銀行再編が進む今、融資が受けにくくなるリスクも…従来の基準に加え、銀行の健全性や事業性評価への本気度など、社長が知るべき「新しい銀行選びの基準」3選を解説します
進む銀行再編
最近、地方銀行の統合や提携のニュースを目にすることが増えていると感じませんか? 長引く低金利や人口減少などを背景に、銀行業界の「再編」が加速しています。
「ウチには関係ない」「取引銀行は変わらないから大丈夫」と思っている社長もいるかもしれません。しかし、この再編の波は、中小企業の銀行融資に大きな影響を与える可能性があります。
これまでの「近くて便利だから」「昔からの付き合いだから」といった銀行選びの基準だけでは、将来、融資が受けにくくなったり、不利な条件になったりするリスクもあるからです。
今回は、銀行再編時代に社長が知るべき銀行選びの「新しい基準」を3つ紹介します。自社にとって本当に頼りになる銀行を見極め、変化の時代を乗り切るためのヒントになるものです。
なぜ銀行再編が中小企業融資に影響するのか?
まず、なぜ銀行再編が自社の融資に関係するのか、その背景と影響を見ていきましょう。
再編が進む背景
低金利による収益悪化、人口減少による地域経済の縮小、金融庁の方針転換(金融検査マニュアル廃止など)があり、銀行も生き残りをかけた変革を迫られています。地域金融機関を取り巻く経営環境は厳しく、再編はやむを得ない流れとも言えます。
「取り込まれる側」のリスクとは
銀行の統合・合併によって「取り込まれる側」の銀行と取引している場合、注意が必要です。融資基準が「取り込む側」の、より厳しい基準に統一される可能性があります。たとえば、これまで柔軟に対応してくれていた融資が、厳格な審査基準によって難しくなるケースです。また、支店の統廃合が進めば、これまで近くにあった支店がなくなり、物理的な距離が遠くなるなど利便性が低下することも考えられます。
競争緩和による影響
地域によっては、銀行の数が減ることで銀行間の競争が緩和されます。これまでは融資先確保のために低金利競争があったかもしれませんが、競争が減れば、銀行は金利を引き上げたり、融資条件の交渉が難しくなったりする可能性があります。
だからこそ「選ぶ目」が重要
このように、どの銀行と付き合うかが、これまで以上に会社の資金繰りや将来を左右する時代になったと言えます。社長自身が、銀行を選ぶ「目」を持つことが不可欠です。
2.これからの銀行選び「新」基準3選
従来の基準(近さ、担当者との相性、表面的な金利)も大切ですが、それに加えて、これからの時代に合った以下の3つの「新」基準で銀行を見極めることが重要です。
新基準1:銀行自身の「財務健全性」
なぜ重要か?
銀行自身の経営が苦しいと、リスクを取った融資(とくにプロパー融資)には消極的になりがちです。自己資本比率が低い銀行は、「貸し渋り・貸し剥がし」のリスクも高まります。会社の業績が悪くないのに融資が受けにくい場合、銀行側の問題も考えられるのです。
チェックポイント
- 自己資本比率
銀行の体力・健全性の基本指標。高いほど安心できます。 - 当期純利益
利益が大きい銀行ほど体力があり、融資にも前向きな姿勢を期待できます 11。同じ信金・地銀でも利益額には大きな差があります。 - 不良債権比率
低いほど、抱えるリスクが少なく健全と言えます。
情報源
各銀行のウェブサイトで公開されている「ディスクロージャー誌」や、金融庁ウェブサイトの『都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧』などで確認できます。大切なのは、1行だけでなく複数の銀行を比較することです。
新基準2:「事業性評価・本業支援」への本気度
なぜ重要か?
金融庁は銀行に対し、決算書だけでなく事業内容や将来性を評価する「事業性評価」や、融資以外の「本業支援(ビジネスマッチング、経営相談など)」を強く求めています。これに本気で取り組む銀行こそ、単なる資金の貸し手ではなく、会社の成長を共に目指す真のパートナーとなりえます。
チェックポイント
- 「金融仲介機能のベンチマーク」の開示内容
事業性評価に基づく融資実績、本業支援先数などの指標を確認します。積極的に情報を開示し、具体的な実績を上げている銀行は評価できます。 - 担当者のヒアリング内容
決算書の話だけでなく、社長の考え、事業の強み・弱み、市場環境、将来計画など、踏み込んだ質問をしてくるか。ロカベン(ローカルベンチマーク)のようなツール活用に積極的かなど。 - 具体的な提案
融資以外の情報提供(補助金、セミナー案内など)や、ビジネスマッチング、専門家紹介などの提案実績があるか。
見極め方
日ごろの銀行担当者や支店長とのコミュニケーションの中で、どれだけ自社の「事業そのもの」に関心を持ち、理解しようと努めてくれているかを感じ取ることが重要です。伴走支援を期待できるかどうかの見極めにもなります。
新基準3:プロパー融資への積極性と支店の裁量
なぜ重要か?
信用保証協会の保証付き融資ばかりに頼らず、銀行自身のリスクで貸し出す「プロパー融資」に積極的かは、その銀行の融資能力(目利き力)と会社への本当の評価を示す重要な指標です。保証付き融資は銀行のリスクが小さい分、「誰でも貸せる」側面があります。プロパー融資の実績は信用の証です。
チェックポイント
- プロパー融資の実績
自社(あるいは同規模の他社)に対して、プロパー融資の実績があるか。保証付き融資からプロパー融資への切り替えに前向きか。 - 審査スピードと柔軟性
杓子定規なマニュアル対応だけでなく、会社の状況に合わせて柔軟な判断ができるか。融資回答までのスピードは速いか。 - 支店の裁量権
あるていどの融資決裁権限が支店にあるか。支店長や融資課長がどれだけ親身になって案件を通そうと努力してくれるか。本部決裁になると審査が厳しくなる傾向があります。
見極め方
融資相談時の担当者の反応や、提示される条件(保証の有無など)から、プロパー融資への姿勢を探ります。複数の銀行に同じ相談をしてみることで、銀行ごとのスタンスの違いが見えてくるものです。
メインバンクは「見直し」も視野に
そのメインバンク、本当に大丈夫?
これまでの付き合いの長さや融資残高(表面シェア)だけでメインバンクを決めていませんか? 新しい基準に照らして、本当に自社を支えてくれる銀行か、あらためて評価してみましょう。担保・保証付き融資ばかりで、銀行がリスクを取っていない(実質的な融資シェアが低い)銀行は、本当のメインバンクとは言えないかもしれません。
関係性の深化
もし現在のメインバンクが新基準でも評価できるなら、さらに情報開示を進め(決算報告、試算表の定期提出など)、対話を深め、より強固なパートナーシップを築きましょう。
見直しの検討
もしメインバンクに不安があるなら、サブバンクの中から新たなメイン候補を探したり、新規取引銀行を開拓したりすることも選択肢です。ただし、他行肩代わりなどで急に関係を切ると、他行からの見方も悪くなる可能性があります。見直しは慎重に行い、既存銀行との関係悪化を招かない配慮も必要です。
まとめ
銀行再編は、けして他人事ではありません。中小企業の融資環境に変化をもたらす可能性があります。
これからの銀行選びは、従来の基準に加え、「銀行自身の財務健全性」「事業性評価・本業支援への本気度」「プロパー融資への積極性と支店の裁量」という新しい基準を持つことが重要です。
これらの基準で銀行を見極め、自社にとって最適なメインバンクを選び(あるいは見直し)、主体的に関係を構築していくこと。それが、変化の時代を乗り切り、会社の持続的な成長を実現するための鍵となります。
まずは、取引銀行のディスクロージャー誌や金融仲介機能のベンチマークを確認するところから始めてみませんか?

