銀行融資を受けやすいベストタイミングはいつ?

銀行融資を受けやすいベストタイミングはいつ?

銀行融資を受けやすいタイミングがあるし、受けにくいタイミングもあります。そこで、融資を受けやすいベストタイミングと、逃してはいけないタイミングについてお伝えします。

目次

融資の受けやすさはタイミングによる

いきなりですが結論、銀行融資はいつでも受けられるわけではありません。言い換えると、融資の受けやすさには「タイミング」が大きく影響します。融資を受けやすいタイミングがあるし、受けにくいタイミングもあるということです。

よって、タイミングを間違えれば、受けられたはずの融資を逃してしまったり、不利な条件での融資になってしまったり…当然、社長としては避けたい事態でしょう。

そこで、銀行融資を受けやすい「ベストタイミング」についてお話をします。関連して、「逃してはいけないタイミング」についてもお伝えするので、あわせて押さえておきましょう。具体的には次のとおりです。

  • ベストタイミング1→決算報告のとき
  • ベストタイミング2→おカネがあるとき
  • 逃してはいけないタイミング1→赤字転落の前
  • 逃してはいけないタイミング2→融資セールス時

これらのタイミングについて、このあと詳しく解説していきます。

ベストタイミング1→決算報告のとき

まず、もっともおすすめしたいベストタイミングは「決算報告のとき」です。

決算書ができあがり、税務申告もおわると、銀行からは「決算書(税務申告書一式)」の提示を求められます。なぜなら、銀行は決算書の内容をもとに融資先の「格付」をして、それに応じて今後1年間の「融資姿勢」を決めるからです(これを「債務者区分」や「自己査定」などとも言います)。

つまり、そういった「銀行の評価サイクル」にあわせて、融資の相談をするのが効率的なのです。このタイミングで、向こう1年間に必要となるであろう資金を計画して、銀行に相談できるようにしましょう。

このタイミングによるメリットは、社長が「経営」に集中できることです。1年のはじめに必要な資金のめどが立っていれば、日々の資金繰りにアタマを悩ませる時間が減り、社長が本来やるべき「会社の未来を考えて手を打つ(=経営)」ことに専念できます。会社の成長にとって大きなプラスです。

ただし、決算書をただ銀行に渡すだけでは不十分だと言えます。以下の書類を準備して、銀行に「決算報告に行く」のがおすすめです。

  • 決算書一式(税務申告書を含む):当然ですが、最新のものを用意します
  • A4用紙1枚ていど決算報告書:決算の概要、前期との比較、課題と対策、今期の見通しなどを簡潔にまとめたもの。銀行担当者が稟議書を書きやすくなります
  • 借入金一覧表:他行からの借入状況も含めて、融資条件を一覧にまとめます
  • 資金繰り表:実績(過去3か月ていど)と今後の予定(向こう1年ていど)を記載します。預金残高が増加する計画であることが重要です
  • 期首からの試算表:決算後の足元の業績を示すことで、銀行の不安を取り除きます

これらの書類を持って、銀行担当者だけでなく、融資課長や支店長といった決裁権を持つキーマンに説明できる機会を得られるのが理想です。顧問税理士に同席してもらうのもよいでしょう。ただし、あくまで主役は社長です。税理士はサポート役に徹するのがポイントになります。

ベストタイミング2→おカネがあるとき

意外におもわれるかもしれませんが、会社の預金残高が多い「おカネがあるとき」は、融資を受けるのに絶好のタイミングです。

理由はシンプルで、銀行は「返済してくれる可能性が高い会社」におカネを貸したいからです。手元におカネがあれば多少業績が悪化しても、すぐに返済が滞るリスクは低いと見られるので、銀行は安心して融資ができます。

ところが多くの社長は、「いまはおカネがあるから借りる必要はない」と考えがちです。そして、いざ資金繰りが苦しくなってから慌てて銀行に駆け込みますが、その時点では「おカネがない会社=返済能力が低い会社」と見なされ、融資を断られたり、足元を見られて不利な条件を提示されたりする可能性が高まります。

なお、預金残高の目安として、平均月商(年間売上高÷12か月)の2か月分以上あると、銀行からの評価も安定して融資相談を進めやすくなります。いっぽうで1か月分未満だと、「危険水域」と見なされることが多いので注意が必要です。

ちなみに、融資を受けることで手元のおカネが増えると、つい財布のヒモが緩んでしまうという社長がいます。これを防ぐためには、「正味のおカネ(預金-借入金)」を見える化するのがひとつの方法です。正味のおカネとは、借入返済分を除いた預金であり、その額を定期的に計算して折れ線グラフにしておくとよいでしょう。ムダ使いをしにくくなります。

逃してはいけないタイミング1→赤字転落の前

銀行は、黒字の会社を好みます。逆に赤字になると、融資審査は厳しくなります。ですから、もし赤字転落が見込まれるのであれば、その前に融資を申し込むことが重要です。この点、次のような対応が有効となります。

  • 決算予測:期中から決算の着地見込みを予測して、赤字になりそうであれば、決算前に手を打つ(融資を申し込む、利益の先取り策を検討するなど)
  • 試算表の活用:毎月の試算表で利益の推移を把握し、黒字から赤字に転換する前、あるいは前期比較でマイナスになる前に、融資を申し込むタイミングを見計らいます

なお、赤字だと絶対に融資が受けられないかといえば、そうではありません。以下のようなケースでは、赤字でも融資を受けられる可能性があります。

  • 本業以外の赤字:特別損失など、一時的な要因による赤字
  • 2~3期合算では黒字:過去の利益の蓄積がある
  • 経営改善計画書がある:具体的な改善策と将来の見通しを示せる
  • 現金預金や現金化できる資産がある:返済能力を補完できる
  • 融資以外の取引が多い:銀行にとっての上得意客である

ただし、これらのケースでも、赤字であれば融資審査が厳しくなることに変わりはありません。やはり、黒字のうちに手を打つのが最善策です。

逃してはいけないタイミング2→融資セールス時

銀行から「おカネを借りませんか?」といった融資セールスを受けることがあります。これもまた、逃してはいけない重要なタイミングです。

なぜなら、銀行が「いま貸したい」と考えているからです。銀行にもノルマがあります。融資目標達成のために、積極的に貸し出し先を探している時期はあるものです。このようなときは、ふだんよりも融資審査が通りやすかったり、よい融資条件を引き出せる可能性があります。

そのような融資セールスへの対応は、次のとおりです。

  • 将来への備えとして借りる:いま必要なくても、将来の不測の事態(業績悪化や災害など)に備えて、手元資金を厚くしておくために借りるという選択。銀行融資に「またこんど(貸して)」はありません
  • 融資条件の改善交渉:すでに借入がある場合、このタイミングで「金利引下げ」「プロパー融資への切り替え」「経営者保証や担保の解除」などを交渉してみましょう。銀行が「貸したい」と考えているときこそ交渉のチャンスです

なお、融資以外にも定期預金や投資信託、保険などのセールスもありえます。基本的には、商品そのものに必要性やメリットを感じなければ断りましょう。ただし、断りかたには配慮が必要です。ムゲに扱うと銀行員との関係が悪化し、肝心な融資の際に影響が出る可能性もゼロではありません。ひとまず話を聞くくらいはしたいものです。

また、これまで取引がない銀行からのセールスがあった場合も、まずは話を聞いて名刺交換をして「面識」をつくっておきましょう。将来、取引銀行を増やしたいと考えたときに役立ちます。このとき決算書を見せてしまうのもおすすめです。銀行が融資を検討するには必須の情報であり、融資提案につながるかもしれません。結果として融資が受けやすくなります。

まとめ

銀行融資はタイミングしだいで、その受けやすさや条件が変わります。

  • ベストタイミング: 決算報告のとき、おカネがあるとき
  • 逃してはいけないタイミング: 赤字転落の前、融資セールス時

これらのタイミングをしっかりと見極め、決算書や試算表、資金繰り表などの書類を日ごろから整備しておくことが、スムーズな融資獲得への近道です。

なにより大切なのは、銀行との良好なコミュニケーションです。銀行を敵視せず、パートナーとして、誠実な対応を心がけることで、いざというときにも頼りになる関係性を築いていきましょう。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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