銀行に「借入金が多い」と言われる会社の特徴

銀行に「借入金が多い」と言われる会社の特徴

銀行員から「借入金が多いですね」と言われて、ドキッとした経験はありませんか?ですが、その言葉を額面通りに受け取ってはいけません。本記事では、銀行員の真意を解説します。

目次

「借入金が多い」は危険なサインか?

銀行の担当者との面談において、こう言われることがあります。

「御社は、ちょっと借入金が多いですね」

この一言に、社長は「ウチは危ないと思われているのか?」「もう追加の融資は受けられないのか…」と、強い不安を感じるかもしれません。たしかに、その言葉が会社の財務状況に対する警告であるケースもあります。

しかし、必ずしもそうとは限りません。銀行員が「借入金が多い」と言うとき、その背景にはまったく異なる3つの意図が隠されている可能性があるのです。

その言葉の真意を理解せずに慌てたり、落ち込んだりするのはもったいないことです。むしろ、その一言は、銀行との関係を深め、会社の財務基盤を強くするための対話のきっかけになりえます。

本記事では、銀行に「借入金が多い」と言われる会社が持つ3つの特徴と、それぞれの状況で銀行員が本当に伝えたいことは何なのか、その背景を読み解いていきます。

具体的に、3つの特徴とは以下のとおりです。

  • 返済力が低い
  • 預金残高が多い
  • 他行の融資が多い

銀行に「借入金が多い」と言われる会社 の特徴

それでは、3つの特徴について見ていきましょう。「借入金が多い」という同じ言葉でも、会社の状況によってその意味は180度変わることがあります。その言葉の裏にある銀行のホンネを理解することが重要です。

特徴1:返済力が低い

銀行員がそう言う理由

これはもっともストレートで、社長が真摯に受け止めるべきケースです。銀行は、会社の借入金総額と、その返済原資となる利益のバランスを見ています。たとえば、「債務償還年数(借入金 ÷(税引後利益+減価償却費))」という指標を重視しており、この年数が10年を超えるなど長くなっている場合には「借入金が多い」と考えます。

つまり、「いまの利益に対して借金の額が過大であり、返済能力が追いついていない」という、財務状態に対する警告サインです。

なかには、行き過ぎた節税によって、本来の実力よりもムダに利益を低く見せている結果、債務償還年数が悪化している会社もあります。注意が必要です。

社長が考えるべきこと

まずは、なぜ利益が少ないのか、その原因を究明する必要があります。売上不振やコスト増など、事業そのものに問題があるのか。あるいは、過度な節税によって利益を不必要に圧縮してはいないかなど。

もし後者であれば、納税してでも利益を確保し、財務状態を改善するという意識改革が必要です。前者であれば、具体的な収益改善計画を策定し、銀行に説明することが求められます。

特徴2:預金残高が多い

銀行員がそう言うワケ

これは一見すると、矛盾しているように聞こえるかもしれません。会社の預金残高が平均月商の3ヶ月分以上あるなど、手元のおカネが潤沢な優良企業に対して、銀行員が「借入金が多いですね」と言うケースです。

この場合の銀行員の真意は、「危険ですよ」という警告ではありません。むしろ逆で、「これだけおカネがあるのに、なぜこれほどの借入を維持しているのですか?(=あらたな融資の必要性が見いだしにくい…)」という問いかけなのです。

安全な会社であり、銀行としては融資をしたい。しかし、これ以上貸すための「資金使途」が見当たらない。そのため、「もし何か投資計画などがあれば教えてほしい」という、次の融資への布石である可能性が高いのです。

社長が考えるべきこと

したがって、チャンスと捉えるべきです。銀行が自社を「安全で、もっと取引したい会社」と見ている証拠だからです。

社長が考えるべきは、その潤沢な預金を活用した、未来への投資計画です。あらたな設備投資、人材採用、新規事業など、会社の成長につながる計画を銀行に提示できれば、銀行は追加融資に応じる可能性があります。おカネをただ寝かせておくのではなく、有効活用する道筋を示すということです。

特徴3:他行の融資が多い

銀行員がそう言うワケ

たとえば、A銀行(メインバンク)からの借入シェアが6割を超えている会社が、B銀行(サブバンク)に相談に行ったとします。そのとき、B銀行の担当者が「御社は借入金が多いですね」と言ってくる。というケースがあります。

この場合の銀行員の言葉は、会社の財務状態を批判しているのではありません。これは、ライバルであるA銀行を牽制して、自社の融資シェアを高めるための「営業トーク」と考えるべきです。

その言葉の裏には、「A銀行にばかり依存していては危険ですよ。1行への依存度が高すぎます。ウチにもっと取引を移して、借入先を分散させたほうが、御社のためになりますよ」というメッセージが隠されています。自行の融資を推し進めるための、巧みな交渉術なのです。

社長が考えるべきこと

銀行員の営業トークだと理解しつつも、その指摘には一理ある、と考えるのがよいでしょう。特定の1行に融資を依存しすぎると、たしかに、その銀行に足元を見られて、金利交渉などで不利になったり、その銀行の方針しだいで急に融資が受けにくくなったりするリスクは存在します。

よって、自社の借入バランスを見直すきっかけにするのがおすすめです。本当に1行依存で良いのか、複数の銀行と適切なバランスで付き合うべきではないか。銀行間の健全な競争関係を築くことは、結果的に会社の利益につながります。

まとめ

銀行員から「借入金が多い」と言われても、すぐに落ち込む必要はありません。その言葉の裏には、少なくとも3つの異なる意図が隠されています。

  1. 返済力が低い
  2. 預金残高が多い
  3. 他行の融資が多い

大事なのは、「借入金が多い」という言葉を鵜呑みにせず、「なぜ、この担当者はいま、この話をするのだろう?」と、その真意を見極めることです。すると、銀行との相互理解も深まり、会社の財務状態をより良い方向へ導くきっかけになるはずです。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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