メガバンクを捨て、地元の銀行に全振りする戦略

メガバンクを捨て、地元の銀行に全振りする戦略

「メインバンクは三菱UFJ(あるいは三井住友、みずほ)です」

そう語ることが、社長としてのステータスであり、一種の「ハク」がつく行為だった時代がありました。ですが、その常識はいま、急速に風化しています。

特に、年商10億円未満を目指す社長にとって、メガバンクと付き合い続けるメリットは、いまやほとんどありません。それどころか、その「見栄」が原因で、いざというときに動いてもらえない「資金繰りのリスク」を抱え込んでいるケースすらあるのですね。

なぜ、いまメガバンクから勇気を持って距離を置くべきなのか。2026年に施行される新しい法律の動向と、銀行の「台所事情」を交えながら、その本質的な理由についてお話しします。

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メガバンクは「おカネを貸して儲ける」のをやめている

「メガバンクと取引があれば、周囲から信用される」
「ホームページの取引銀行欄に載せれば安心感が出る」

もし、そんなふうにおもわれていたとしたら、その考えはいま、きっぱりと捨ててしまったほうがいいかもしれません。事実、メガバンクのアタマのなかで、中小企業の優先順位は驚くほど低くなっているからです。

「利息」より「手数料」を追いかけるハンターたち

なぜメガバンクが中小企業に向き合わなくなったのか。その最大の理由は、その収益構造が激変したことにあります。

長く続いた低金利時代、銀行はおカネを貸して得られる「利息」だけでは食べていけなくなりました。そこで血眼になって追いかけているのが、 「ソリューションフィー(非金利収益)」 と呼ばれる手数料ビジネスです。

M&Aの仲介手数料、生命保険の販売、高額な経営コンサルティング、あるいは海外進出支援。こうした「一発の単価が高い」大企業・中堅企業向けのビジネスこそが、メガバンクの主戦場なのですね。

いっぽうで、中小企業に数千万円のおカネを貸して、数パーセントの利息をコツコツと受け取る。そんな「手間がかかるわりに儲けが少ない」商売には、もはや関心が薄いわけです。

(銀行員が「最近いかがですか?」と笑顔で聞いてくるのは、社長の資金繰りを心配しているからではなく、新しい「手数料」を稼げるネタが落ちていないかを探っているだけ……というケースもあるようです)。

「融資」がほしい社長と「手数料」がほしい銀行のミスマッチ

ここで決定的な「目的のズレ」が生じます。

社長が求めているのは、事業を安定させ、いざというときに会社を守るための「キャッシュ(融資)」です。しかし、メガバンクが求めているのは、今期のノルマを達成するための「ソリューションフィー」です。

目的が違う相手と、どんなに深くお付き合いをしようとしても、そこには本当の意味での「信頼関係」は生まれません。彼らにとって中小企業は、融資という「エサ」で釣り、高額な「オプション」を売るためのターゲットになってしまっている。

このズレに気づかずにメガバンクに固執し続けることは、社長にとって「時間とコストの浪費」になりかねません。

2026年5月、メガバンクとの「心の距離」は決定定的になる

このミスマッチをさらに決定的にするのが、2026年5月に施行される 「事業性融資推進法(事業性融資の推進等に関する法律)」 です。

この法律を端的に説明すると、「不動産担保や個人保証に頼るのをやめ、事業そのものの価値(ノウハウ、顧客基盤、将来の稼ぐ力)を担保におカネを貸しましょう」というものです。まさに中小企業のためにつくられた、融資の歴史を塗り替える画期的な法律だと言えます。

法律とメガバンク「絶望的な温度差」

とはいえ実は、メガバンクはこの法律をほとんど意識していません。

事業性融資を成功させるためには、会社の商売を深く理解し、泥臭く対話を重ねることが不可欠です。決算書の数字だけでは見えてこない「現場の強み」を、銀行員がじぶんの足で稼ぎ、理解しなければなりません。

ですが、徹底した効率化とシステム化を追求し、ソリューションフィーを追いかけるメガバンクにとって、年商数億円の会社の「事業のナカミ」を覗き込むような手間のかかる作業は、もっとも「コスパが悪い」仕事といえます。

対話を通じて伝わってくるのは、メガバンクの主眼がもはや「中小企業向け融資」にはないという冷ややかな空気です。事実、法律が施行されても、中小企業向けに腰を据えた「事業性融資」を行う景色は、僕にはどうしても想像できません。

メガバンクが注力するのは、あくまで「効率よく、大きなフィーが取れる案件」だけ。そこから外れる中小企業は、どれだけ法律が整っても、メガバンクの「物差し」で測られることはないのでは…?

中小企業の「実利」は、地元の銀行にこそ宿る

だとすれば、社長が本当に頼るべき相手はどこか。

それは、自社がある場所に本店を構える 「地域金融機関(地銀・信金・信組)」 です。彼らはこの法律を「生き残りのための最大のチャンス」と捉え、本気で事業を見るチカラ(事業性評価)を鍛え直そうとしています。

「名前」ではなく「手触り感」で銀行を選ぶ

地域金融機関にとって、年商10億円前後という会社は、地域経済を支える「極めて重要なお客さま」です。メガバンクにとっては「その他大勢」でも、地元の信金にとっては「エース級の取引先」になれる。このポジションの違いこそが、融資の柔軟性やスピードに直結します。

  • 担当者の熱量が違う:地域金融機関の担当者は、その地域で腰を据えて働くことが前提です。全国展開のメガバンク員とは、事業へのコミットメントが違います。
  • 「事業のナカミ」を見てくれる:事業性融資推進法の波に乗り、彼らは社長の「数字以外の強み」を一生懸命に言語化し、本部の審査を突破しようと動いてくれます。
  • 「雨の日に傘を貸す」距離感:平時から深い対話(接触深度)を重ねることで、不測の事態が起きた際にも「あの社長なら大丈夫だ」と、顔の見える関係で支えてくれます。

(僕の持論ですが、銀行選びは「誰にじぶんの会社のファンになってもらうか」です。大きな組織の一部として扱われるより、地元の有力なパートナーとして扱われるほうが、経営の安定感は格段に増すでしょうから。

「ステータス」という呪縛から卒業する

いまだに「メガバンクと取引があるから、うちは一流だ」とおおもいたい社長もいらっしゃいます。ですが、その見栄を維持するために、不必要な手数料を払い、いざというときの融資を後回しにされる。これほど本末転倒なことはありません。

本当に信用を落とすのは、見栄えの良いメインバンクを抱えることではなく、資金繰りをショートさせて会社を潰すことです。メガバンクという「遠くの有名人」に憧れるのはもうやめて、じぶんの事業の「体温」を共有できる「近くの理解者」に全振りする。

この「アタマの切り替え」ができる社長こそが、これからのインフレ時代、金利上昇時代を強く生き抜いていけるのだと、僕は考えています。

まとめ:会社を守るための「メインバンク・シフト」

銀行選びの基準を「名前(看板)」から「実利(融資への姿勢)」に変えること。それが、社長が安心の資金繰り手に入れるための1歩になります。

  • メガバンクは「利息」より「手数料(ソリューションフィー)」を求めている。
  • 2026施行の「事業性融資推進法」を本気で意識しているのは、地域金融機関である。
  • 年商10億円未満の会社の主戦場は、メガバンクではなく地域金融機関にある。

「メガバンクからの卒業」は、けして都落ちなどではありません。それは、じぶんの足元を固め、真の成長を手に入れるための「戦略的撤退」であり、「攻めの選択」です。

まずは、きょうから自社のメインバンクが「本当に事業のナカミを見てくれているか」を、冷静に観察してみましょう。もし、手数料の話ばかりで融資の話が進まないと感じたら… そのときこそ、新しいパートナーを探す絶好のタイミングかもしれません。

自社の財務戦略や、どの銀行をメインに据えるべきかについて、より具体的に相談したい方は こちら(個別相談) もご活用ください。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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