社長は借入が多いことを気にするよりも預金が少ないことを気にすべし

社長は借入が多いことを気にするよりも預金が少ないことを気にすべし

会社の借入が多いことを気にする社長がいます。だから借入をしない、という社長もいます。その気持ちはわかるのですが、おすすめできる考え方ではありません。その理由とは?

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借入ばかり気にする会社は危ない

会社の借入が多いことを気にする社長がいます。だから借入をしない、という社長もいます。その気持ちはわかるのですが、おすすめできる考え方ではありません。

なぜなら、社長は「借入が多いことよりも、預金が少ないことを気にしたほうがいい」からです。実際、借入を気にする社長の会社は、預金が少ないことが珍しくありません。

では、借入よりも預金を気にしたほうがよい理由とは何なのか?次の3つが挙げられます。

  • 借入があってもなくても預金がなければマズい
  • 預金がないと利益率が下がってしまうのが問題
  • 借入よりも預金が多ければ実質は無借金である

これら3つの理由について、このあと順番に説明をしていきます。

ちなみに、預金が少ない会社の目安は、預金残高が平均月商(年間売上高÷12か月)の2か月分未満であり、1か月分未満は危険水域です。これは、銀行の見方でもあるので覚えておきましょう。

借入よりも預金を気にしたほうがよい理由

社長は借入よりも預金を気にしたほうがよい、といいました。預金が少ない会社はとくに、です。その3つの理由を説明していきます。

借入があってもなくても預金がなければマズい

借入よりも預金を気にしたほうがよい理由の1つめは、「借入があってもなくても預金がなければマズい」からです。

冒頭、預金が少ない会社の目安を挙げました。そして、預金残高が平均月商の1か月分未満は危険水域だともいいました。ここでいう危険とは、倒産の危険です。

いうまでもなく、預金がなくなれば会社はつぶれてしまいます。これは、「借入があってもなくても」です。言い換えると、借入があってもなくても、預金があれば会社はつぶれません。

ですから、借入よりもまずは預金を気にしましょう、預金を増やしましょう、ということになります。具体策として考えられるのが、利益を出しておカネを増やすことです。

利益を出せば、手元に残るおカネも増えるので、預金残高は増えます。とはいえ、利益を出すのもカンタンではありません。出せる利益にも限りがあるというものでしょう。ではどうするか?

銀行借入です。銀行から融資を受けることでも、預金残高を増やすことができます。借入よりも預金を気にしたほうがいいとは、まさにこれです。でも、借入が増えたら会社がつぶれやすくなるのでは?という疑問については、3つめの理由のなかで後述します。

それはさておき、預金が少ないと銀行借入さえできません。銀行が危険だと感じるからです。預金が少ない→倒産の可能性が高い(返済してもらえない)→だったら貸せない、と銀行は考えます。

この点、おカネに色はありません。その源泉が利益であろうと借入であろうと、預金残高があるほど会社はつぶれにくく、銀行もまたそのような見方をしています。

借入があってもなくても預金がなければマズいのだし、だとすれば、まずは借入よりも預金を気にしたほうがよいのです。

預金がないと利益率が下がってしまうのが問題

借入よりも預金を気にしたほうがよい理由の2つめは、「預金がないと利益率が下がってしまうのが問題」だからです。

1つめの理由についてお話をするなかで、利益を出しておカネを増やしましょうといいました。ですが、預金がないと(あるいは少ないと)、利益率が下がってしまうのが問題です。

おカネがないと売り急ぐことになります。早く売上を増やそうと、過剰な値引きをしてまで販売をするのは「あるある」でしょう。また、おカネがあれば、即金払いを交渉材料にして仕入値を下げることもできますが、おカネがないと相対的に仕入値が上がります。結果、利益率が下がるのです。

また、事業投資のチャンスも、おカネがなければ逃してしまいます。たとえば、新商品開発や新規出店、人材採用・育成、IT化などのチャンスです。いまは変化が速い時代でもありますから、投資が遅れることで将来の利益率を下げることにもなります。

さらには、預金がなくて社長が資金繰りに追われると、社長は経営に集中できず、事業改善が進まなかったり、事業成長が止まったり…やはり、利益率を下げることになるでしょう。

そこで具体策として考えられるのが、借りてでもおカネを持つことです。

利益を出しておカネを増やすのが本筋ですが、その利益を出すにも利益率がモノをいうのですから、利益率を上げるために必要なおカネはまず、銀行借入でまかなうのがセオリーだといえます。

預金がないと利益率が下がってしまうのが問題であり、だとすれば、借入を気にするよりもまず、預金がないことを気にしましょう、ということです。

借入よりも預金が多ければ実質は無借金である

借入よりも預金を気にしたほうがよい理由の3つめは、「借入よりも預金が多ければ実質は無借金である」からです。

2つめの理由についてお話をするなかで、借りてでもおカネを持つことだといいました。でも、借入が増えたら会社がつぶれやすくなるのではないか、とおもわれるかもしれません。

ですが、それは違います。借入で会社がつぶれることはありません。なぜなら、借入をした分だけ、同じだけの預金も増えるからです。1億円借入したら、1億円の借入だけ増えた…などということはなく、1億円の預金も増えます。

ところが、ちまたでは「借入が増えると会社がつぶれる」かのように誤解されています。「倒産した会社には、〇〇億円の借入があった」などと報じられるのは典型例でしょう。

その会社が倒産したのは、借入が原因ではありません。繰り返しですが、借入をすれば同額の預金も増えるのであり、だとすれば、倒産した原因は他にあるからです。端的かつ抽象的にいうのであれば、経営に問題があったのです。

よって、社長は「経営に問題がある」のに「借入のせい」にして、問題をすり替えてはいけません。そのうえで、あらためて借入の効果について考えみましょう。借入と同額のおカネが増える、という効果です。

借入をした瞬間には「借入=預金」であり、いつでも完済できるのですから、借入はないのと同じだといえます。したがって、「借入≦預金」である限りは実質的に無借金なのです。

いっぽうで、借入ゼロの完全無借金を目指す社長がいます。ですが、借入ゼロでも預金が少ないのは問題であることは、繰り返しお話をしてきました。

そこで具体策としておすすめしたいのが、完全無借金は最終ゴールだと位置づける考え方です。完全無借金を目指すのもよいですが、それは最終ゴールであり、途中経過としてはまず実質無借金を目指します。

つまり、十分な預金を持ちながら、「借入≦預金」の状態を目指します。借入よりも預金が多ければ実質は無借金であることを理解し、実践しましょう。ちなみに、十分な預金の目安は、平均月商の6か月分の預金残高です。

まとめ

会社の借入が多いことを気にする社長がいます。だから借入をしない、という社長もいます。ですが、社長は「借入が多いことよりも、預金が少ないことを気にしたほうがいい」と考えてみましょう。その理由を3つ、お話ししました。

  • 借入があってもなくても預金がなければマズい
  • 預金がないと利益率が下がってしまうのが問題
  • 借入よりも預金が多ければ実質は無借金である

預金が少ない目安(平均月商の1か月分未満)、十分な預金の目安(平均月商の6か月分超)とあわせて押さえておきましょう。会社がつぶれにくくなりますし、事業の維持・成長がしやすくもなるはずです。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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