもそも調査で追徴されぬよう

税務調査で問題があると、銀行にそれを隠そうとする社長がいます。ですが、それはダメだという話。それから、そもそも税務調査で追徴課税されないためにどうするかの話です。順番に確認していきましょう。

税務調査の結果を隠してはダメ

税務調査で問題があると、銀行にそれを隠そうとする社長がいるといいました。黙っていれば銀行にはわからないのではないか、との考えです。が、それは間違いだといえます。

追徴課税が発生すると、前期の申告書と翌期の申告書のあいだに「ズレ」が生じるのです。そのズレを埋めるのが「修正申告書」であり、追徴課税の手続きとして作成されます。ですから、銀行は修正申告書がなくとも、翌期の申告書を見たときにズレに気づき、税務調査(追徴課税)があったことに気づけるのです。

だったら気づかれたときに事情を説明すればいい、それまでは黙っていよう。という考えもあるかもしれませんが、おすすめできません。銀行に問われてから話をするようでは、「隠そうとしていた」とみなされても文句はいえないからです。

したがって、銀行に対しては税務調査が完了した段階で、修正申告書を提示しながら事情を説明するのがよいでしょう。もちろん、脱税は許されるものではありませんが、経理ミス・判断ミスによる追徴課税もあるでしょうから、そういったものであれば銀行の理解を得られることもあります。

その場合であったとしても、銀行から問われるより前に、会社のほうから自主的に伝えるほうが誠意を感じてもらえるというものです。結果として、銀行の理解も得やすくなるでしょう。

なお、銀行に税務調査の説明をするときには、追徴課税が生じた理由(故意や悪意による脱税ではないことを伝えるのが大事)のほか、今後は同じような経理ミス・判断ミスが起きないようにするための対策、追徴税額の納税による資金繰りの影響などを伝えるようにします。

税務的に専門性が高い内容が含まれるのであれば、銀行への説明に顧問税理士に立ち会ってもらうのがよいでしょう。

そもそも調査で追徴されぬよう

なぜ追徴課税されるような事態になってしまうのか?

「目先の納税を惜しんで、ついつい脱税」というケースがあります。利益が多いほど納税額は増える。だったら、売上のいちぶをなかったことにしたり、架空の費用を計上したりと考えるわけです。

そこまでの酷さはないものの、今期計上すべき売上を翌期計上にする、翌期計上すべき費用を今期計上するなども、脱税行為という点では変わりません。

したがって、目先の納税を惜しまないことを考えましょう。目先の納税を惜しむ原因のひとつは、資金繰りが厳しいからです。であれば、納税資金として融資を受けることを検討しましょう。当初、正しい申告であれば、そのときに納税額分の融資を受けることは可能です。

納税資金について、くわしくは別記事で書きました↓
賞与と納税は分割払いにすれば資金繰りはラクになる

いっぽうで、当初の申告で脱税をはかり、のちに追徴課税となると、そのときの納税額を銀行から融資を受けることはできません。ペナルティ的な税金のために銀行がおカネを貸せないのはわかるでしょう。

つまり、同じ税金であっても、当初の申告時か税務調査時かで融資の可否は変わります。目先の納税を惜しんで脱税するのではなく、納税資金の融資を検討しましょう。

また、目先の納税を惜しむ原因として、「想定外だった」も挙げられます。そんなに利益が出るとはおもっていなかった、そんなに納税することになるとはおもっていなかったという場合にも、脱税しやすくなるものです。

したがって、ふだんから決算予測をしておき、決算での利益や納税額をイメージしておくのがよいでしょう。すると、決算になってから慌てて脱税…ということも避けられるはずです。

まとめ

税務調査は、会社と税務署との問題であり、銀行には関係がないものと考えるのであれば間違いです。税務調査の有無や税務調査の結果は、銀行もまた気にしています。脱税するような会社に融資はできないし、追徴課税による資金繰りへの影響も心配だからです。

これをふまえて、以下のお話をしました。

  • 税務調査の結果を隠してはダメ
  • そもそも調査で追徴されぬよう

税務調査の結果は、会社のほうから自主的に銀行へ説明をするのがおすすめです。また、税務調査で追徴課税とならないように、当初の申告時に納税資金の融資を受けたり、決算予測を怠らないようにしましょう。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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