借入で潰れるは勘違い、借入できなくて潰れるが真実

借入で潰れるは勘違い、借入できなくて潰れるが真実

多くの社長が「借金は怖い」「無借金こそ理想」と考えています。しかし、会社が潰れる本当の理由を知れば、その考えが間違いであることに気づくはずです。

目次

借金は本当に恐れるべきものか

「借金は怖いものだ」
「無借金経営こそ、目指すべき理想の姿だ」

社長であれば、いちどはこのように考えたことがあるのではないでしょうか。たしかに、借入はないに越したことはない、と感じるのが人情かもしれません。

しかし、世の中の真実として、「銀行からおカネを借りたことが原因で潰れた会社」というのは、ただの1社もありません。

そのいっぽうで、「必要なおカネを、銀行から借りられなかったことが原因で潰れた会社」は、数え切れないほどあります。

これは、多くの社長が「会社が潰れる本当の理由」を、根本的に誤解していることから生じる悲劇だと言ってよいでしょう。

今回は、この一見すると逆説的な「借入で潰れることはないが、借入できなくて潰れることはある」という真実について、その理由と、社長が本当に恐れるべきことは何かを解説していきます。

この記事のポイントは以下のとおりです。

  • 会社が潰れる本当の理由
  • 借入がもたらす会社の体力
  • 借入できない状態を避けるには

社長が本当に恐れるべきことは

このテーマを理解するためには、まず「会社はなぜ潰れるのか?」という、きわめてシンプルな問いに正しく答える必要があります。その答えが、借入の重要性を教えてくれます。

ポイント1:会社が潰れる本当の理由

多くの人が、「会社が潰れる=赤字だから」もしくは「会社が潰れる=借金するから」と誤解しています。しかし、これは間違いです。

決算書がどれだけ赤字でも、それだけで会社が潰れることはありません。また、どれだけ借金があっても、それだけで会社が潰れることはありません。

会社が潰れるのはただひとつの理由、「おカネが尽きて、支払いができなくなるから(資金ショート)」です。たとえ利益が出ていても(黒字でも)、借金が無くても、手元のおカネがなくなれば、仕入代金も、社員の給料も、家賃も払えなくなり、その時点で会社はおわりです。

いわゆる「黒字倒産」は、この「利益」と「おカネ」の動きの違いを知らないことで起こります。

では、この致命的な「資金ショート」を防ぐための有効な手段は何でしょうか。その1つが、銀行借入です。銀行借入は、利益が出ていても一時的におカネが不足する、といった事態を乗り切るための「命綱」になります。

つまり、会社が潰れる本当の理由である「資金ショート」を防ぐ直接的な特効薬となりうるのが、銀行借入なのです。だからこそ、「借入ができない」状態は、この特効薬が手に入らない状態であり、きわめて危険だと言えます。

ポイント2:借入がもたらす会社の体力

銀行から借入をすると、会社の貸借対照表では「負債」が増えます。これを嫌う社長は多いものです。しかし同時に、同額の「資産(現金預金)」も増えるという事実を見逃してはいけません。

だとすれば、借入で会社が潰れるなどということはなく、むしろ借入は会社の手元資金(預金残高)を潤沢にし、会社の「体力」を直接的に増強する行為なのです。そして、潤沢な預金残高は、会社にとって最強の「守りの力」となります。

たとえば、

  • 主要な取引先が倒産して、売掛金の回収が不能になった
  • コロナ禍のようなパンデミックで、売上が数か月にわたって激減した
  • 工場の重要な機械が突然故障し、急な修理費や更新費用が必要になった

このような不測の事態が発生したとき、手元に十分なおカネがあれば、会社はパニックに陥ることなく、冷静に対処し、事業を継続する時間を稼ぐことができます。

ですが、「借入ができない」会社がこのような事態に直面したらどうなるでしょうか?ひとたまりもなく、資金ショートに追い込まれてしまうこともあるでしょう。

つまり、借入そのものはリスクではなく、借入によって得られる潤沢な手元資金こそが、未来のあらゆるリスクに対する「保険」となるのです。

ポイント3:借入できない状態を避けるには

もし、会社を潰す本当のリスクが「借入できないこと」であるならば、社長が財務面で目指すべきことは明確です。それは、「いつでも必要なときに、銀行から借入しやすい状態を維持しておくこと」です。

「無借金」を目指すのではなく、「いつでも借りられる会社」を目指す。この意識改革が、会社の生存確率を高めることになります。

では、どうすれば「いつでも借りられる会社」になれるのか?

  1. 銀行と日ごろから付き合う
    おカネが必要ない、業績が良いときから、定期的に試算表や決算書を持って銀行に業況報告をしましょう。銀行との関係性は、一朝一夕には築けません
  2. 決算書をきれいにしておく
    銀行が安心して融資できるような、信頼性の高い決算書を作成すること。これは、納税してでも利益を出し、自己資本を厚くしておくこと、貸借対照表をスマートにしておく(ムダ使いしない)ことなどを含みます
  3. 借りられるときに借りておく
    銀行が「貸したい」と考える、業績が良いときにこそあえて借入をしておく、という考え方も重要です。借入と返済の実績(取引実績)を積んでおくことで、銀行からの信用はより強固になります。

まとめ

社長が抱きがちな「借入をすると会社が潰れる」という考えは、勘違いです。

会社が潰れる本当の理由は、赤字ではな「資金ショート」です。そして、その資金ショートを防ぐ有効な手段が「銀行借入」です。

したがって、社長が本当に恐れるべきは、「借入をすること」ではなく、「いざというときに、銀行から借入ができなくなってしまうこと」だと心得ましょう。

銀行借入は、会社の体力を強化し、不測の事態から会社を守るための重要な手段です。

「無借金経営」という耳障りが良い言葉に惑わされることなく、本当に目指すべき「強い財務体質」とは何かを考えて、日ごろから銀行との信頼関係を築いていくこと。それこそが、社長に求められる財務戦略だと、僕は考えています。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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