インフレ時代の新常識!金利上昇が社長の「追い風」になる逆説的メカニズム

インフレ時代の新常識!金利上昇が社長の「追い風」になる逆説的メカニズム

金利が上がると返済が苦しくなる、とおもっていませんか?実はインフレ下では、その常識がくつがえります。借金の実質負担が軽くなる「借りたもの勝ち」のメカニズムと、中小企業社長がとるべき賢い戦略を解説します。

目次

「金利上昇=コスト増」だけではない。インフレがもたらす「借り手」への恩恵

「最近、借入の金利が上がってきて、利息の支払いがきつい…」
「これからもっと金利が上がったら、ウチの会社はどうなるんだろう?」

ニュースで金利上昇が報じられるたびに、不安を感じている社長も多いのではないでしょうか。たしかに、借入金利の上昇は、直接的なコスト増加につながります。利益を圧迫する要因であることは間違いありません。

しかし、ここで1つ、見落としてはいけない重要な視点があります。それは、現在の金利上昇が「インフレ(物価上昇)」と同時に進行している、という事実です。

実は、インフレが進行する経済状況下では、借金をすることに対して、平時とはまったく異なる力学が働きます。一言でいえば、「おカネの価値が下がることで、借金の実質的な負担が軽くなる」という現象が起こるのです。

これが、経済の世界でよく言われる「インフレ下では借りたもの勝ち」という逆説の正体です。

金利上昇というネガティブな側面だけでなく、インフレがもたらすポジティブな側面にも目を向けることで、社長の資金繰り戦略は大きく変わります。

なぜ「借りたもの勝ち」になるのか?3つの視点で読み解く

では、なぜインフレになると借り手が有利になるのでしょうか。一見すると直感に反するこのメカニズムを、社長の視点から3つのポイントで解説していきます。

インフレが「借金の実質価値」を溶かしていく

まず根本的な話として、インフレとは「モノの値段が上がり続けること」ですが、これは裏を返せば「おカネの価値が下がり続けること」を意味します。

たとえば、10年前に1,000万円で買えた機械が、今は物価が上がって1,200万円出さないと買えないとします。これは、10年前の1,000万円と今の1,000万円では、価値が違うということです。

これを借金に当てはめてみましょう。いま、銀行から1億円を借りたとします。この1億円という借金の額面(元本)は変わりません。しかし、世の中のインフレが進み、おカネの価値がどんどん下がっていったらどうなるでしょうか。

将来、社長が返済する1億円の価値は、いま借りた時点の1億円よりも、実質的に目減りしていることになります。感覚的には、いまの価値で換算すると8,000万円分くらいの負担感で、額面通りの1億円を返済できるようなイメージです。

つまり、インフレは、時間が経てば経つほど、社長の借金の重荷を勝手に溶かしてくれる存在といえるのです。

見た目の金利にダマされるな、「実質金利」を見よ

次に重要なのが「実質金利」という考え方です。社長が銀行と約束する金利(表面金利)を「名目金利」といいます。これに対して、名目金利からインフレ率(物価上昇率)を引いたものを「実質金利」と呼びます。

  • 実質金利 = 名目金利 - インフレ率

たとえば、銀行からの借入金利が3%に上がったとします。これだけ見ると負担増です。しかし、もし世の中の物価がそれ以上に、たとえば4%の勢いで上がっていたとしたらどうでしょう。

計算式に当てはめると、「3% - 4% = マイナス1%」となります。なんと、実質的な金利はマイナスになるのです。

実質金利がマイナスということは、経済的な意味合いだけでいえば、「おカネを借りているのに、実質的には金利を受け取っている(借りたほうが得をする)」のと同じ状態になりえます。

銀行が提示する表面的な金利の上昇だけに惑わされず、世の中のインフレ率とセットで考えるクセをつけることが重要です。

将来の収益力強化への投資が、インフレ対策の王道

インフレ下で借入が有利になるからといって、無計画に借りて浪費していいわけではありません。重要なのは、その資金を何に使うかです。

インフレの時代は、仕入コストや人件費など、あらゆるコストが上昇する時代でもあります。この荒波を乗り越えるためには、値上げを受け入れてもらえるだけの付加価値をつけるか、生産性を高めてコスト上昇を吸収するしかありません。

そのためには、どうしても「先立つもの(資金)」が必要です。

借金の実質負担が軽いうちに資金を調達し、それを設備投資やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、人材育成といった、将来の「稼ぐ力(営業利益)」を高めるための投資に振り向ける。

これこそが、中小企業にとっての最強のインフレ対策となります。借りたおカネが、将来の値上げや生産性向上につながり、結果として借入の返済をさらに楽にしてくれる好循環を生み出すからです。

まとめ

インフレが進行する局面では、金利上昇を単なる「コスト増」として恐れる必要はありません。むしろ、借入をうまく活用することで、会社の競争力を高めるチャンスに変えることができます。

  • インフレは借金の実質的な負担を軽減してくれる「追い風」になる
  • 表面的な金利だけでなく、インフレ率を加味した「実質金利」で判断する
  • 借りた資金は、将来の「稼ぐ力」を高めるための前向きな投資に使う

もちろん、借入は返済能力の範囲内で行うことが大前提です。しかし、「借金は悪」という古い固定観念にとらわれすぎると、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。インフレという時代の変化を味方につけ、賢い資金繰り戦略を練ってみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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