できるはずのリスケも銀行から断られる会社とは?

できるはずのリスケも銀行から断られる会社とは?

データ上はほぼ100%に近い割合で承諾されるリスケ。そんな「できるはずのリスケ」であっても、銀行から断られてしまう会社とは?転ばぬ先の杖として覚えておきましょう。

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リスケは資金繰りの「さいごの砦」とも呼べるもの

会社が銀行に対してリスケを申し出た場合、ほぼ100%に近い割合で承諾されるとのデータがあります(金融庁『金融機関における貸付条件の変更等の状況について』)。が、そのように「できるはずのリスケ」であっても、銀行から断られる会社がゼロではありません。

では、具体的にどのような会社がリスケをできずに断られてしまうのか?以下の3つが考えられます。

  • 粉飾決算をしている
  • 相談するのが遅すぎる
  • 改善の見通しが立たない

そもそもリスケとは、リスケジュールの略であり融資条件の変更です。おもには、当面のあいだ(6か月〜1年ていど)、返済を猶予することを指します。資金繰りが厳しいので、ひとまず銀行に毎月の返済を待ってもらおうというわけです。

そういう意味では、リスケは資金繰りの「さいごの砦」とも呼べるものであって、それを断られるのでは困ってしまいます。ですから転ばぬ先の杖として、どのような会社がリスケをできずに断られてしまうのかを覚えておきましょう。

できるはずのリスケも銀行から断られる会社とは?

事業は山あり谷ありです。いつなんどき、自社が谷に陥るかはわかりません。そのときに銀行からリスケを断られてしまうことがないように、できるはずのリスケも断られる会社の特徴を理解しておきましょう。ふだんから、その特徴にあてはまらないように気をつけるということです。

粉飾決算をしている

できるはずのリスケも銀行から断られる会社の特徴、1つめは「粉飾決算をしている」です。粉飾決算とは、資産や利益を水増しして事実とは異なる決算書をつくることをいいます。銀行から融資を受け続けるために、粉飾決算をする会社はあるものです。

当然、銀行としては見逃せるものではありません。そもそも粉飾決算(=悪事)をするような会社に、社会の公器たる銀行が融資をするわけにはいかないからです。また、粉飾決算により歪んだ決算書では正しい評価ができず、銀行も融資判断ができないという理由もあります。

いずれにせよ、粉飾決算をしている会社は、本来できるはずのリスケも断られてしまうことがあるのです。なので、ふだんから粉飾決算などやめましょう。融資を受けたいがための粉飾決算が原因で、リスケができずに会社をつぶしてしまってはシャレにもなりません。

なお、粉飾決算にも「ていど」があります。

たとえば、減価償却費を法定限度額まで計上していなかったり、回収不能にもかかわらず損失処理していない売掛金がそのままになっていたりであれば、まだ弁解の余地はあります。「あらためて決算書を見直したところ…」などと言葉は濁しつつ(「粉飾決算」とは言わずに)、正しい数字を提示できるようになれば、銀行も目をつぶることはあるでしょう。経理処理のミスという見方もできるからです。

いっぽう、架空売上や架空在庫がある場合はそうもいきません。そこには、明確な故意と悪意がありますから、銀行にリスケを断られる可能性が高まります。「ちょっとした出来心で…」といった言い訳は通用しないので、くれぐれも安易に粉飾決算をしないように気をつけましょう。

相談するのが遅すぎる

できるはずのリスケも銀行から断られる会社の特徴、2つめは「相談するのが遅すぎる」です。ここでいう「遅すぎる」とは、預金残高が少なすぎることを意味します。つまり、預金残高が少なくなりすぎてからリスケを相談するようでは遅い、ということです。

では、預金残高が少なすぎるとは具体的にどれくらいをいうのか?

預金残高が月間固定費の1か月分を下回るようなら、少なすぎるといってよいでしょう。こうなると、リスケをして毎月の返済をゼロにしたとしても、すぐに資金ショートしてしまう可能性が高いとみなされてしまいます。よって、リスケをするにも預金残高が多いほうがよいのです。

この点、リスケの判断が遅すぎるケースが少なくありません。預金残高がほとんどゼロに近づいてから、ようやくあきらめたようにリスケの相談をする。銀行にしてみれば、リスケをするのも心配な状況です。銀行がリスケを承諾するのは、「いずれ返済してもらえるから」であることを理解しましょう。まもなくつぶれるかもしれない会社に、リスケはしたくないのが銀行です。

では、会社はいつリスケを相談すればよいのか?

いろいろと手を尽くしても、「返済額>税引後利益+減価償却費」となったとき、かつ、銀行から新規の借入ができなくなったときです。そのうえで、預金残高ができるだけ多いうちにリスケを相談することです。そのタイミングでリスケができると、会社はあるていど預金を持った状態で再建に踏み出せるため、再起の可能性が高まります。

おカネがなくなるほどギリギリまで、リスケを先送りしないようにしましょう。できるはずのリスケさえできなくなってしまいます。

改善の見通しが立たない

できるはずのリスケも銀行から断られる会社の特徴、3つめは「改善の見通しが立たない」です。銀行がリスケを承諾するのは、「いずれ返済してもらえるから」であることは前述しました。だとすれば、リスケにいたるほどの窮状を改善する見通しが立たなければ、リスケを断られるのは当然です。

にもかかわらず、「資金繰りが厳しいから」とただただリスケを相談する社長がいます。やめましょう。リスケを断られる可能性が高まりますし、リスケを承諾されたとしても条件が悪くなってしまいます。リスケを相談するタイミングで、改善の見通しを銀行に伝えられることが大切です。

具体的には、経営改善計画書を作成します。なかみとしては、経営理念・方針の再認識にはじまり、現状分析、課題の抽出と解決に向けた具体策の立案、以上にもとづく行動計画・数値計画です。経営改善計画書の考え方や書式など、こちらの著書を参考にしていただければとおもいます。

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こうした「書類」もなしに、「口頭」だけで済まそうとする社長も少なくありません。ですが、銀行は社長の本気度を「書類」ではかります。口頭では社長自身が計画を管理できないし、そのような計画の達成度が低いことを銀行は知っているからです。なので、改善に向けた計画は書類で提示できるようになりましょう。経営改善計画書をつくれるようになることです。

なお、計画はつくっておしまいではありません。作成はあくまでスタートに過ぎず、そこからが本番です。つくられた計画どおりの行動ができるのか、行動の結果、計画どおりの数字をあげられるのか。計画の実行管理が大切になります。このような計画の作成・管理は一朝一夕に身につくものではなく、平時からの運用が欠かせません。いまのうちから取り組みましょう。

まとめ

データ上はほぼ100%に近い割合で承諾されるリスケ。そんな「できるはずのリスケ」であっても、銀行から断られてしまう会社として、以下の3つを挙げました。

  • 粉飾決算をしている
  • 相談するのが遅すぎる
  • 改善の見通しが立たない

リスケは資金繰りの「さいごの砦」とも呼べるものであって、それを断られるのでは困ってしまいます。ですから転ばぬ先の杖として、どのような会社がリスケをできずに断られてしまうのかを覚えておきましょう。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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