「いつでも借りれるようになりましょう」という考え方があります。現実的にはありえない話ではあるものの、「いつでも借りれる」の本質に迫ってみました。
いつでも借りれるという無謀と傲慢と
会社の銀行融資について、「いつでも借りれるようになりましょう」という考え方があります。僕自身はおすすめしていません。なぜなら、「いつでも借りれるようになる」のは理想ですが、現実的ではないからです。
端的にいえば、融資の可否を決めるのが銀行である以上、主導権は「常」に銀行側にあるからです。つまり、「いつでも借りれるようになりましょう」とは、「じぶんがコントロールできないことをコントロールしようとする行為」であり、無謀ないしは傲慢というものでしょう。
ですが、いつでも借りれるように「努める」ことは大切です。言い換えると、「借りたくても借りれない状態をつくってしまわないようにする」のは大切なことです。具体的には、次の3つが挙げられます。
- 利益を出し惜しまない
- 粉飾決算をしていない
- 資金使途違反をしない
以上をふまえて、「いつでも借りれるようになりましょう」とは、本質的には上記3点を果たすことだというのが僕の考えです。それができれば、絶対にいつでも借りれるわけではないものの、借りれる「確率が上がる」のはたしかでしょう。
このあと、3点を詳しく解説していきます。
いつでも借りれるとはどういうことか
「いつでも借りれるようになりましょう」とは、本質的にはどういうことなのか。現実には、けしていつでも借りれるなどということはない点は忘れずに、それでもできるだけ借りやすくするためにはどうしたらよいかを考えていきましょう。
利益を出し惜しまない
いつでも借りれるとはどういうことか、1つめは「利益を出し惜しまない」です。
これから事業をはじめようとする社長に言ったら、「そんなバカな」とおもわれることでしょう。だって儲けるために会社を起こすのに、利益を出し惜しむなどありえない。ところが、いざ起業してみると利益を出し惜しむ社長がいます。
理由は税金です。利益が増えるほど税金(法人税)が増えるしくみであるため、「納税するくらいなら、経費をつかって利益を減らそう」と考える社長もいるのです。
いっぽうで、銀行は「利益=返済力」と見ています。よって、利益を出し惜しむと銀行からの評価は下がり、融資が受けにくくなるのは「必然」です。だから、いつでも融資を受けやすい状態を目指すのであれば、社長は「常」に、出せる利益を惜しまず出すことです。
ちなみに、銀行に対して「わざと利益を減らしている(本当はもっと利益を出せる)」などという言い訳は通用しません。銀行にしてみれば本当にわざとかどうかはわからず、それよりなにより、利益を減らそうとする発想自体が歓迎すべきものではないからです。
少々乱暴な表現をしますが、「銀行の商売は貸してナンボ」です。貸すためには「利益=返済力」が必要なのであり、ふだんから利益を出し惜しむような会社を、銀行が好むわけがありません。いつでも借りれるようになりたいのなら、利益を出し惜しんではダメなのです。
粉飾決算をしていない
いつでも借りれるとはどういうことか、2つめは「粉飾決算をしていない」です。
銀行が利益を好むのは知っている。だったら…ということで粉飾決算をする会社があります。実際よりも利益を大きく見せるために、会計帳簿に細工をして水増しするのが粉飾決算です。もちろん、許されることではありません。
粉飾決算を知れば、銀行が融資をしないこともまた「必然」です。なので、ふだんから粉飾決算をしているようだと、いつでも借りれるようになるなど夢のまた夢となってしまいます。いざ借りようとするときになって、「これからはもうしません」との謝罪も役に立たないものと考えておくのがよいでしょう。
よって、ふだんから粉飾決算をしないことが大切です。といえば、多くの社長が「ウチは粉飾決算などしていない」と考えるでしょう。ところが、意外と多くの会社で「社長が気づかぬうち」に粉飾決算をしている点には注意が必要です。
たとえば棚卸資産。決算書に掲載されている棚卸資産の金額のなかに、不良在庫・滞留在庫がある。これもまた粉飾決算です。本来、損失として計上し、棚卸資産の金額からは除くべきものだからです。にもかかわらず、社長には粉飾決算の自覚がありません。
また、減価償却費を法定限度額まで計上していないケースも、粉飾決算にあたります。そもそも法定限度額ってなに?という社長もいますし、減価償却費をいくら計上しているかを把握していない(税理士任せの)社長もいます。結果、気づかぬうちに粉飾決算となってしまうのです。
粉飾決算を他人事にしないよう、十分に気をつけましょう。
資金使途違反をしない
いつでも借りれるとはどういうことか、3つめは「資金使途違反をしない」です。
銀行が嫌うものの1つに、「資金使途違反」が挙げられます。文字どおり、資金使途に違反することです。運転資金として借りたのに、そのおカネで社長が高級車を買っていたとか、株式投資をしていたとか。
銀行は資金使途を見て融資をしています。つまり、その資金使途だから貸すのであって、当初の資金使途と違うことにおカネを使うのであれば「約束破り」です。言うまでもなく、銀行からの信用を損ないます。損なえば、次回からの融資が受けられなくなることもあるのです。
したがって、いつでも借りやすい状態でいたいのなら、資金使途違反は絶対にやめましょう。なかには軽い気持ちでおカネを使ってしまう社長もいますし、使っても「バレていないから大丈夫」だとタカをくくっている社長もいます。
ですが、「バレるのはこれから」ということはあるものです。資金使途違反した直後にはバレずとも、次の決算書を銀行に渡すとき、次の借入をするときに銀行に気づかれることは多々あります。
信用保証協会の保証付き融資で資金使途違反をした結果、数年にわたり保証付き融資が受けられなくなった例もあります。中小企業にとっては死活問題です。ほんの出来心で資金使途違反…などということがないように気をつけましょう。
まとめ
「いつでも借りられる」というのは理想論であり、現実には難しいものがあります。なぜなら、主導権は常に銀行にあるからです。ただし、「借りたくても借りれない状態をつくらない」努力はできます。
そのために社長が意識すべきことは、次の3点です。
- 利益を出し惜しまないこと
- 粉飾決算をしないこと
- 資金使途を守ること
いつでも借りれる状態とは、これらの基本を誠実に積み重ねた結果にすぎません。コントロールできるのは、銀行ではなく自社(社長)の行動です。だからこそ、できることを確実にやっていきましょう。