決算月の変更は銀行融資に有効だというハナシがあります。たしかに、そういった一面はあるものの、注意も必要です。そこで、何が有効で何に注意が必要かをまとめてみました。
決算月の変更は簡単だけど
銀行融資をスムーズに受けるコツ、という話があります。決算月の変更は、その1つだといってよいでしょう。つまり、自社の決算月を変更することで、銀行融資をよりスムーズに受けられるかもしれないということです。
ちなみに、決算月の変更手続きはそれほどタイヘンなものではありません。登記申請も必要なく、株主総会で「決算月の変更(定款の変更)」を決議するだけです。あとは、税務署などに変更した旨を届け出ればおしまいとなります。
であれば、「決算月を変えてみよう」とおもわれるかもしれませんが、実は注意も必要です。そこで、決算月の変更が銀行融資に有効である点と、注意点とをお伝えします。内容としては次のとおりです。
- 利益を出しやすくなる
- 預金が多い時期を狙える
- 何も変わらなかった事例も
1項目めの「利益を出しやすくなる」と、2項目めの「預金が多い時期を狙える」のは、決算月の変更が銀行融資に有効である点であり、3項目めの「何も変わらなかった事例も」が注意点となります。あわせて押さえておきましょう。
利益を出しやすくなる
決算月の変更が銀行融資に有効である点として、「利益を出しやすくなる」ことが挙げられます。
そもそも、決算月をいつに変更したらよいのか?基本的な考え方は、「利益が出る月(売上が多い月)ほど期首」であり、利益が少ない月(売上が少ない月)を決算月にすることです。これにより、社長は決算での利益を出しやすくなります。銀行は利益を評価しますから、融資が受けやすくなるわけです。
逆に、決算月に近づくほど利益が増える会社はどうでしょう?決算間際になって利益が増え、社長は納税を嫌って利益を出し惜しむケースがあります。つまり、無理やり費用を増やしたり、無理やり売上を先送りしたりして、出せるはずの利益を出そうとしないことがあるのです。利益が減れば、銀行からの評価は下がるのですから、よいことでないのはわかるでしょう。
この点、決算月を変更することで、期首に大きな利益が確定し、期末に向かって利益は少なめとなれば、社長は決算での利益も読みやすく、納税に対する抵抗も減らせます。また、納税に向けて資金の算段をする時間もありますから、やはり納税に対する抵抗を減らせます。結果として、出せる利益を惜しまず出せることになり、銀行からの評価も上がって融資が受けやすくなるのです。
預金が多い時期を狙える
銀行が利益を評価することは前述しました。あわせて、銀行が評価しているものに「預金」があります。端的にいえば、預金が多いほど銀行の評価は高く、預金が少ないほど銀行の評価は低くなります。返済財源が預金である以上、そのような銀行の評価は当然といえるでしょう。
ところが、決算月に限って預金が少ない会社はあるものです。もう少し具体的にいうと、売掛金や棚卸資産が多く、その分だけ預金が少なくなっているような会社です。決算月に向かって利益が多くなる(売上が多くなる)会社では、起こりがちな現象でもあります。売上が増えれば、売掛金や棚卸資産が増えるのは自然だからです。
そこで、決算月の変更が役立ちます。1年のなかでも、預金が多い時期を狙って決算月にするわけです。直近3年ていど、毎月末の預金残高の推移を確認することで、預金が多い時期・少ない時期を確認してみるとよいでしょう。資金繰り表で確認できると、より確実です。
基本的には、前述したように利益が少ない月を決算月にすることで、売掛金や棚卸資産が少なくなるため、預金が多い時期にあたるものとおもいます。いずれにせよ、決算月は預金が多いタイミングがベストです。
なお、銀行は2月や8月に積極的に融資をすることがあります。3月や9月が銀行の決算時期であり、そこへ向けて融資を増やしたいからです。この点、自社の決算を11月決算や5月決算にすると、ちょうど決算書ができあがる時期が2月や8月にあたり、銀行は融資を検討しやすく、会社は融資が受けやすくなるというメリットがあります。
そのためだけに決算月を変更する必要はありませんが、利益(売上)の少ない月や預金の多い月とちょうど重なるようであればラッキーです。
何も変わらなかった事例も
ここまで、決算月の変更が銀行融資に有効であることをお伝えしてきました。ですが、注意点として「何も変わらなかった事例も」あることをお伝えしておきます。
決算月の変更にあたり、「利益が多い月を期首に・利益が少ない月を決算月に」という話をしました。これにしたがって決算月を変更したところ、それでもなお、決算月の利益が多くなってしまった…という例があります。
原因は、決算が近づかないとエンジンがかからない企業体質だからです。つまり、決算が近づくと社長が「もうすぐ決算だからがんばれ」と発破をかける。そこでようやく、社員が本腰を入れ始めるというようなケースであり、意外と「あるある」なので注意が必要でしょう。
ですから、決算月を変更する前に、まずは「なぜ利益(売上)に変動があるのか?」を究明することが重要です。それをせずに、ただただ利益(売上)が多い・少ないという表面的な数字だけを見て決算月を変更すると、前述した例のような状況に陥ってしまいます。
決算月を変えさえすれば、銀行融資に有効なわけではありません。
まとめ
決算月の変更は銀行融資に有効だというハナシがあります。たしかに、そういった一面はあるものの、注意も必要です。そこで、何が有効で何に注意が必要かをまとめてみました。
- 利益を出しやすくなる
- 預金が多い時期を狙える
- 何も変わらなかった事例も
1項目めの「利益を出しやすくなる」と、2項目めの「預金が多い時期を狙える」のは、決算月の変更が銀行融資に有効である点であり、3項目めの「何も変わらなかった事例も」が注意点となります。あわせて押さえておきましょう。