融資金利の引き下げに躍起になる社長がいます。が、社長はいますぐ金利交渉をやめたほうがいい。これが僕の意見であり、その理由についてお伝えします。
金利交渉はやめて〇〇しましょう
銀行から融資を受けている社長にお伝えしたいこと、それが「いますぐ金利交渉をやめましょう」です。銀行に対して、金利の引き下げ交渉をしない。本記事の結論でもあります。
とはいえ、「会社にとって金利は低いほうがいい」とおもわれるでしょう。「交渉しなければ金利が高くなってしまうのではないか」ともおもわれるでしょう。そこで、いますぐ金利交渉をやめたほうがよい理由をお伝えします。ぜんぶで3つ、次のとおりです。
- 銀行に嫌われる
- 金利が上昇する
- 条件が悪化する
これら3つの理由について、ただ理由をお伝えするだけではなく、「交渉する代わりに〇〇をしましょう」という代案も提示します。知らずにいると、社長は金利交渉をするばかり。結果として、資金繰りが厳しくなるので注意が必要です。
金利交渉をやめたほうがよい理由
社長はなぜ、銀行に対して金利交渉をやめたほうがよいのか。その理由をぜんぶで3つ、交渉する代わりにどうするかの代案もあわせてお伝えしていきます。
銀行に嫌われる
金利交渉をやめたほうがよい理由、1つめは「銀行に嫌われる」です。言うまでもなく、銀行にとって利息収入は「売上」にあたります。だとすれば、金利は高いほうがよいわけで、社長から金利の引き下げを交渉されることを好みません。
にもかかわらず、顔を合わせるたびに「金利を下げて」と言われれば嫌気して当然です。そうして、銀行員の足が遠のく(会社に顔を見せなくなる)ようだと、会社は損をします。銀行との接点が少なくなれば、銀行は会社の状況をつかみづらくなり、融資に消極的にもなるからです。
とはいえ、「黙っていたら銀行の言い値になってしまうではないか」とおもわれるかもしれません。つまり、金利交渉をしなければ、高い金利を提示されてしまうのでは?との疑問です。
そこでの代案として、銀行とは「貸出約定平均金利」の話ができるとよいでしょう。貸出約定平均金利とは、日本銀行が毎月公表している融資金利の平均値です。いうなれば融資金利の相場であり、それと自社の金利を比較することで、自社の金利が高いか低いかのあたりをつけられます。
もし、貸出約定平均金利よりも自社の金利が高いようなら、銀行に対して貸出約定平均金利の数字を引き合いに出しながら「どうして自社の金利は高いのか。下げるには何を改善したらよいのか」とたずねてみましょう。
金利を下げろという直接的な表現ではなく、前向き・建設的な問いかけですから、銀行も悪い気はしないはずです。また、社長が貸出約定平均金利を理解している、確認しているとわかれば、金利を上げづらくもなります。貸出約定平均金利を話題にすることで、金利引き上げを牽制できるのです。
逆に、社長が貸出約定平均金利などを知らずに黙っていれば、銀行からは足元を見られて、金利を必要以上に上げられることも考えられます。また、貸出約定平均金利のように、引き合いに出せる根拠もなく金利交渉を繰り返していると、銀行からは嫌われるので気をつけましょう。
金利が上昇する
金利交渉をやめたほうがよい理由、2つめは「金利が上昇する」です。この記事の執筆時点は、2024年12月初旬。日銀によるさらなる利上げが迫るなか、融資金利は上昇傾向にあります。これから先もしばらくは、融資金利の上昇が続くでしょう。
これについては、「自然の成り行き」です。日銀の利上げによって世の中の金利が上がれば、銀行が資金を調達するコストも上がります。その分を融資金利に転嫁するのは自然の流れです。にもかかわらず、転嫁分の金利さえ社長が拒んでいるようだと、銀行には融資をする道理がありません。
だったら、ほかの会社に融資をすればいいということであり、自社への融資はしてもらえなくなってしまいます。金利の引き下げどころか、そもそも融資が受けられなくなるようでは元も子もありません。
ですから、転嫁分の金利上昇については受け入れる考えを持ちましょう。ちなみに現時点で、0.5%くらいまでの引き上げは、転嫁分の金利として妥当といえます。いっぽうで、それ以上の引き上げを銀行から求められるようなら、理由を確認することが大切です。
ではなぜ、0.5%を超えるような引き上げを求められるのか。おもな理由として、自社の業況が悪いことが挙げられます。単純にいえば、利益が不十分なのであり、銀行が融資をするにはリスクが大きい(回収できない可能性が高いと見ている)。だから、金利を引き上げられるのです。
これへの代案は言わずもがな、利益をきちんと出すこと。金利上昇局面にあるいま、利益の重要性はこれまで以上に高まっています。金利が上がれば、同じおカネを借りるのでも金利負担が大きく、より利益を必要とするからです。
社長は、利益を出す・増やすことにこだわりましょう。円安や物価高騰によるコスト上昇分の価格転嫁を実行する、納税を嫌って利益を出し惜しむのはやめる、などは最優先事項です。
条件が悪化する
金利交渉をやめたほうがよい理由、3つめは「条件が悪化する」です。融資を受けるにあたっては、融資条件があります。金利もまた融資条件の1つではあるものの、金利の引き下げにこだわると、ほかの融資条件が悪化するのが問題です。
たとえば、プロパー融資ではなくて保証付き融資にされてしまう。保証付き融資ばかりだと資金繰りに悪影響があることは別記事でお伝えしました。また、金利を上げない代わりに、経営者保証はとられてしまうということもあるでしょう。言い換えると、金利の引き下げ交渉をすれば、経営者保証の解除はできないということです。
いずれにせよ、会社にとってはよいことがありません。そこでの代案は、金利と引き換えにプロパー融資や、経営者保証の解除を銀行へ相談することです。金利は上がってもいいから、保証付き融資ではなくプロパー融資を、経営者保証なしで融資をしてほしいと伝えることです。
これが実現すれば、会社は資金繰り面でメリットを得られます。とはいえ、金利が高くなるようでは意味がない、メリットがないとおもわれるかもしれません。ですが、金利が上がるといっても、2%も3%も上がるわけではないでしょう。仮に1%上がったとしてどうなるか。
融資金額が1,000万円であれば、金利上昇1%分は年間10万円の利息に相当します。ひと月あたりでは1万円弱です。利息の節税効果も考えると6千円ていど。金利以外の条件が改善されるメリットと比較すれば、それほど大きなコスト、それほど大きなデメリットでもないはずです。
逆に、6千円のコストにこだわるあまり、大きなメリットを逃しているのであれば、大きな損をしているといえます。それでも金利交渉をするのかどうか、社長はようく考えてみましょう。
まとめ
社長はいますぐ金利交渉をやめたほうがいい。その理由を3つお伝えしました。
- 銀行に嫌われる
- 金利が上昇する
- 条件が悪化する
融資金利の引き下げに躍起になる社長がいますが、金利交渉にはデメリットをともなうことが理解できたはずです。とはいえ、なにも言わずに黙っていたのでは、銀行の好きにされてしまったり、メリットを棒に振ることにもなりますから、本記事で提示した代案についても押さえておきましょう。代案を実行することが、資金繰りの改善につながります。