「使いみちのないおカネを借りる」のは大事なことです。その理由がわからずにいると、会社はムダに資金繰りを悪くしてしまうことがあるので注意しなければいけません。
借りないほうが資金繰りが悪くなる
会社の銀行融資について、「使いみちのないおカネを借りる」のは大事なことだと考えています。などといえば、反対意見があるのは百も承知です。「使いみちもないのにおカネを借りるだなんてよくない」とか、「使いみちもないのに銀行がおカネを貸すものか」とか。
それでもなお、「使いみちのないおカネを借りる」のは大事なことだと考えているし、それをおすすめもしているのにはもちろん理由があります。ぜんぶで3つ、次のとおりです。
- おカネがなくなればおしまい
- 借りたいときには借りれない
- 使わなければ借入ゼロと同じ
これらの理由がわからずにいると、会社はムダに資金繰りを悪くしてしまうことがあるので注意が必要です。おカネを借りれば、その返済負担から資金繰りは悪くなるのではないかとおもわれるかもしれませんが、必ずしもそうではないのです。むしろ、借りないほうが資金繰りが悪くなることもある、という視点を持てるようにしましょう。
そのために、前述した3つの理由をこのあと解説していきます。
使いみちのないおカネを借りる理由
ここでいう「使いみちのないおカネ」とは、すぐには使わないおカネを指します。いうなれば「余分なおカネ」です。そのように余分なおカネを借りたがために、余計な利息を払う意味はあるのか?そもそも、銀行が余分なおカネを貸すのか?という点にも注目しましょう。
おカネがなくなればおしまい
使いみちのないおカネを借りる理由、1つめは「おカネがなくなればおしまい」です。
あらためていうまでもなく、おカネが尽きれば会社はつぶれます。社長であれば誰もがわかっていることですが、実際の行動はといえば別の話です。典型例として、使いみちのないおカネを借りようとしない社長がいます。言い換えると、必要なときに必要なだけのおカネを借りる社長です。
それでも、会社に潤沢な預金があるのであればよいでしょう。ところが、多くの中小企業ではそこまでの預金を持ててはいないものです。よって、新型コロナの折には、多くの会社が銀行に殺到しました。そして、文字どおり、銀行の窓口には「行列ができた」のです。
これをふまえて、不測の事態まで考慮するのであれば、おすすめは「年間売上高の半分」の預金を持つことです。そうそう起きることのない不測の事態にまで備えるなんて…と、おもわれるかもしれません。ですが、そうそう起きることのないことが起きたときに、おカネが足りずにつぶれるのでは困るでしょう。だったら、備えなければいけません。
にもかかわらず、潤沢な預金(年間売上高の半分)もないのに、おカネを借りずにいるのは矛盾しています。「おカネが尽きれば会社はつぶれる」ことについて、アタマではわかっていても行動がともなっていないということです。
理解と行動を一致させるのであれば、使いみちのないおカネも借りましょう。
借りたいときには借りれない
使いみちのないおカネを借りる理由、2つめは「借りたいときには借りれない」です。
使いみちのないおカネを借りましょうというと、必ず出てくるのが「必要なときに借りればいい」という意見です。理屈としてはそのとおりでしょう。ですが、理屈にすぎません。なぜなら、借りたいときには借りれないからです。
もう少し正確にいえば、借りたいときに借りれるとは限らないということです。融資が銀行の審査によるものである以上、貸すか貸さないかの決定権は常に銀行にあります。だとすれば、借りたいからといって借りれるものではありません。
この点、銀行が貸したいとおもえるような会社(≒業績がよい会社)になればよい、という意見もあります。それも理屈としてはそのとおりです。が、やはり理屈にすぎません。銀行が貸したいとおもえるような会社になったとしても、「いまは貸せない」というタイミングはあるものだからです。
銀行にも営業目標があります。よって、融資を増やしたい時期もあれば、そうでもない時期はあるのです。すると、「いま貸すよりも、もう少しあとで貸したい」というときもあります(僕が勝手に言っているのではなく、銀行員の方から聞いたことです)。では、会社がいま借りたいときに、銀行からそうおもわれてしまったら…会社は困ったことになるはずです。
ゆえに、使いみちのないおカネも、あらかじめ借りておくことに意味があります。
使わなければ借入ゼロと同じ
使いみちのないおカネを借りる理由、3つめは「使わなければ借入ゼロと同じ」です。
ここまで、「おカネがなくなればおしまい」「借りたいときには借りれない」という話をしました。しかし、銀行が使いみちのないおカネを貸すものか?と、疑問におもわれるかもしれません。だって、銀行融資は資金使途が大事だともいわれるじゃないか、ということです。
この点、使いみちのないおカネも資金使途に含まれることがあります。使いみちのないおカネとは、いますぐに使わないおカネであり、いつでも返済に回せるおカネです。だとすれば、使いみちのないおカネを借りたとしても、その借入は無いのと同じだといえます。
銀行もそれはわかっているので、使いみちのないおカネも貸すことはあるのです。具体的には、運転資金としての融資になります。運転資金の主は経常運転資金であり、「売掛金+棚卸資産―買掛金」で計算される額です。ところが、その額ぴったりというのでは資金繰りもギリギリになりますから、「+α」のおカネがあったほうがよいことは銀行もわかっています。
その「+α」が使いみちのないおカネです。では、どれだけの額の「+α」を借りられるのかといえば、状況によります。自社の業績がよいほど、銀行は「貸したい」と考えるでしょうし、銀行が貸したいタイミング(営業目標を達成したい!)もあるでしょう。よって、ケースバイケースです。
いずれにせよ、使いみちのないおカネも銀行が貸すことはあると理解しておきましょう。使いみちのないおカネも、資金使途になりうるということです。
まとめ
「使いみちのないおカネを借りる」のは大事なことです。その理由がわからずにいると、会社はムダに資金繰りを悪くしてしまうことがあるので注意しなければいけません。理由はぜんぶで3つ、次のとおりであることをお伝えしました。
- おカネがなくなればおしまい
- 借りたいときには借りれない
- 使わなければ借入ゼロと同じ
むしろ、余分なおカネも借りないほうが資金繰りが悪くなる、という視点を持てるようになりましょう。