賞与も納税も、いちどに支払うのではなく分割払いにすれば、資金繰りはラクになります。でも、どうやったら分割払いにできるのか?その手段や考え方について、お話をしていきます。
賞与と納税は分割払いでラクになる
会社の資金繰りについて、賞与の支払いと、決算にともなう納税の時期には預金が減ります。いずれも小さな金額ではないだけに、資金繰りが厳しくなる…とアタマを抱える社長もいるでしょう。
だったら、分割払いにしませんか。賞与も納税も、いちどに支払うのではなく分割払いにすれば、資金繰りはラクになるはずですよね。
いやいや、そんなことはできるのか?と、おもわれるかもしれません。賞与の分割払いなど社員が納得しないし、納税の分割払いだって税務署が認めてくれない。そう、おもわれるかもしれません。
ですが、銀行融資を受けることで、賞与も納税も分割払いにすることができます。とはいえ、それには疑問や反論もあるでしょう。そこでこのあと、以下順番にお話をしていきます。
- 賞与と納税の資金を借入する効果
- 銀行から借入するときのポイント
- 借りてまで納税する意味はあるか
というように、まずは、賞与と納税の資金を借入する効果を確認し、次に、銀行から借入するときのポイントを押さえます。さいごに、借りてまで納税する意味はあるのか、との反論にお答えする流れです。
賞与と納税の資金を借入する効果
冒頭、「賞与も納税も、いちどに支払うのではなく分割払いにすれば、資金繰りはラクになる」といいました。その方法は、銀行融資を受けることだともいいました。
つまり、銀行から借入をすることで、賞与も納税も分割払いにできます。そのことが、資金繰りにどのような効果をもたらすかについて、確認をしてみましょう。わかりやすいように、極端な例を挙げます。
いまの預金残高は300万円、賞与の総額が300万円であれば、いちどに賞与を支給すると預金はゼロです。賞与はまとまった金額であることが多く、これが資金繰りを厳しくします。
ではここで、銀行から賞与を支給するための資金として、300万円を借入したらどうでしょう。なお、返済期間は6か月、毎月分割払い(毎月の返済は50万円)とします。
もともとの預金残高は300万円でしたから、300万円を借入することで預金残高は600万円に増えます。そこから、賞与の300万円を支給すると、預金残高は300万円です。
そのうえで、銀行への毎月の返済は50万円ですから、預金残高は毎月50万円ずつ減っていきます。1か月めの預金残高は250万円、2か月めの預金残高は200万円、3か月めは150万円、4か月めは100万円、5か月めは50万円、6か月めでゼロです。
というように、さいごにゼロになるという結論は、いちどに賞与を支給するときと変わりませんが、6か月のあいだは、預金がゼロにならずにすみました。
つまり、賞与を支給するための資金を銀行から借入すると、預金残高をより高く・より長く維持できる。これが、借入により分割払いする効果であり、賞与を分割払いで支給したのと同じ効果を得られることがわかります。
この効果は、納税するための資金を銀行から借入した場合も同じです。
銀行から借入するときのポイント
賞与と納税の資金を借入する効果を確認しました。借入により分割払いの効果がえられれば、資金繰りはラクになります。とはいえ、賞与や納税のために、銀行から借入はできるのか?
結論、できます。銀行からは、「賞与資金」や「納税資金」といった資金使途で、借入することができるのです。では、そのような借入をするときのポイントを押さえておきましょう。
そもそも、賞与資金や納税資金は、銀行にとって貸しやすい融資にあたります。借りたおカネの使いみち(資金使途)も明確ですし、融資先の業績好調が前提だからです(業績不振の会社であれば、賞与支給がなかったり、納税もない)。
加えて、返済期間が短く、回収不能リスクが小さいという特徴もあります。ちなみに、賞与資金や納税資金の返済期間は、原則6か月です。
というように、銀行にとって貸しやすい融資であるからこそ、押さえておくべきポイントがあります。それは、プロパー融資を受けることです。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証が付いていない融資であり、銀行にとってはリスクが高く、貸しにくい融資にあたります。ところが、賞与資金や納税資金のように、リスクが小さい融資であれば、プロパー融資ができる余地は大きくなるものです。
そこで、銀行から借入をするときには「プロパー融資でお願いします」と伝えましょう。もちろん、断られる(保証付きしかムリといわれる)ことはありますが、伝えなければはじまりません。
プロパー融資は銀行にとってリスクが高いのですから、銀行のほうから進んでプロパー融資をしてくれることはまれだ、と考えておきましょう。
結果としてプロパー融資が受けられると、それが実績となるので、次の融資を受けるときにも(賞与資金や納税資金以外でも)、プロパー融資を受けられる可能性が高まります。
なお、会社はできるかぎりプロパー融資を受けられるように努めるべきです。くわしくは別の機会に譲りますが、保証付き融資しか受けられない会社は、資金繰りが厳しくなります。
借りてまで納税する意味はあるか
賞与と納税の資金を借入する効果もわかった、銀行から借入するときのポイントもわかった。でも、そもそもの話として「借りてまで賞与を支払う、借りてまで納税する意味はあるのか?」とおもわれるかもしれません。そこまではしたくない、との反論もあるでしょう。
結論、意味はあります。その理由は、賞与と納税の資金を借入する効果として、すでにお話をしました。会社にとっては、資金繰りがすべてです。資金繰りがうまくいかず、預金が尽きれば会社はつぶれてしまいます。
そうならないためには、預金残高をより高く・より長く維持することが重要です。だとすれば、借りてまで賞与を支払う、借りてまで納税する意味もあるというものです。
この点、賞与は社員との約束や、社員からの期待にもとづき支払いが必要であるにしても、納税についてはそうでもないとの考えもあります。つまり、利益を減らして納税を減らそう(これを「節税」と呼ぶ社長もいます)、という考え方です。
が、とてもおすすめできる考え方ではありません。なぜなら、利益を減らせば、会社に残るおカネも減りますし、結果として銀行からの資金調達力も下がってしまうからです。
端的にいえば、税金を払ったあとの利益(税引後利益)しか、おカネは残りません。だから、利益を減らして税金を減らせば、会社に残るおカネは減ることになります。資金繰りにはマイナス影響です。
また、銀行は「利益=返済力、預金=返済原資」と見ています。よって、利益が減り、会社に残るおカネ(預金)が減るのであれば、その会社に融資をしづらくなるのです。そうして銀行に対する資金調達力が下がれば、会社の資金繰りはますます厳しいものになります。
だから、「利益を減らして納税を減らそう」などとは考えずにすむよう、つまり、納税を嫌わずに利益を出せるだけ出せるよう、借りてまで納税するという手段を理解しておきましょう。
まとめ
賞与も納税も、いちどに支払うのではなく分割払いにすれば、資金繰りはラクになります。銀行融資を受けることで、賞与も納税も分割払いと同じ効果を得ることが可能です。
この点、疑問や反論もあるものなので、以下についてを本文でお伝えしました。
- 賞与と納税の資金を借入する効果
- 銀行から借入するときのポイント
- 借りてまで納税する意味はあるか
以上をふまえて、資金繰りで大事なのは「預金残高をより高く・より長く維持すること」です。そのための手段の1つとして、賞与資金・納税資金の銀行借入も利用できるとよいでしょう。