借りかたが悪いと、会社の資金繰りは悪くなります。では、借りかたが悪いとはどういうことなのか?借りかたの良し悪しをはかる指標として、返済スピードについてお話をします。
同じ金額を借りるでも
会社の銀行融資について。同じ金額を借りるでも、借りかたが悪いと資金繰りは悪くなるので注意が必要です。
同じ6,000万円を借りているA社とB社があったとして。毎月の返済額は、A社が100万円でB社は250万円ということはありえます。毎月の返済額が多いB社のほうが、資金繰りは悪いといっていいでしょう。同じ金額を借りるでも、資金繰りは変わりうるのです。
では、A社の借入は返済期間が5年で、B社の借入は返済期間が2年など、返済期間の違いが原因かといえばそうとは限りません。返済期間は両社ともに5年であったとしても、前述したような資金繰りの差が生じることはありえます。つまり、返済期間だけを見ていても、社長は資金繰りの悪化には気づけないということです。
きちんと借入をしているはずなのに、なぜか資金繰りが悪い…そう感じるのであれば、見るべきものは返済期間ではありません。返済スピードを確認するようにしましょう。返済スピードを確認することが、借りかたの良し悪しの目安にもなります。
では、返済スピードとは何なのか?このあと解説をしていきます。
返済スピードで判断する
借りかたの良し悪しの目安として、返済スピードを確認しましょうといいました。返済スピードを算式であらわすと、「借入金残高÷毎月の返済額」です。
さきほどのA社とB社の事例でいえば、A社は「6,000万円÷100万円=60か月(5年)」であり、B社は「6,000万円÷250万円=24か月(2年)」です。つまり、A社は5年で完済できるというのが返済スピードであり、B社の返済スピードはA社よりもはるかに速い2年となります。
ところが、A社の借入もB社の借入も、それぞれの融資条件を確認するとどちらも5年ということはあるのです。にもかかわらず、なぜ、これほどの差が生じてしまうのか。返済スピードがはるかに速いB社は、A社に比べると資金繰りが忙しくなるのはあきらかです。
ポイントは、借入の口数にあります。同じ借入額でも口数が増えると、返済スピードは速くなるのです。
わかりやすい事例で確認します。返済期間5年、残高6,000万円の借入が一口であれば、返済スピードは5年です。
いっぽうで、返済期間5年、残高3,000万円(当初借入6,000万円)の借入が一口ある会社で、あらたに、返済期間5年で3,000万円を借入する場合はどうでしょう?既存借入の毎月返済額は100万円、新規借入の毎月返済額は50万円ですから、毎月返済額はあわせて150万円。返済スピードは、「6,000万円÷150万円=40か月(3.3年)」です。
借入残高はどちらも6,000万円なのに、かたや返済スピードは5年、かたや3.3年となりました。これは、借りかたの違いによるものです。返済スピードが3.3年のケースは、新規借入で口数を増やしたところに問題があります。そうではなく、既存借入をあわせて借り換えるかたち(既存借入は完済する)で、新規借入6,000万円・返済期間5年とすれば、返済スピードは5年にできたのです。
したがって、借入の口数を増やすと返済スピードが速くなり、資金繰りが悪くなることを理解しておきましょう。その確認のために、返済スピードを計算してみること。そのうえで、返済スピードと各借入の返済期間とを比較してみるとよいでしょう。
返済期間に対して、返済スピードが極端に短いようであれば問題です。銀行に借り換えを相談するなどして、口数を減らすといった方法を検討することになります。
債務償還年数は返済力の話
返済スピードという指標について説明をしました。似たような指標として、債務償還年数があります。債務償還年数を算式であらわすと、「借入金残高÷(税引後利益+減価償却費)」です。端的にいえば、いまの利益水準だと何年で完済できるかをあらわしています。
したがって、債務償還年数は返済スピードと同じく「単位は年」なのですが、債務償還年数は返済力の話であり、返済スピードは資金繰りの話という違いがあります。債務償還年数は有名な指標であり、ご存知の社長も多いでしょうが、債務償還年数で資金繰りはわからない、借りかたの良し悪しもわからないことを覚えておきましょう。
ちなみに、返済スピードというのは僕が勝手に命名したものなので、一般的な呼称ではありません。返済スピードの考え方(借入金残高÷毎月の返済額)も、債務償還年数に比べるとご存知ない社長が多いものとおもいます。
ですが、返済スピードは資金繰りの良し悪し、借りかたの良し悪しをはかる重要な指標となります。債務償還年数とあわせて確認するのがおすすめです。
なお、返済スピードを下げる方法として、前述した口数を減らすほかにも、短期継続融資の活用が挙げられます。短期継続融資とは、短期の手形貸付や当座貸越による借入であり、毎月の返済額をゼロにする(借りっぱなしにする)ことができる借りかたです。
短期継続融資について、くわしくは別記事で解説しました。あわせて活用を検討してみましょう。
「短期継続融資はやめておけ」は本当か?
まとめ
借りかたが悪いと、会社の資金繰りは悪くなります。では、借りかたが悪いとはどういうことなのか?借りかたの良し悪しをはかる指標として、返済スピードについてお話をしました。
似たような指標である債務償還年数との違いを理解したうえで、返済スピードが速くなりすぎないように、借りかたに気をつけましょう。方法として、口数を増やさないことや、短期継続融資の活用が挙げられます。