「もっと早く相談してくれていたら…」と言えば、「そこを何とかするのが、あなたの仕事でしょう?」とおもわれるかもしれません。はたしてそうなのか?というお話をしていきます。
もっと早くを判断するのは誰
銀行融資のご相談をお受けするなかで、「もっと早く相談してくれていたら…」と感じることがあります。
と言えば、「そこを何とかするのが、あなたの仕事でしょう?」とおもわれるかもしれません。ですが、それでも僕は「もっと早く」を判断するのは社長の仕事であり、その判断が遅れた挙げ句に、「そこを何とかするのが、あなたの仕事」だとするのは責任転嫁だと考えています。
誤解のないように申し添えると、「相談をするのが悪い」と言っているのではありません。そうではなくて、社長は「相談が遅れた責任とデメリット」を理解しましょうということです。でなければ、のちにまた同じこと(慌てて相談)が起きてしまいます。
いっぽうで、相談を受ける側が「何とかできる」と考えるのも危険です。つまり、「もっと早く相談してくれていたら…」と感じつつも、「何とかできるはずだし、それがじぶんの仕事だ」と考えるのはやめたほうがいい。僕はそう考えています。
そのあたりを、このあと順を追って説明していきます。内容としては次の3つです。
- 言ってくれなきゃ未知の存在
- 打ち手が限られてもいいのか
- 何とかできるなどただの過信
はじめの2つは、おもに社長に関することです。さいごの1つは、相談を受ける側に関することです。ひとつの考え方として、いちどご確認をいただければとおもいます。
言ってくれなきゃ未知の存在
冒頭、社長は「相談が遅れた責任とデメリット」を理解しましょうと言いました。このうち、まずは「相談が遅れた責任」のお話をします。
単発のご相談を前提とする場合(継続的な接点がない場合)、相談をいただくまでは、その相談者の存在を認識することはできません。僕であれば、ご相談をいただかない限りは、お客さまの存在を知ることができない。言ってくれなきゃ未知の存在なのです。
だとすれば、僕の側(相談を受ける側)から「もっと早く相談しましょう」「いまが相談のタイミングですよ」などと直接お伝えすることができないことはわかるでしょう。相談のタイミングは、社長(相談をする側)が主導権を握っているのです。
だから、「もっと早く」を判断するのは社長の仕事であり、その判断が遅れたのであれば社長の責任だということになります。にもかかわらず、「そこを何とかするのが、あなたの仕事でしょう?」とするのであれば、それは責任転嫁だと考えるわけです。
ちなみに、「もっと早く」とは「利益が出ているうち、おカネがあるうち」を指します。逆に、「利益が出なくなり、おカネもなくなった」のでは遅いということです。
しかし、利益が出ているうち、おカネがあるうちに相談をするなど「早すぎる」のではないかと考えるのであれば、それは違います。次に、そのお話をしましょう。
打ち手が限られてもいいのか
利益が出ているうち、おカネがあるうちに相談をするのが「早すぎる」ことはありません。なぜなら、早ければ早いほど、採れる「打ち手」は増えるからです。逆に、遅ければ遅いほど、採れる打ち手は限られていきます。これが、社長が理解すべき「相談が遅れたデメリット」です。
相談が遅れた場合でも、「そこを何とかするのが、あなたの仕事でしょう?」と言われれば、たしかにその一面はあります。相談を受ける側は、じぶんの仕事として「何とかしよう」と考えるものです。しかし、それでも「打ち手が限られる」ことに変わりはありません。
たとえば、利益が1,000万円のときと、利益がマイナス1,000万円のとき、どちらが融資を受けやすいかは言うまでもないでしょう。当然、前者です。だから、相談をするなら前者のタイミングのほうが打ち手が増えます。
いやいや、それだけ利益が出ていれば問題はないし、相談をする必要がないでしょう?と、おもわれるのであれば、それは間違いです。利益が出ていて融資を受けやすいのであれば、銀行との交渉の余地も増すのですから、「よりよい条件で・いまのうち」に融資を受けておく、というアドバイスができます。そのタイミングで相談があれば、ですが。
ところが、社長に「もっと早く(相談をする)」という考えがないと、「困ってから(利益が出なくなり、おカネもなくなってから)」相談をすることになってしまいます。結果として打ち手が限られ、融資が受けられたとしても条件が悪くなる。ひいては、資金繰りも悪くなります。
したがって、困っていないうちに相談をするのがおすすめです。ヒトでいえば、健康診断のイメージであり、悪くなる前に改善すべきポイントを見つけましょう、ということになります。
何とかできるなどただの過信
ここまでは、おもに社長(相談をする側)に関する話をしました。さいごに、相談を受ける側に関する話をします。
冒頭、相談を受ける側が「何とかできる」と考えるのも危険だと言いました。つまり、「もっと早く相談してくれていたら…」と感じつつも、「何とかできるはずだし、それがじぶんの仕事だ」と考えるのはやめたほうがいい。なぜなら、それは「ただの過信」だからです。
言うまでもないことですが、相談を受ける側も万能ではありません。すべてのケースにおいて、すべての会社を救うことができる!などということはありえません。たとえば、何期にもわたり大きな赤字が続いている会社や、明らかに粉飾決算をしている会社が融資を受けるのは困難です。
極端な例を挙げましたが、とにもかくにも、すべての会社を救えるわけではありません。そもそも、じぶん(相談を受ける側)には直接コントロールできない要素はたくさんあるのです。
融資の可否を決めるのは銀行であり、銀行をコントロールすることはできません。利益を増やすために売上を増やすにはお客さまを増やすことで、お客さまをコントロールすることもできないわけです。銀行には銀行の意志があり、お客さまにはお客さまの意志があります。
だとすれば、いかなる場合においても「何とかできる」と考えるのは過信なのです。それでも、できるだけ何とかするためには「早く相談してもらう」ことだと僕はおもっています。
だから僕は、「もっと早く」に気づいてもらえるようにこうして発信もしているし、相談をお受けるするなかで「次からはもっと早く相談をしましょう」ともお伝えをしているところです。
まとめ
「もっと早く相談してくれていたら…」という言葉の裏側には、社長(相談をする側)と相談を受ける側、それぞれに求められる責任と姿勢があります。
相談のタイミングを決めるのは社長です。そして、そのタイミングが遅れれば遅れるほど、採れる打ち手は減っていきます。「まだ大丈夫」と思っているうちに、手遅れになってしまうこともあるのです。
いっぽうで、相談を受ける側も、「何とかするのが自分の仕事だ」と過信するのは危険です。万能ではないからこそ、早めの相談こそが力を発揮できる条件になります。
だからこそ、「もっと早く」に気づくこと。すると、社長はよりよい経営判断につながり、相談を受ける側はよりよいアドバイスができるものと考えます。