銀行融資の借り忘れに注意

実際には意外と多い、銀行融資の借り忘れ。その時点では利益が出ていたり、おカネもあったりするものなので、「借りる必要がない」と考えがちなところに原因があります。要注意です。

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赤字は借りる理由にあらず

会社の銀行融資について、注意すべきこととして「借り忘れ」が挙げられます。ここでいう「借り忘れ」とは、借りれるときに借りないことです。借りれるときというのは、借りる理由があるときであり、銀行融資は借りる理由がなければ借りられないことを忘れてはいけません。

よって、借りる理由があるときには借りず、あとになって借りる理由がなくなってから「やっぱり借りておけばよかった…」というのは借り忘れです。

ちなみに、赤字は借りる理由になりません。赤字になって資金繰りが厳しいので借りたいというのは、ケースとしては多いものの、銀行からしてみれば貸す理由にはならないのです。赤字の会社には返済力(=利益)がないからということであり、だとすれば、黒字のうちには借りずに赤字になってから借りようとするのもまた借り忘れだといえるでしょう。

いっぽうで、黒字であっても借り忘れはありえます。ぜんぶで3つ、次のとおりです。

  • 設備資金
  • 増加運転資金
  • 納税・賞与資金

このあと、順番に解説していきます。借り忘れがあると、その分だけ資金繰りは厳しくなるので注意が必要です。

銀行融資の借り忘れに注意

実際には意外と多い、銀行融資の借り忘れ。いずれも、その時点では利益が出ていたり、おカネもあったりするものなので、「借りる必要がない」と考えがちなところに原因があります。いまは借りる必要がなくても、資金繰りは長期で考えることが大切です。

冒頭でもふれたとおり、せっかく借りる理由があるときを逃さないようにしましょう。

設備資金

銀行融資の借り忘れ、1つめは「設備資金」です。

設備資金とは、設備投資をするためのおカネです。工場を建てるとか、機械を買うとか。その設備資金は、銀行からおカネを借りる理由になります。ところが、自己資金で設備投資をするような会社はあるものです。預金が多い会社にその傾向が見られます。

設備投資の成果が十分であればよいのですが、見込みどおりの成果を得られなければ、資金繰りに影響することはあるでしょう。そのときになって、銀行に「やっぱり貸して」は通用しません。設備資金の融資は、設備投資をするタイミングでしか受けられないのです。

設備資金は額が大きいだけに気をつける必要があります。見込みどおりにいかないことも想定すれば、設備資金は銀行融資でまかない、自己資金は温存しておくのが賢明です。借入し続けるのはイヤだというのであれば、見込みどおりにいったところで繰上返済すればよいでしょう。

繰り返しですが、設備資金は額が大きいだけに気をつける必要があります。いまはおカネがあるとしても、設備投資におカネを使えばおカネは大きく減るのです。会社を守る一番の方法は、預金残高をできるだけ高く維持することにあります。預金を減らさないようにしましょう。

増加運転資金

銀行融資の借り忘れ、2つめは「増加運転資金」です。

増加運転資金とは、売上の増加にともない増加する運転資金をいいます。運転資金を算式であらわすと、「売掛金+棚卸資産−買掛金」です。その運転資金は、売上が増加すればあわせて増加するものであることを覚えておきましょう。

運転資金とは、いうなれば「不足するおカネ」です。売掛金や棚卸資産は入金を待っている状態であり、売掛金や棚卸資産が多いほど資金繰りは厳しくなります。いっぽうで、買掛金は支払を待ってもらっている状態であり、買掛金が多いほど資金繰りはラクになります。

この点、売上が増加すれば、売掛金や棚卸資産は増えるものであり、買掛金も増えはしますが、売掛金や棚卸資産ほどではありません。結果として、売上が増加すると運転資金も増加します。その増加分が増加運転資金です。

増加運転資金もまた、銀行から融資を受ける理由になります。ところが、借り忘れている会社はあるものです。売上が増えているのだから資金繰りだってよくなるはずだ、と考えている社長は気をつけなければいけません。売上が急増している会社ほど、資金繰りは厳しくなります。

納税・賞与資金

銀行融資の借り忘れ、3つめは「納税・賞与資金」です。

納税・賞与資金とは、文字どおり、納税や賞与を支払うためのおカネをいいます。これらもまた、銀行から融資を受ける理由になります。ですが、おカネを借りてまで納税をするなんて、おカネを借りてまで賞与を支払うなんて、と考える社長は少なくないようです。

結果、自己資金で納税をしたり、賞与を支払ったりすることで資金繰りを悪くしています。逆に、融資を受ければ、納税も賞与も実質的な分割払いが可能です。借りたおカネで納税や賞与は一括払いしますが、会社は銀行に対して毎月分割返済ですむからです。すると、融資を受けない場合に比べて、預金残高を高く維持できるので、会社の資金繰りはより安定します。

やはり、あとになってから「やっぱり貸して」は通用しません。自己資金で納税、自己資金で賞与を支払っておきながら、あとになって資金繰りが悪くなってからでは借りられないのです。借りる理由があるタイミングを逃さないようにしましょう。

ちなみに、納税や賞与の支払いに利息を負担するなんて…と考えるかもしれませんが、この場合の借入は短期であり、金利も低めに抑えられることから、金額にしてみればそれほど大きな負担ではないはずです。わずかな利息よりも、預金残高の維持を優先しましょう。

まとめ

借りる理由があるときには借りず、あとになって借りる理由がなくなってから「やっぱり借りておけばよかった…」というのは借り忘れです。実際には意外と多い、銀行融資の借り忘れを3つ挙げました。

  • 設備資金
  • 増加運転資金
  • 納税・賞与資金

これらはいずれも、その時点では利益が出ていたり、おカネもあったりするものなので、「借りる必要がない」と考えがちなところに原因があります。要注意です。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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