創業時こそ銀行融資の受けどきです。なのに、借りない社長はいます。そこで、創業時こそが銀行融資の受けどきである理由について、僕の実体験も添えてお伝えしていきます。
融資の受けどきなのになぜ借りない?
事業をはじめる、つまり創業するならば、その創業時こそが銀行融資の受けどきです。と聞いて、どのようにおもわれるでしょうか。僕の経験則でいえば、「できるだけ借入はしないで、自己資金でがんばります」という人が一定数います。
が、「創業時こそが銀行融資の受けどきだ」というのが僕の考えであり、本記事の結論です。
ちなみに、創業後はどうかというと黒字のときが典型的な借りどきであり、赤字のときなどは借りるのが困難となります。そのあたりもふまえて、創業時は借りどきなのです。
とはいえ、「借金なんてしたくない」とおもわれるかもしれませんし、「事業でもうけるから大丈夫だ」とおもわれるかもしれません。そこで、創業時こそが借りどきである理由をお伝えします。具体的には、次のとおりです。
- 創業計画どおりにはならない
- 創業後しばらくは借りれない
- 実績があれば次も借りやすい
これらの理由にさらなる説得力をもたせる意味で、僕の実体験も添えて、このあとお話をしていきます。自己資金でがんばろうと考えている方ほど、知っていただきたい内容です。
創業時こそ銀行融資の受けどきな理由
創業時こそ銀行融資の受けどきな理由を3つ、順番に説明します。
創業計画どおりにはならない
創業から1年で〇〇%が廃業する、といった統計はいろいろあります。〇〇%の部分はマチマチなのですが、総じていえるのは「創業時は廃業リスクが高い(軌道に乗った会社に比べて)」ということです。
もちろん、「廃業なんてしない」との思いで創業をするわけですが、それでも廃業が多いのはなぜなのか。端的にいえば、現実は創業計画のとおりにいかないことが多いからです。
ていどの差こそあれ、創業時には計画を立てるでしょう。そのときに廃業(うまくいかないこと)を予定しながら創業する人はいません。みんな、うまくいくと計画して創業します。
ところが、多くの計画は「甘い」ということです。でも、しかたありません。夢や思いがあっての創業である以上、計画が「大きくなる(=甘くなる)」のは必然でもあります。結果、「こんなはずではなかった…」という計画が多くなるのです。
実際、僕が拝見する創業計画の7割以上は「計画が大きすぎる」と感じています。短いあいだで売上が増える、短いあいだで利益が出るようになる。つまり、楽観的に過ぎるのです。
そのうえで、融資を受けずに創業するとどうなるか。当然、資金繰りが厳しくなります。売上・利益が計画どおりにいかずとも、支出は計画どおりであったりするので(社員を急に解雇したりはできない)、おカネはどんどんなくなっていく…
ところが、創業時に銀行融資を受けていたとしたらどうでしょう?
借りたおカネの分だけ、耐え忍ぶことができます。あともう少し耐えることができたら、事業も軌道に乗ったのに。でも、あともう少し耐えるだけのおカネがなくて廃業…というのでは、悔やんでも悔やみきれないというものでしょう。
計画どおりにうまくいって、借りたおカネが余ったらそのときには返してしまえばいいのですから、「創業計画どおりにはならない」ことも想定して、創業時こそが銀行融資の受けどきと考えましょう。
創業後しばらくは借りれない
いましがた、創業時こそが銀行融資の受けどきだといいました。でも、実際におカネが足りなくなってから借りればいいのではないかとおもわれるかもしれません。ですが、それはムリです。
創業後しばらくは借りれません。創業しているのですから、融資を受けたいとなれば銀行は「創業後の実績が知りたい」と考えます。そこで、おカネが足りなくなるほどうまくいっていないのであれば、危険なので融資はできないと判断するのは当然でしょう。
よしんば、そこまでおカネが足りなくなってはいないにしても、創業まもない時期であれば、「もうちょっとようすを見させてください」とあしらわれてしまうことも少なくありません。前述したとおり、創業時は廃業リスクが高いことを銀行は知っているからです。
ゆえに、創業後しばらくは借りれません。いっぽうで、創業時(事業をはじめる前)であれば、まだ実績はありませんから、銀行は創業計画で判断することになります。誤解を恐れずにいえば、創業後の実際がどうなろうと、計画が妥当でありさえすれば借りれてしまうということです。
そういう意味で、創業時こそが銀行融資の受けどきなのです。とくに日本政策金融公庫(以下、日本公庫)からの融資が借りやすいことを覚えておきましょう。日本公庫は公的金融機関であり、民間金融機関であれば融資がしづらい場面にも柔軟であるのが特徴です。
したがって、民間金融機関がためらいがちな創業時の融資でも、日本公庫は積極的に融資をしています。まずは、日本公庫から融資を受けることを第一候補で考えましょう。
創業時のタイミングを逃すと、次に融資を受けられるのは早くても、事業が軌道に乗り始めたとき(利益がトントンくらいまできているとき)です。本当におカネが必要なタイミング、本当におカネを借りたいタイミングはその手前であるにもかかわらずです。
僕はこれまで、「あのとき(創業時)、借りておけばよかった」と後悔される社長の姿をいくども見てきました。創業時は「できるだけ借入をしたくない」という社長でも、廃業を前にすれば借入したいと考えるものです。
だったら、創業時に借りておきませんかということであり、やっぱり、創業時こそが銀行融資の受けどきだといえるでしょう。
実績があれば次も借りやすい
創業時こそが銀行融資の受けどきである理由について、ここまで2つお伝えしました。1つめは、創業計画どおりにはならない。2つめは、創業後しばらくは借りれない。そして、3つめにお伝えするのが、「実績があれば次も借りやすい」という理由です。
なお、ここでいう実績とは、「借りた実績・返済した実績」を指します。銀行からの借入があるのは借りた実績であり、借りることができるほど信用がある証です。また、その借入を滞りなく返済しているのであれば、返済できるだけのチカラ(利益)がある証だと銀行は見ています。
よって、実績があれば次の融資も受けやすいのです。だとすれば、早く実績をつくるためにも、創業時に融資を受けたほうがよいとわかるでしょう。
さらにおすすめは、創業時に日本公庫で借りたおカネを最寄りの信用金庫にあずけて、その信用金庫からも融資を引き出すことです。
そもそも、日本公庫には預金ができないので、日本公庫から借りたおカネはどこか別の銀行にあずける必要があります。そこで、最寄りの信用金庫にあずけるわけですが、これにより信用金庫は日本公庫から借入した実績があると知ることになります。
この実績が、信用金庫からの融資を受けやすくする材料になるのと同時に、あずけている預金は信用金庫にとっての安心材料にもなるため、信用金庫は融資を検討しやすくなるのです。
ちなみに、最寄りの金融機関から信用金庫を選ぶのは(都市銀行や地方銀行ではなく)、信用金庫は小さな会社に適した金融機関であり、創業直後の会社は小さな会社がほとんどだからです。
そのように、「まず日本公庫から借入をして、次に信用金庫から借入をする」という流れは、多くの会社で再現できていますし、汎用性のある方法だということが、僕の経験からもわかっています。
そのうえで、当初の借入金額の3分の1くらい返済が進むと、返済した分くらいの融資(折り返し融資などと呼ばれます)が受けやすくなることも覚えておきましょう。つまり、早く返済するほど次の融資も早く受けられるということです。
早く返済するためにも、創業時こそが銀行融資の受けどきだといえます。
まとめ
事業をはじめる、つまり創業するならば、その創業時こそが銀行融資の受けどきです。おもな理由として3つをお伝えしました。
- 創業計画どおりにはならない
- 創業後しばらくは借りれない
- 実績があれば次も借りやすい
ややもすると、「できるだけ借入はしないで、自己資金でがんばります」という社長はいるものですが、廃業の可能性を高める考え方だといえます。あとになって借りたおカネが余ったら、そのときには返してしまえばいいのですから、創業時こそ銀行融資の受けどきとして、融資を受けておくことをおすすめします。