社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケースは

社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケースは

会社から社長への貸付金があると、銀行融資が受けられなくなることがあります。いっぽうで、社長への貸付金が必ずしも問題になるわけではありません。その具体的なケースを確認します。

目次

「社長への貸付金=銀行融資NG」とは限りません

会社から社長への貸付金があると、銀行融資が受けられなくなることがあります。これは、社長への貸付金が問題になるからであり、詳しくは別記事でお伝えしました。

とはいえ、社長への貸付金があるからといって、必ずしも銀行融資で問題になるわけではありません。つまり、社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケースもあるということです。それが具体的にどのようなケースなのか、次の3つが挙げられます。

  • 返済されている
  • 利益が出ている
  • 純資産が大きい

これら3つのケースについて、このあと順番に解説をしていきます。「だから、社長への貸し付けをしたってよい」とまではいえませんが、「社長への貸付金=銀行融資NG」ではないことを理解しておきましょう。

社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケース

社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケースとして、3つ取り上げます。各ケースにおいてなぜ問題にならないのか、銀行の考え方を押さえていきましょう。

返済されている

社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケース、1つめは「返済されている」です。銀行から見て、会社から社長への貸し付けは好ましいものではありませんが、貸し付けがあったとしても返済されているのであればよしとする考えもあります。

たとえば、社長に対する貸付金として500万円が貸借対照表に計上されていたとして。次の決算を迎えたときに300万円まで減っていたとしたら、返済が進んでいるということです。逆に、500万円よりも増えているようだと、返済が進んでいないものとして貸付金が問題になるでしょう。

したがって、社長への貸付金が生じてしまったときには、返済する算段をつけることが大切なのであり、少なくともこれ以上増えないようにしなければいけません。

貸付金を返済するといっても、社長個人でまとまったおカネを用意するのが難しいケースはあるものです。そのときには、毎月の役員報酬(社長の給料)から少額でもよいので天引きしましょう。確実に返済を進めることができますし、返済の実績もできるので銀行への説得材料にもなります。

このように、「返済されている」ことで、社長への貸付金が問題にはならないケースもあるのです。

利益が出ている

社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケース、2つめは「利益が出ている」です。たとえ貸付金があっても、融資したおカネを返済するだけの利益が出ているのであればよしとする。そういった考えも銀行にはあります。

たとえば、税引後利益が500万円、銀行借入の年間返済額300万円、社長への貸付金の年間増加額が500万円だとしたらどうでしょう?

税金を払ったあと手元に残るおカネ(500万円)は貸付金(500万円)に使われたことになるため、借入の返済(300万円)はできないというのが銀行の考え方です(銀行への返済原資は税引後利益なので)。

では、税引後利益が1,000万円、銀行借入の年間返済額300万円、社長への貸付金の年間増加額が500万円だとしたらどうでしょう?

税金を払ったあと手元に残るおカネ(1,000万円)で貸付金(500万円)をまかない、さらには借入の返済(300万円)もまかなえるので、とくに問題はないと考えることもできます。銀行融資では利益が重要だといわれますが、社長への貸付金についても利益は効果を発揮するわけです。

このように、「利益が出ている」ことで、社長への貸付金が問題にはならないケースもあります。

純資産が大きい

社長への貸付金が銀行融資で問題にならないケース、3つめは「純資産が大きい」です。社長への貸付金に対して、純資産が十分に大きければよしとする。そういった考えも銀行にはあります。

たとえば、社長への貸付金が500万円、純資産が2,000万円だとしたらどうでしょう?

純資産、つまりは会社が利益で増やしたおカネを社長に貸し付けたのであり、銀行から借入したおカネを貸し付けたのではない、との言い分が成り立ちます。銀行が社長への貸し付けを問題視するのは、銀行が貸したおカネを会社が社長に又貸ししているからです。この点、純資産が大きいほど、又貸しではないとの説得力が増すことになります。

これに対して、社長への貸付金が500万円、純資産が300万円だとしたらどうでしょう?

純資産(自己資本)だけでは足りず、銀行借入(他人資本)によるおカネを、社長への貸し付けに回したことがあきらかです。これでは言い逃れもできません。

以上をふまえて、社長への貸付金が問題にはならないケースとして、「純資産が大きい」ことが挙げられます。

なお、純資産が大きくても、社長へ貸し付けをするタイミングにも注意が必要です。銀行借入をした直後に、社長へ貸し付けをしていれば、おカネに色はないとはいえ、銀行から借りたおカネを社長に貸し付けたという見るのが自然でしょう。

まとめ

会社から社長への貸付金があると、銀行融資が受けられなくなることがあります。いっぽうで、社長への貸付金が必ずしも問題になるわけではありません。その具体的なケースを確認しました。

  • 返済されている
  • 利益が出ている
  • 純資産が大きい

「だから、社長への貸し付けをしたってよい」とまではいえませんが、「社長への貸付金=銀行融資NG」ではないことを理解しておきましょう。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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