運転資金として借入したおカネを設備投資に充てるのは問題です。安易に考えていると大きな後悔を招きかねません。どのような問題が起きうるのかを理解しておきましょう。
安易に考えていると大きな後悔を招くかも
会社の銀行融資について、運転資金として借入したおカネを設備投資に充てるのは問題です。また、問題は多岐にわたることから、安易に考えていると大きな後悔を招きかねません。問題はぜんぶで3つ、次のとおりです。
- 資金使途違反とみなされる
- 運転資金の借入に影響する
- 返済期間が短く返済困難に
これらの問題を理解することで、運転資金として借入したおカネを設備投資に充てない動機づけとしましょう。言い換えると、設備投資に必要なおカネは、設備資金として借入をすることです。
運転資金の借入を設備投資に充てる問題点
本来、設備資金として借入をすべきところ、運転資金として借入したおカネを設備投資に充ててしまう理由として、運転資金で借りるほうがラクだからというものがあります。しかし、ラクをすれば、あとで問題が起きることを忘れてはいけません。3つの問題点を確認していきます。
資金使途違反とみなされる
運転資金の借入を設備投資に充てる問題点、1つめは「資金使途違反とみなされる」です。
銀行から借入するときには、資金使途が必要になります。資金使途とは、借りたおカネの使いみちであり、大きく分けると「設備資金」と「運転資金」です。このうち設備資金は、設備投資のためのおカネであり、運転資金は設備資金以外のおカネ(仕入代金や経費の支払いなど)をいいます。
したがって、これらの資金使途を当初の約束と違えることは許されません。融資を受けるときには運転資金としておきながら、のちに設備投資におカネが使われれば、銀行からは資金使途違反とみなされる可能性があります。最悪の場合には一括返済を求められ、それを免れたとしても次回以降の融資は断るようになるのが銀行の基本スタンスです。銀行としては、また資金使途違反をされるのではたまりませんから当然の対応でしょう。
なお、資金使途違反かどうかを判断するのは銀行です。おカネには色はないので、会社は「自己資金を使った」と主張をするのかもしれませんが、借入直後のタイミングで設備投資をしていれば、借入したおカネを使ったと考えるのが自然でしょう。いずれにせよ、融資の判断をするのは銀行であることを忘れていはいけません。
運転資金の借入に影響する
運転資金の借入を設備投資に充てる問題点、2つめは「運転資金の借入に影響する」です。
運転資金の借入とはおもに、経常運転資金をいいます。算式であらわすと「売掛金+棚卸資産−買掛金」です。これは会社が立て替える必要があるおカネであり、それだけのおカネがなければ資金繰りは回らなくなってしまいます。ゆえに、経常運転資金分のおカネを、銀行から借入するわけです。
では、経常運転資金として借入したおカネを、設備投資に使ってしまったらどうなるでしょう?当然、資金繰りは厳しくなります。経常運転資金分のおカネが、手元に残っていないからです。では、経常運転資金分のおカネをまた借入できるのかといえば、それはできません。
なぜなら銀行は、貸したおカネが運転資金か設備資金かを把握しています。仮に、運転資金として「売掛金+棚卸資産−買掛金」の額いっぱいまで貸していれば、それ以上は運転資金として融資することができないのです。
したがって会社は、運転資金として無制限に借りられるわけではないことを覚えておきましょう。前述したとおり、運転資金として借入したおカネを設備資金に充ててしまえば資金繰りは厳しくなり、さらには資金使途違反によって融資が受けられないとなれば致命的です。
返済期間が短く返済困難に
運転資金の借入を設備投資に充てる問題点、3つめは「返済期間が短く返済困難に」です。
運転資金の借入と設備資金の借入は、返済期間の長さに違いがあります。端的にいえば、運転資金の借入のほうが返済期間は短く、設備資金の借入のほうが返済期間は長いのです。厳密には、設備資金の借入は、対象設備の法定耐用年数に返済期間をあわせることになります。
にもかかわらず、設備投資にあたり運転資金で借りたおカネを充てるとどうなるか?設備資金の借入本来の返済期間よりも、だいぶ短い期間で返済することになります。このような状況もまた、資金繰りを厳しくすることを覚えておきましょう。
それでも、設備投資の成果(利益)が十分に出ていればまだよいですが、成果が不十分である場合には、いっそう資金繰りは厳しくなります。したがって、設備投資はその成果が不十分であるケースも想定して、きちんと融資を受けておくことが大切です。つまり、資金使途は設備資金として、長い返済期間で融資を受けるということです。
まとめ
運転資金として借入したおカネを設備投資に充てるのは問題です。安易に考えていると大きな後悔を招きかねません。どのような問題が起きうるのかを理解しておきましょう。
- 資金使途違反とみなされる
- 運転資金の借入に影響する
- 返済期間が短く返済困難に
これらの問題を理解することで、運転資金として借入したおカネを設備投資に充てない動機づけとしましょう。言い換えると、設備投資に必要なおカネは、設備資金として借入をすることです。