金利引き上げの「上げ幅」は妥当か?持ち帰ったあとの診断フロー

金利引き上げの「上げ幅」は妥当か?持ち帰ったあとの診断フロー

前回の記事では、金利引き上げを打診されたときに「即答しない」ことの大切さをお話ししました。では、持ち帰ったあとに何を見ればいいのか。
上げ幅を「基準金利(短プラ等)の変化」と「上乗せ(スプレッド)の変化」に分解して診断する手順をまとめます。

目次

導入:持ち帰ったあと、何を見ればいいかわからない

前回の記事で、金利引き上げの打診に対して「即答しない」「いったん持ち帰る」ことが第一歩だとお伝えしました。

ですが、持ち帰ったあとに何をどう見ればいいのかがわからず、結局そのまま飲んでしまった…という社長の話を、僕は少なからず聞いてきました。

なぜそうなってしまうのか?
根っこは「交渉術の不足」ではなく、上げ幅が妥当かどうかを判断する材料が揃っていないことにあります。

金利はだいたい「基準金利(短プラなど)+上乗せ(スプレッド)」で組み立てられる傾向があるので、上げ幅をこの2つに分解するだけで、診断の土俵がまるで変わることを知っておくとよいでしょう。

先に要点からいうと…

  • 「即答しない」の次に必要なのは、上げ幅の 「内訳」 を見極める技術
  • 金利は「基準金利+上乗せ(スプレッド)」の二階建て。どちらが動いたかで対応が変わる
  • 上げ幅を分解できれば、 揉めない返し方 が見えてくる

上げ幅が「気分」に見えるのは分解されていないから

「銀行が強いから、言われた通りにするしかない」
「金利は相場だから、妥当性の判断なんてできない」

僕もその昔はそうおもっていた時期があります。ですが、少し視点を変えてみると景色が違ってきます。金利が「銀行の気分」で決まっているように見えるのは、中身が分解されていないからです。

銀行の金利は、一般に 「基準金利(短プラ等)+上乗せ(スプレッド)」 という二階建てで組み立てられる傾向があります。

今回の上げ幅は、市場の指数(短プラなど)が動いた分をそのまま転嫁しようとしているだけなのか。それとも、会社の内部評価(格付など)の見直しによる「上乗せ部分」の引き上げが含まれているのか。

この内訳が見えないと、判断が難しくなります。

もちろん、内部評価(≒格付)の詳細がすべて開示されることは稀でしょう。ですが、少なくとも「今回の引き上げは指数の改定分ですか、それとも当社条件の見直しですか」と聞き出すことはできます。

仕組みを理解し、内訳を確認する。それだけで、銀行の提示が妥当かどうかの診断は、現実味を帯びてくるものと考えます。

妥当性診断は3ステップ

持ち帰ったあとにやるべきことは、上げ幅の「内訳」を整理すること。ここで必要なのは、結論ではなく 「順番」 です 。

ステップ1:契約タイプを確定する

自社の借入が「短期プライムレート(短プラ)連動」なのか、「TIBOR連動」なのか、「固定金利」なのか。ここが曖昧なまま交渉に入ると、相手が何を根拠に話しているかすら噛み合わなくなりがちです。

契約書を引っ張り出すのが面倒なら、銀行の担当者に「ウチの契約タイプを教えてください」と聞くだけでも十分です。

ステップ2:上げ幅を分解する

前述した二階建ての構造を、自社の契約に当てはめてみます。

提示された上げ幅のなかに「基準金利(短プラ等)の改定分がそのまま転嫁されただけ」なのか、「上乗せ部分(スプレッド)の見直し」も混ざっているのかを切り分けてみましょう。

ここが見えないと、提示された数字の根拠がわからないままになります。

基準金利の改定幅と、提示された上げ幅がほぼ一致しているなら、それは市場全体の動きが転嫁されただけの可能性があるわけです。

いっぽう、改定幅を明らかに超えている場合は、自社固有の条件見直しが含まれていることになります。後者であれば「見直しの観点」を聞く余地は、社長の側にもあるというものです。

ステップ3:外れ値を検知する

上げ幅の「大きさ」を測るモノサシも持っておくと、判断が荒れにくくなります。

あくまで過去の傾向としての目安ですが、+0.1%程度なら基準の転嫁にとどまるケースが多く、+0.3%を超えてくると条件見直しが混ざっている可能性が出てくる。+0.5%以上となれば、銀行側がかなり強気に出ている状況といえるかもしれません。

(金利の水準や時期によって変わるため、最新の動向は随時情報収集して確認しましょう)

銀行との「交渉に勝つ」ことを目的にすると、つい声が大きくなります。ですが、目先の0.数パーセントを守ろうとして、もっと大切な 「次もおカネを借りられる関係」 を壊していないか。

胸のあたりがカッと熱くなる感覚を抑えて「いちど持ち帰ります」と言うのは、けっこうしんどいかもしれません。それでも、材料を揃えて返すだけで、交渉の質は変わりえます。

上げ幅の「内訳」を問う返し方テンプレ

内訳がわかったら、次は具体的にどう返すか。前回の記事では「感情→対話」への言い換えを紹介しましたが、今回は 上げ幅の根拠を引き出すための質問テンプレ です。

銀行から上げ幅を提示されたら、まずこう伝えます。

「ありがとうございます。条件(適用開始日・新利率と上げ幅・根拠)を確認のうえ社内で整理し、〇日までに回答します」

そのうえで、内訳を聞き出す質問を1つ加えます。

「検討のため、今回の引上げが『基準金利(短プラ等)の改定分の転嫁』なのか、『当社条件(上乗せ)の見直し』も含むのかを教えてください。差し支えない範囲で見直し観点も伺えますか」

こう聞くことで、銀行側も 「この社長は仕組みをわかっている」 と感じやすくなるでしょう。内訳を問う質問ひとつで、柔軟な回答を引き出しやすくなるものです。

まとめ:チェックリスト

金利の交渉は、強気か弱気かではありません。まず診断。上げ幅を分解できたら、次も立ち回りやすくなります。

今回の要点を3つにまとめました。

  • 「即答しない」の次は、上げ幅の「内訳」を整理する
  • 上げ幅を「基準の変化」と「上乗せの変化」に分解して妥当性を診断する
  • 内訳を問う質問ひとつで、銀行との対話の質が変わる

最初の1歩

  • 自社の借入が「短プラ連動/TIBOR連動/固定」のどのタイプか確認する
  • 銀行から提示された「上げ幅」が、基準金利の改定幅とズレていないかチェックする
  • 次に銀行員と話すとき、「今回の引上げは指数の転嫁ですか?」と聞いてみる

自社の契約タイプや上げ幅の内訳を整理してみて、それでも判断に迷うようなら。 個別相談 という選択肢もあります。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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