いざ、借りれるチャンスが巡ってきても、「いくら借りればいいか」がわからないとチャンスも活かしきれません。というわけで、「いくら借りればいいか」の考え方をお伝えします。
借りられるだけ借りましょう
会社の銀行融資について。いくら借りればいいか?と聞かれたら。借りられるだけ借りましょう、というのが本音です。これは「自由なおカネをできるだけ多く持つ」ためとはいえ、身も蓋もない回答ではありますから、もう少していねいに考えてみることにします。
そのうえで回答するのであれば、次のとおりです。
- 年間返済額分を期首に確保する
- 経常運転資金+月商1か月分まで
- それでもまだ貸すというなら借りる
これだけを見ても「?」ということだとおもいますので、このあと、順番に解説していきます。いずれにせよ、「いくら借りればいいか」を社長が把握しておくのは大事なことです。いざ、借りれるチャンスが巡ってきても、「いくら借りればいいか」がわからないとチャンスも活かしきれません。
銀行から借りるには、「借りる理由(=資金使途)」も必要だからですね。というわけで、「いくら借りればいいか」の考え方を確認していきましょう。
年間返済額分を期首に確保する
社長が、自社の資金繰りを考えるうえで、まず押さえておきたいのは「向こう1年の年間返済額分(のおカネ)を期首に確保する」ことです。
たとえば、毎月100万円の返済があるのなら、年間返済額は1,200万円です。このとき、1,200万円の税引後利益(正確には、税引後利益+減価償却費)がないと、手元のおカネを取り崩しながら返済を続けることになります。放っておけば、いずれ資金ショートです。
この点、期首に1,200万円の銀行借入ができていたとしたらどうでしょう?もし、今期の利益がゼロになってしまっても資金繰りはまわります。これは、社長にとっての安心材料にもなるでしょう。実際、向こう1年は資金繰りの手間も減るので、社長は経営に集中しやすくなるのはメリットです。
とはいえ、「銀行が1,200万円を貸してくれるのか?」とおもわれることでしょう。前提条件しだいではありますが、貸してもらうことは十分に可能です。では、その前提条件はといえば、「返済に滞りがないこと」と「利益が出ていること」が挙げられます。
銀行にとって、返済実績は信用です。よって、過去の返済に滞りがないことで、銀行は「いま返済できているくらいは貸してもいいかな」と考えます。だとすれば、「向こう1年の返済分くらいのおカネをまた貸して」というハナシも通用するわけです。
また、直前の決算で利益が出ていれば、銀行は返済力にも安心感を持てますから貸しやすくなります。ちなみに、この「年間返済額分の借入」は決算直後に相談するのがポイントです。決算から時間が立てば、銀行は足元の業績(試算表)も気になります。
このとき、決算が黒字でも試算表が赤字だと、銀行は融資をしづらくなるものです。したがって、黒字の決算書ができたら(税務申告がおわったら)、すぐに借入の相談をしましょう。
経常運転資金+月商1か月分まで
次に考えたいのが、経常運転資金分の借入です。経常運転資金とは算式であらわすと、「売掛金+棚卸資産−買掛金」であり、これは会社が事業を続ける限り立て替える必要あります。つまり、経常運転資金分のおカネがないと、資金繰りは苦しくなるのです。
経常運転資金は、算式からもわかるとおり「売掛金」や「棚卸資産」といった「現金化できる資産の裏付け」があるため、銀行も経常運転資金分の融資はポジティブに考えています。よって、経常運転資金分のおカネは借りておくのが、財務のセオリーです。
乱暴な表現をするのであれば、「借りれる理由があるなら借りておけ」ということになります。冒頭でもふれたとおり、銀行からは「借りる理由」がなければ借りれないのですから、借りる理由があるときに借りておくのは、けしておかしなことではありません。
そのうえで、経常運転資金分のおカネを借りるときには、「月商(年間売上高÷12か月)」の1か月分くらいのおカネもあわせて相談してみるのがよいでしょう。これは「余裕資金」という位置づけです。
経常運転資金分のおカネだけを借りるのでは、言うなれば「ギリギリ」の状態であり、あともう少しのおカネがあれば、余裕をもった資金繰りができます。そこは銀行もわかっていますから、余裕資金も運転資金のいちぶとして、融資をしてくれることはあるわけです。
ただし、ここでもまた「利益が出ていること」が条件になります。逆に、利益が出ていない赤字の会社となれば、余裕資金もなにもありません。貸したらすぐに使われてしまい、返済してもらえない。だったら貸すことはできない、と銀行が考えるのは当然でしょう。
それでもまだ貸すというなら借りる
ここまで、年間返済額分を借りる、経常運転資金(余裕資金含む)を借りる、という話をしました。それでもまだ、銀行が貸すというのなら借りるという考え方があります。
そもそも、それでもまだ貸すなどということがあるのか?銀行の「思惑」しだいです。銀行には営業目標もありますから、「もっと貸したい・貸さねば」というタイミングはあります。ゆえに、銀行のほうから融資提案をしてきた、という経験がある社長もいるでしょう。
もちろん銀行は、誰でもいいから貸したいなどとは考えません。よい会社だから、きちんと返済してくれる会社だから貸したいと考えます。いまのように、金利上昇局面にあるときなどはなおさらです。よって、よい会社は今後も借りれるチャンスは増えるものと考えます。
よい会社とは?端的にいえば「利益が出ていること」です。この話は、今回なんどもしています。銀行からおカネを借りるためには「利益が出ていること」が本当に重要なのです。
そんなのあたりまえだ、とおもわれるかもしれません。でも、そのいっぽうで、コストが上がっているのに値上げを躊躇したり(結果として利益が減る)、目先の税金を惜しんでみずから利益を減らしている会社があるのも事実です。あたりまえだと「思う」のと「実行」するのとは違います。
話を戻して、銀行のほうから融資提案があったら借りましょう。銀行が貸したいタイミングは、ずっと続くものでもないからです。なお、このとき「借りる理由」があるほうが、銀行はより貸しやすくなります。
たとえば、売上増加が見込まれるならそう伝えましょう。売上が増えれば経常運転資金も増えるので、それが借りる理由になります。また、人材採用を考えているならやはり伝えましょう。採用費・教育費などもまた借りる理由になります。よって、社長は自社の資金ニーズを把握しておくことが大切です。
まとめ
いざ、借りれるチャンスが巡ってきても、「いくら借りればいいか」がわからないとチャンスも活かしきれません。というわけで、「いくら借りればいいか」の考え方をお伝えしました。
- 年間返済額分を期首に確保する
- 経常運転資金+月商1か月分まで
- それでもまだ貸すというなら借りる
銀行から借りるには、「借りる理由(=資金使途)」も必要です。というわけで、「いくら借りればいいか」の考え方を理解しておきましょう。