個人事業主だから銀行融資は必要ない、といった意味合いの話を耳にすることがありますが。本当にそうなのでしょうか?少なくとも一度は、融資を検討してみるのがよいでしょう。
一度は融資を検討する
個人事業主だから銀行融資は必要ない、といった意味合いの話を耳にすることがあります。会社(法人)などに比べると商売の規模が小さく、それほどおカネもかからない。人を雇っているわけでも、大きなオフィスを借りているわけでもないしね。と、そんな感じです。
しかし、だからといって、「個人事業主が銀行融資は必要ない」といえる理由にはならないのではないか?と、僕は考えています。事実、僕は個人事業主ですが、できるだけの銀行融資を受けてもいます。人も雇っていませんし、オフィスを借りてもいないのにです。
そこでこのあと、次のようなお話をしてみることにします。
- 法人も個人も関係ない
- むしろ個人事業主こそ
- 借りれないことはない
じぶんは個人事業主であり、銀行融資なんて必要ない。そうおもわれている人にこそ、ご一読をいただきたい内容です。もちろん、それでも必要ないというのであれば、それもまたひとつの考え方です。いっぽうで勘違いがないように、一度は融資も検討してみるのがよいでしょう。
本記事が、そのきっかけになればと考えています。
法人も個人も関係ない
そもそも、法人(会社)に対して銀行融資を僕がおすすめする一番の理由は、「おカネが尽きたらおしまい」だからです。商売でどれだけ利益が出ていようと、おカネが尽きればおしまいです。
でも、利益が出ているのにおカネが尽きるなどありえるのか?
ありえます。利益とおカネの動きは必ずしも一致しないからです。たとえば、どれだけ売上が増えて利益が増えようとも、売上代金を回収できなければおカネは増えません。その顕著な例が黒字倒産です。
そして、この話は法人であろうと個人事業主であろうと関係ありません。法人と同じように、個人事業主であっても、「おカネが尽きたらおしまい」です。だとすれば、個人事業主だから銀行融資は必要ないとのハナシが成り立たないことはわかるでしょう。
また、おカネの役目は「守り」だけではありません。おカネには「攻め」の役目もあります。たとえば、設備投資や自己投資です。
個人事業主でも、パソコンなどのIT機器や、ソフト・アプリなどは必要でしょう。最近では、AI関連のサブスクなどもあります。ですが、おカネがないからとケチっていたらどうなるか?
ムダに生産性を下げていたり、自己成長の機会を失っていることはあるはずです。したがって、将来を見据えて設備投資や自己投資をするという「攻めの姿勢」は重要なのであり、そのためにおカネが必要になります。このとき、銀行融資で借りたおカネを活かせるとよいでしょう。
もちろん、借りたおカネは返済が必要ですが、設備投資や自己投資によって上がった生産性や、自己成長の成果によって返済に困ることはないという前提です。逆に、設備投資や自己投資を惜しめば、将来の売上・利益が尻すぼみ…というおそれがあります。
むしろ個人事業主こそ
個人事業主であっても、「おカネが尽きたらおしまい」だといいました。これは、法人よりもむしろ個人事業主こそ気をつけるべき点でしょう。いうまでもなく、個人事業主には「組織」といった後ろ盾がなく、個人事業主に何かあれば途端に商売に支障をきたすからです。
僕自身、ひとりで事業をしていますので、「何かあれば」の恐怖とは常にとなりあわせの状態にあります。病気になったら、ケガをしたら…当然、なるべくそうならないように気をつけてはいるものの、完全に避けきれるものではありません。
では、備えとして何が必要か?
欠かせないものがおカネです。病気やケガで仕事ができないあいだも、おカネがあればしのぐことができます。法人(組織)であれば、他の社員が代わりに仕事をしてくれるかもしれませんが、個人事業主の場合には、代わりがいないことも多いでしょう。だとすれば、しのぐためのおカネが必要です。
ならば預金がある、とおもわれるかもしれません。ですが、それは虎の子としてさいごのさいごに出すべきものです。代わりに、ふだんから銀行融資を受けていれば、その分だけのおカネが増えるので、虎の子をより温存することができます。事業を続けたければ、少しでも「事業を続けられる確率を上げる」ことです。
銀行融資は、そのための1つの手段になります。ちなみに、いざとなってから銀行融資を受けるのは困難です。ましてや、ふだんから銀行とのお付き合いもないのでは、いざとなってから借りるなど不可能だといえます。だから、いざというときのために、あらかじめ融資を受けておくのです。
借りれないことはない
しかし、個人事業主が銀行融資を受けることはできるのか?法人に比べて、個人事業主は融資が受けにくいというハナシも耳にします。たしかに、そういった一面はありますが、絶対に借りられないわけではありません。借りるにあたって気をつけるべきことは別記事で書きました。
そして、個人事業主が融資を受けるのに適した金融機関もあります。それが、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)です。日本公庫には「民間金融機関を補完する」という役割があります。つまり、民間金融機関が融資を躊躇するような状況でも、日本公庫なら融資をすることはあるわけです。
個人事業主の融資は、その典型だといってよいでしょう。民間金融機関からすると、1件あたりの融資額も小さく、そのうえ回収不能リスクも高い個人事業主への融資は躊躇しがちです。いっぽう、日本公庫は個人事業主にも積極的に融資をおこなっています。
ですから、個人事業主であればまずは、日本公庫に融資の申込みをするのがおすすめです。融資を受けるには「資金使途(おカネの使いみち)」が求められますが、前述の設備投資や、運転資金(日常の経費の支払い)の確保といった資金使途が挙げられます。
なお、日本公庫は一度借入をして、その後の返済実績ができると、次の融資が受けやすくなります。いざとなってから日本公庫に駆け込むのではなく、あらかじめ借入をしておくことで、次の融資を受けやすくしておくことも考えましょう。
まとめ
個人事業主だから銀行融資は必要ない、といった意味合いの話を耳にすることがありますが。本当にそうなのでしょうか?少なくとも一度は、融資を検討してみるのがよいでしょう。
融資の必要性を勘違いしているということもありえます。本記事が、その勘違いに気づくきっかけになればとの考えです。銀行融資の必要性を考えるとき、法人も個人も関係ありません。むしろ、個人事業主こそ必要性が高い一面もあります。
そして、個人事業主であっても借りやすいしくみは用意されているのです。繰り返しになりますが、少なくとも一度は、融資を検討してみましょう。