会社の銀行融資でありがちなのが、借入残高シェアの問題です。まずは、自社の借入残高シェアを計算するところから。そのうえで、3つの問題点にあてはまるものがないかを確認しましょう。
見方がわからなければ問題が起きる
会社の銀行融資でありがちなのが、借入残高シェアの問題です。社長が借入残高シェアを見ていない、あるいは見方がわかっていないと問題が起きます。結果として、融資が受けにくくなったり、融資条件が悪くなってしまったり…
ちなみに「借入残高シェア」とは、自社の借入総額に占める各銀行の借入残高の割合をいいます。たとえば、自社の借入総額が5,000万円であり、そのうちA銀行の借入残高が3,000万円、B銀行の借入残高が2,000万円だとしたら、借入残高シェアはA銀行が60%、B銀行が40%です。
そのうえで、銀行融資でありがちな借入残高シェアの問題点とは何なのか?具体的には次の3つが挙げられます。
- 似たりよったり
- 保証付きばかり
- 預金が合わない
繰り返しになりますが、社長が借入残高シェアを見ていない、あるいは見方がわかっていないと、このような問題が起きます。このあと、問題への対応策もあわせてお伝えしますので、確認をしていきましょう。
ありがちな借入残高シェアの問題点
銀行融資でありがちな借入残高シェアの問題点は、3つあります。まずは、自社の借入残高シェアを計算するところからです。そのうえで、これからお伝えする3つの問題にあてはまるものがないか、確認していきましょう。
似たりよったり
ありがちな借入残高シェアの問題点、1つめは「似たりよったり」です。借入残高シェアを見たときに、A銀行35%、B銀行30%、C銀行25%…というように、残高シェアに大きな差がないケースが挙げられます。これが問題なのは、どこがメインバンクかわからなくなるからです。
自社の業績が悪くなれば当然、銀行は融資に消極的になります。ですが、メインバンクがあれば柔軟な対応が期待できますし、それを見た他の銀行も安心をするものです。すると、自社の業績が悪くても資金繰りを維持しやすくなります。
メインバンクとは端的にいえば、借入残高が一番大きい銀行です。この点、「A銀行35%、B銀行30%、C銀行25%…」といったケースでは、どこがメインバンクなのかはっきりしません。よって、どの銀行も「ウチがメインバンクだ」とは考えられなくなってしまいます。
自社の業績が悪くなれば、銀行は「様子見」となり、どこからも融資が受けられない…というのでは困ってしまうでしょう。
ですから、融資残高シェアが似たりよったりにはならないように、はっきりと差をつけることが大事になります。目安として、メインバンクの借入残高シェアは50%を超えるくらいがよいでしょう。
なお、自社の業績が悪いときでもメインバンクが支援をするのは、それがメインバンクの役割だからであり、融資残高が多いために会社がつぶれて返済してもらえなくなるのも困るからです。
保証付きばかり
ありがちな借入残高シェアの問題点、2つめは「保証付きばかり」です。前述の「似たりよったり」ではなくても、つまり借入残高シェアが50%を超える銀行があっても、その銀行からの借入が保証付き融資ばかりの場合には問題だといえます。銀行がリスクを負っていないからです。
そもそも保証付き融資とは、信用保証協会の保証が付いた融資であり、会社が返済できなくなった場合には信用保証協会が肩代わりをして銀行に返済します。よって、銀行側のリスクはない(あるいは小さい)のが保証付き融資の特徴です。
たとえば、借入残高シェアが50%を超える銀行からの融資がすべて保証付きだったらどうなるか。もし会社が返済できなくなったとしても銀行は困りませんから、その会社を積極的に支援する動機がなくなります。メインバンクのように見えたとしても(シェアが大きくても)、実はメインバンクとはいえないケースがあるということです。
実際、保証付き融資ばかりの銀行は、自社の業績が悪くなると新規融資をしなくなることはよくあります。この点、保証付き融資ばかりでなく、プロパー融資も受けておくのが対応策です。プロパー融資とは信用保証協会の保証が付かない融資であり、会社が返済できなくなれば銀行が100%損をこうむります。よって、銀行は融資先の支援に積極的になるものです。
プロパー融資を受けるコツについては別記事に書きましたので、社長はぜひとも押さえておきましょう。
預金が合わない
ありがちな借入残高シェアの問題点、3つめは「預金が合わない」です。これは、借入残高シェアに見合った預金をしましょうということであり、それができていないと融資が受けにくくなります。銀行にとって預金は担保のようなものであり、できるだけ自行に預金をしてほしいからです。
たとえば、A銀行の借入残高シェアが50%、B銀行が20%がだとします。そのうえで、自社の預金総額が3,000万円だとしたら、A銀行は「3,000万円×50%」で1,500万円の預金は自行にしてほしいと考えるものです。ところが、A銀行への預金は500万円、B銀行が2,000万円だとしたら?
A銀行は「B銀行ばかりズルい!」と考えるでしょう。B銀行の借入残高シェアは20%なのだから、2,000万円の預金は多すぎる。ウチはもっと貸している(リスクをとっている)のだから、B銀行ではなくウチにもっと預金をしてほしい。これが、A銀行の思いです。
繰り返しになりますが、銀行にとって預金は担保のようなもの(いざとなれば、融資残高との相殺ができる)。だとすれば、各銀行の預金は借入残高シェアに合わせるのが「公平」だとわかります。厳密には合わせられないまでも、大きくズレることがないように調整するのがよいでしょう。
どの銀行からどれだけ借りているかは見ている社長でも、どの銀行にどれだけ預金をあずけているか、それが借入残高シェアに見合ったものであるかまでは見ていない社長は少なくありません。
まとめ
会社の銀行融資でありがちなのが、借入残高シェアの問題です。社長が借入残高シェアを見ていない、あるいは見方がわかっていないと問題が起きます。
- 似たりよったり
- 保証付きばかり
- 預金が合わない
これらの問題が起きれば、結果として、融資が受けにくくなったり、融資条件が悪くなってしまったり…そうはならないように、まずは、自社の借入残高シェアを計算するところからです。そのうえで、3つの問題にあてはまるものがないかを確認し、あてはまるものがあれば改善していきましょう。