されど仕訳の銀行融資

されど仕訳の銀行融資

会社が銀行融資を受けるにあたって、仕訳は大切です。仕訳のいかんが、銀行融資の受けやすさに影響します。仕訳は税理士に任せる社長であっても、「されど仕訳」の認識が欠かせません。

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されど仕訳と心得る

会社が銀行融資を受けるにあたって、仕訳は大切です。仕訳のいかんが、銀行融資の受けやすさに影響します。もしかすると、「たかが仕訳」とおもわれるかもしれませんが、「されど仕訳」と心得るべきところです。

ちなみに仕訳とは、「借方 ×××/ 貸方 ×××」といった形式のものであり、見ただけウンザリするという社長もいれば、そもそも見たこともないという社長もいるでしょう。欲をいえば、仕訳を見て意味がわかるようになることですが、そこまではいかずとも、「されど仕訳(=仕訳は大切)」の認識が欠かせません。

仕訳が銀行融資において大切なのは、なんだかんだ決算書が融資判断に影響するからであり、決算書のもとになるのが仕訳だからです。その仕訳を税理士任せにしている会社もありますが、そこには盲点もあるので気をつけましょう。そのあたり、このあと詳しくお伝えしていきます。

なんだかんだ決算書

されど仕訳の認識が欠かせないのは、なんだかんだ決算書が融資判断に影響するからだと前述しました。銀行が融資の可否を判断する材料として、決算書の占める割合は7〜9割くらいのイメージです。つまり、決算書の内容が、融資の可否に大きな影響を与えていることになります。

もちろん、決算書以外にも判断材料はありますし、最近では「脱・決算書依存」の流れもあるため、決算書の占める割合は7〜9割よりも小さくなっていく過程にはあるものの、そうはいってもなお「なんだかんだ決算書」が現状であることは理解しておきましょう。

端的にいえば、決算書の良し悪しが融資の可否を分けます。もう少し具体的にいえば、利益が出ているほど融資を受けられる可能性は高まるわけです。ただし、利益が出てさえいれば融資を受けられるのかといえば、そうではありません。利益が出ていたとしても、社長への貸付金が増え続けていたり、棚卸資産の金額に不良在庫が混じっていたり、などという場合には融資を受けられなくなることがあります。

いずれにせよ、決算書しだいで銀行融資の可否が分かれることを忘れてはいけません。そのうえで、決算書のもとにになるのが仕訳です。

決算書のもとが仕訳

決算書とは、日々の経理処理の積み重ねによってできあがります。そして、経理処理にあたるものが仕訳です。会社の日々の取引は、仕訳によって記録されます。したがって、決算書の内容をよくしたいのであれば、仕訳から見直さなければなりません。

これは、「決算書ができあがってからでは遅い」ということをあらわしています。たとえば、前述した社長への貸付金は、決算書に記載されてから(決算日が過ぎてから)ではどうしようもありません。取引の時点・仕訳の時点で気づく必要があり、だからこそ、「されど仕訳」なのです。

とはいえ、どのような仕訳が銀行融資で問題になるのか?と、疑問におもわれるでしょう。そこで具体的にお伝えをしたいところですが、ひとくちに伝えられるほど少量ではありません。この点、1冊にまとめた本を、2025年1月中旬に出版させていただきます。

『税理士必携 銀行融資を引き出す仕訳90(日本法令)
(リンク先はAmazonの商品ページです)

と、宣伝めいた展開にはなってしまいましたが、大事な話であり、本書の内容がお役に立てるものと考えてお伝えをさせていただきました。

税金視点による盲点

決算書のもとになるものが仕訳であり、銀行融資を受けるにも仕訳が大切だといいました。でも、仕訳(経理処理)のことなら税理士に任せている、とおもわれるかもしれません。たしかに、税理士に仕訳を任せることはできますが、注意すべきことがあります。

それは、税金視点による盲点です。税理士は税金の専門家であるため、仕訳を見るにも税金計算の視点に偏っているケースがあります。銀行融資では、そこが盲点になるおそれがあるのです。

もちろん、税金計算の視点も大切なのですが、それだけではありません。銀行は「企業会計」の視点でも見ています。企業会計の視点とは言い換えると、「事業の実態をより正しくあらわす」ことです。このとき、「税金計算の視点」と「企業会計の視点」とは必ずしも一致するわけではありません。

前述した、棚卸資産の金額に不良在庫が混じっている例で考えてみましょう。赤字の会社で、もう販売できない棚卸資産が100万円あって、それが決算書の棚卸資産の金額に含まれたまま。企業会計の視点で見れば、100万円を損失に計上すべきところですが、計上したところで税金は変わらないので(赤字なので税金はもともとゼロ)、損失の計上を見送るケースはあるものです。

このように、税金計算に間違いはなくても、事業の実態を正しくあらわしていないことはありえます。それでもさきほどの例であれば、「そのほうが決算書の赤字も少なくてすむため、銀行に対しても好影響だろう」との考えもあるでしょう。

ですが、それは間違いです。銀行からしてみれば、企業会計の視点が抜け落ちた決算書であり、事業の実態を正しくあらわしていない会社として、信用を失うことになります。あきらかに悪影響です。

以上をふまえて、社長は決算書を税理士に「任せきり」にするのはやめましょう。さらにいえば、仕訳を任せきりにはしないことです。繰り返しになりますが、税理士は税金の専門家であり、すべての税理士が企業会計の視点を持っているわけではありません。社長自身の理解が大切です。

まとめ

会社が銀行融資を受けるにあたって、仕訳は大切です。仕訳のいかんが、銀行融資の受けやすさに影響します。

仕訳が銀行融資において大切なのは、なんだかんだ決算書が融資判断に影響するからであり、決算書のもとになるのが仕訳だからです。その仕訳を税理士任せにしている会社もありますが、税金視点による盲点もあるので気をつけましょう。社長には、「されど仕訳」の認識が欠かせません。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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