PLではわからないことがあり、BSでもわからないことがあり、そしてCSでもわからないことがあります。では、いったい何がわからないというのか?では、何を見ればわかるのか?のお話です。
何を見ればわかるのか
PLを見てもわからないことがあります。BSを見てもわからないことがあり、CSを見てもなおわからないことがあります。では、いったい何がわからないというのか?では、何を見ればわかるのか?そんなお話をしていきます。
その前に、PLとは損益計算書、BSとは貸借対照表のことです。2つをあわせて「決算書」として、なじみがある社長がほとんどでしょう。これに対して、CSとはキャッシュフロー計算書のことであり、PL・BSほどにはなじみがない社長がほとんどだとおもわれます。
なぜなら、CSはPL・BSとは違って、中小企業には作成義務がないからです。ちなみに、PLとBS、CSの3つをあわせて「財務3表」などとも呼ばれます。そのうえで冒頭のお話です。
繰り返しになりますが、PLではわからないことがあり、BSでもわからないことがあり、そしてCSでもわからないことがある。では、いったい何がわからないというのか?では、何を見ればわかるのか?次のような流れでお伝えしていきます。
- PLではわからないこと
- BSでもわからないこと
- CSでもわからないこと
これらについて、このあと順番に確認していきます。
PLではわからないこと
PLとは損益計算書のこと。社長はPLを見ることで、売上や利益に注目しているものとおもいます。実際、PLは「売上−費用=利益」の構成であり、売上や利益に注目をする見方に間違いはありません。
また、会社(事業)は利益を出すためにあるのですから、利益の有無は大事です。しかし、利益が出てさえいればよいのかといえば、そうではありません。なぜなら、利益が有ってもおカネが無いことはあるからです。利益とおカネの動きは別、ともいわれます。
たとえば、商品を販売して(引き渡して)100万円の売上があれば、その分の売上と利益は損益計算書に記載されます。ところが、その代金をまだ受け取っていない(売掛金)としたらどうでしょう?売上や利益はあっても、その分のおカネはまだないことになります。
いうまでもなく、利益も大事ですがおカネも大事です。おカネが尽きれば会社はおしまいなのですから、社長はおカネの有無にも気を配らなければなりません。ところが、前述したような「おカネはまだない」という状況が、PLではわからないのです。
PLで「現在(一定期間)の利益」はわかっても、「現在(一定時点)のおカネ」はわからないともいえます。PLの構成は「売上−費用=利益」なのですから当然です。では、何を見ればわかるのか?
BSです。決算書ではPLと対をなすBSを見れば、「現在のおカネ」はわかります。
BSでもわからないこと
BSとは貸借対照表のこと。BSの構成は「資産=負債+純資産」です。よって、社長はBSを見ることで、会社の財産状況を把握できます。このうち「資産」のなかには、「預金」が含まれるため、BSを見れば「現在(決算日)のおカネ」はわかるわけです。
では、PLで利益がわり、BSでおカネがわかり、これで万事OKかといえば、そうではありません。なぜなら、BSで確認できるおカネは「現在(決算日)」のおカネでしかなく、残高が把握できるに過ぎないからです。
もちろん、残高を把握するのも大事なのですが、加えて、「おカネの増減」についても把握する必要があります。つまり、「現在のおカネ」は以前と比べて「いくら増えたのか、なぜ増えたのか」を把握する必要があるということです。
それを社長がわからずにいると、「利益は出ているのに、なぜおカネがないんだ…?」となってしまいます。おカネがないという事実だけはBSでわかりますが、その原因までをBSで把握するのは困難です。できないこともありませんが、相応の知識や慣れを要します。
また、知識や慣れがあったとしても、BSを一見して把握することはできません。時間はかかります。では、「おカネの増減」については何を見ればわかるのか?
もうお気づきでしょう。そのとおり、CSです。第3の財務諸表と呼ばれるCSをれば、「おカネの増減」が瞬時にわかります。
CSでもわからないこと
CSとはキャッシュフロー計算書のこと。とはいえ、あまりなじみがない、見たことさえないという社長もいるでしょう。つくり方となれば、なおさらご存じない社長がほとんどです。この点、中小企業庁がWEBでExcelファイルを提供しています。これがあれば、決算書の数字を入力することで、CSを作成することが可能です。
中小企業庁提供 CS作成ができるExcelファイル
(リンクをクリックするとダウンロードされます)
あるいは、顧問税理士に作成を相談するのもよいでしょう。いずれにせよ、CSを作成することで「おカネの増減」がわかるようになります。
CSの構成は、「期首のおカネ+営業CF+投資CF+財務CF=期末のおカネ」です。CFとはキャッシュフローの略であり、おカネの動きを意味します。営業CFとは、本業におけるおカネの動きです。投資CFは設備投資・設備売却などのおカネの動きであり、財務CFは借入・返済などのおカネの動きをいいます。
それら3つのCF(とその内訳)を見ることで、社長はおカネが増減した原因を把握できます。これで今度こそ万事OKかと思いきや、まだ足りません。
それが、「将来のおカネ」です。「現在のおカネ」については、BSで確認できることは前述しました。ところが、いうなれば「過去のおカネ」に過ぎず、本当に大事なのは「将来のおカネ」であり、「これから先もおカネがなくなることはないか?」です。
そこはCSでもわかりません。将来のおカネについては、財務3表とは別に「資金繰り表」をつくることで検討する必要があります。
資金繰り表の構成は、「前月の預金残高+ひと月の収入−ひと月の支出=その月の預金残高」です。向こう1年分ていどの資金繰り表をつくることで、社長は「将来のおカネ」を見通せるようになります。すると、将来の資金不足に対して、早めに手を打つことが可能です。
たとえば、銀行借入であれば、早ければ早いほど難易度は下がりますし(遅くなるほど難易度は上がる)、資金繰り表を提示できると銀行は融資の検討がしやすくもなります。
資金繰り表については、WEB上でも様々な雛形が提供されています。公的金融機関である日本政策金融公庫が提供しているExcelファイルを利用するのもよいでしょう。
まとめ
PLではわからないことがあり、BSでもわからないことがあり、そしてCSでもわからないことがあります。では、いったい何がわからないというのか?では、何を見ればわかるのか?について、お話をしました。
- PLではわからないこと→現在のおカネ
- BSでもわからないこと→おカネの増減
- CSでもわからないこと→将来のおカネ
だから、PLだけではなくBSも見よう、CSも見ようということであり、それでも足りないから資金繰り表をつくりましょう、というのが結論です。おカネが尽きたときが会社のおしまいなのですから、社長は「将来のおカネ」まで見据えておかねばなりません。