増益(利益が増える)でも、減収(売上が減る)だと銀行融資が受けにくくなります。その理由がわからず、対応が遅れると資金繰りは悪化するので気をつけましょう。
増益・減収だと融資は受けにくい
会社で銀行融資を受けるには利益が大事、というのはよく見聞きする話です。では、利益が出ていればよいのか、利益が増えていればよいのかといえば、実はそうでもありません。利益が増えていても、売上が減っている場合には銀行融資が受けにくくなることがあります。
つまり、増益(利益が増える)でも減収(売上が減る)だと銀行融資が受けにくくなる、というのが本記事の結論です。とはいえ、なぜなのか。その理由を理解することで、増益・減収時の銀行対応も見えてくるはずです。いっぽうで、対応できずにいれば資金繰りは悪化します。
そこで、このあとお伝えするのがこちらです。
- そもそも、なぜ利益が大事なのか
- 利益の源泉が減れば融資しずらい
- 経常運転資金が減ると融資も減る
というように、まずは、銀行融資を受けるには利益が大事である理由を確認します。そのうえで、増益・減収時には融資が受けにくくなる理由を2つ、順番にお伝えする流れです。
そもそも、なぜ利益が大事なのか
冒頭でもふれたとおり、会社で銀行融資を受けるには利益が大事だといわれます。なぜなら、銀行は「利益=返済力」と見ているからです。もう少し具体的にいうと、「税引後利益>返済額」が銀行が考える、融資先の望ましい姿になります。
税引後利益とは、税金を支払ったあとの利益であり、税金を支払ったあと手元に残るおカネです。そのおカネがあってはじめて、会社は借りたおカネを返済できるということになります。利息は経費になっても元金返済は経費にならないから、ともいえるでしょう。
いずれにせよ、「税引後利益>返済額」が望ましい姿なのであり、逆に「税引後利益<返済額」となれば、いずれ会社は返済できなくなることを意味します。利益よりも返済が多くなれば、会社は預金を取り崩して返済をしなければならず、いずれ預金も底をつくからです。
よって、会社で銀行融資を受けるには利益が大事だということになります。では、利益が出ていればよいのか、利益が増えていればよいのかといえばそうでもない、というのがここからのお話です。結論はすでに述べたとおり、増益・減収時には銀行融資が受けにくくなります。
利益が増えていても、売上が減っていると銀行融資は受けにくくなる。その理由は2つです。このあと、順番に確認していきましょう。
利益の源泉が減れば融資しずらい
増益でも減収だと銀行融資が受けにくくなる理由、1つめは「利益の源泉が減れば融資しづらい」です。
ここでいう「利益の源泉」とは、売上をいいます。売上なくして利益はない。売上があってはじめて、利益が生じる。つまり、「売上=利益の源泉」が銀行の見方です。だとすれば、売上が減ることは利益の減少をイメージさせます。
いまは利益が出ていたとしても、いまは利益が増えていたとしても、いっぽうで売上が減っているのであれば、いずれ利益も減るかもしれない。売上が利益の源泉である以上、売上が減ることは銀行にとっては不安材料になるのです。
したがって、「増益・減収時」は「増益・増収時」に比べると、融資が受けにくくなることがあります。そういう意味で、銀行には「売上至上主義」的な見方があるといってよいでしょう。
とはいえ、会社の側からすれば、意図的に減収しているケースもあります。利益率を高める過程(たとえば値上げ)では減収もやむなし、との考えです。この場合には、方針と取り組みについて、銀行にきちんと伝えることが大事になります。
いまは減収しているけれど、利益率を高める過程にあり、将来の利益を減らすものではないし、むしろ、将来の利益の維持・増加につながるものであることを伝えましょう。加えて、将来の増収が見込めるのであれば、売上計画を提示することが銀行の安心につながります。
「利益=返済力」なのだから、増益でありさえすればよいとは考えずに、減収している場合には、銀行を安心させる対応が必要になることを理解しておきましょう。なんの対応もしないでいると、融資を受けにくくする可能性が高まります。
経常運転資金が減ると融資も減る
増益でも減収だと銀行融資が受けにくくなる理由、2つめは「経常運転資金が減ると融資も減る」です。
経常運転資金とは、「売掛金+棚卸資産−買掛金」をいいます。会社が事業を続けている限り必要なおカネであり、銀行から融資を受けて確保するのが財務のセオリーです。もちろん銀行も、経常運転資金分の融資をするのはあたりまえとして考えています。
では、会社が減収になるとどうなるか?
ふつうは、経常運転資金が減ります。売上が減れば、売掛金も棚卸資産も減るからです。買掛金も減りますが、それよりも売掛金や棚卸資産の減りのほうが大きいために、売上が減ると経常運転資金の額も減ることになります。
銀行が融資をするのは、経常運転資金分の金額であり、その金額が減ったのであれば、その分融資も減るのは当然でしょう。したがって、増益することで「返済力」は上がったとしても、減収することで「資金使途(経常運転資金)」が減ってしまい、融資が受けにくくもなるのです。
ここは、利益さえ出ていれば借りられると考えていると盲点になります。想定外で借りられずに困った…とはならないように、減収する前に借りておくことが大事になります。減収してからでは、経常運転資金分の融資が減ってしまうので、減る前に借りておくということです。
そのためにはまず、日ごろから売上の見込みを把握する。そのうえで、売上が減るとわかったら、できるだけ早く経常運転資金の融資を銀行に相談する。この対応が必要になります。
繰り返しになりますが、銀行は利益だけを見て融資をするのではありません。資金使途(貸す理由)がなければ融資ができません。減収するということは、資金使途がなくなることでもあります。ゆえに、減収すれば融資が受けにくくなることを理解しておきましょう。
まとめ
増益(利益が増える)でも、減収(売上が減る)だと銀行融資が受けにくくなります。その理由がわからず、対応が遅れると資金繰りは悪化するので注意が必要です。
まずは、銀行融資を受けるには利益が大事であることを理解したうえで、増益・減収時には融資が受けにくくなる2つの理由を押さえておきましょう。
- 利益の源泉が減れば融資しずらい
- 経常運転資金が減ると融資も減る
これらの理由がわかっていれば、とるべき銀行対応もわかるようになります。1つめの理由については、銀行に対して「将来の利益・将来の売上」を伝えることです。2つめの理由については、経常運転資金が減る前にできるだけ早く融資を受けることです。