会社が融資を受けるにあたって、銀行から試算表の提示を求められることがあります。ゆえに、銀行融資に強い試算表の特徴を押さえておきましょう。融資の受けやすさに影響するところです。
決算書に比べるとおざなりに
会社が融資を受けるにあたって、銀行から試算表の提示を求められることがあります。このとき、「銀行融資に強い試算表」という考え方があるのはご存知でしょうか?
つまり、同じ試算表であっても、融資を受けやすくする試算表もあれば、融資を受けにくくする試算表もあるのです。このうち融資を受けやすくする試算表を、「銀行融資に強い試算表」と定義します。では、銀行融資に強い試算表とは?特徴を挙げるとぜんぶで3つ、次のとおりです。
- ずっと黒字
- 精度が高い
- 預金が多い
こららを見て、どういうことかわからないようであれば、このあとの解説を確認しておきましょう。試算表は提示さえできればよいというものではありません。多くの会社では、試算表は決算書に比べておざなりにされている傾向があるだけに注意が必要です。
銀行融資に強い試算表の特徴
決算日から数か月以上が経過しているタイミングで融資の相談をすると、銀行は試算表の提示を求めます。決算日以降の業績を確認するためです。融資審査といえば決算書をイメージしますが、銀行は試算表も参考にします。
ゆえに、銀行融資に強い試算表の特徴を押さえておきましょう。たとえ業績が同じであったとしても、その特徴を知っているかいないかで融資の受けやすさが変わりうるのがポイントです。
ずっと黒字
銀行融資に強い試算表の特徴、1つめは「ずっと黒字」です。
そもそも試算表は、毎月の月次決算で作成するのがベストです。実際には、毎月まではやっていない、試算表はたまにしかつくっていないという会社もあります。ですが、銀行対応を考えるのであれば、試算表は毎月作成して、いつでも提示できるようにしておきましょう。
そのうえで、「ずっと黒字」が銀行融資に強い試算表の特徴です。ここでいう「ずっと黒字」とは、毎月黒字が続いていることを指します。たとえば、「1か月め・3か月めは黒字で2か月め赤字」よりも、「1か月めから3か月めまでずっと黒字」のほうがよいということです。決算書が黒字だと融資が受けやすいのと同じで、試算表も黒字のほうが融資は受けやすくなります。
この点、まずは「費用をならす」ことを考えましょう。たとえば、年払いの保険料や会費など大きな支出を、支出した月に全額費用計上していると、その月が赤字になる可能性が高まります。ところが、12か月であん分して費用計上すれば、支出した月の赤字を避けられるかもしれません。
このように「費用をならす」ことをしていない試算表が散見されるので気をつけましょう。事実(年払いの支出がある)は同じでも、経理処理しだいでは試算表の利益が変わりうるということです。経理処理しだいで、融資の受けやすさが変わりうるということです。
なお、費用をならしても赤字という月もあるでしょう。だとすれば、赤字になる前に融資の相談をすることです。言い換えると、試算表の黒字が続いているうちに融資の相談をすることです。それには、向こう数か月の利益予測が欠かせません。赤字になってからでは遅いので、あらかじめ利益を予測し、赤字になる前に動きましょう。早く動くことで融資のチャンスは広がります。
精度が高い
銀行融資に強い試算表の特徴、2つめは「精度が高い」です。
試算表は文字どおり試算と考え、決算書に比べると精度が低い試算表は少なくありません。精度が低い試算表とは、端的に言えば不正確なのであり、銀行融資を受けにくくする原因になります。銀行にしてみると「アテにならない試算表」であり、審査材料にできないからです。
では、精度が低い試算表とはどのようなものなのか?たとえば、在庫量の変動が大きい商売をしているのに棚卸の経理処理を毎月していないとか、減価償却費を毎月にあん分して経理処理していないとか。いずれにせよ、精度が低い試算表となると、事業の実態を正しくあらわしていないことになります。
すると社長自身が、試算表をもとにした経営判断はできなくなるのも問題です(あるいは、経営判断を間違える)。銀行はそこに不安も感じるため、やはり融資を受けにくくします。
いっぽうで、精度が高い試算表はどうでしょう?いうまでもなく、銀行は融資先の事業をより性格に把握できるようになります。社長は試算表を経営判断に活かせるため、ますます業績がよくなるのだとすれば、融資がより受けやすくなる効果もあるでしょう。精度が高い試算表は融資に強いのです。
前述した棚卸や減価償却費のほかにも、精度が高くなる経理処理はいろいろあります。ここではすべてを紹介しきれません。僕が執筆をした書籍で詳しくまとめていますので、ご興味あれば参考にどうぞ。
預金が多い
銀行融資に強い試算表の特徴、3つめは「預金が多い」です。
ずっと黒字だと融資は受けやすい、という話は前述しました。これは、利益が多いほど融資が受けやすいということでもあります。同様に、預金が多いほど融資が受けやすいといえます。預金があるほど、銀行は「貸倒れ(貸したおカネを返してもらえなくなる)」の心配が減るからです。
銀行に試算表を提示するというと、損益計算書の利益は確認している社長は多くても、貸借対照表の預金も確認している社長は多くありません。その証拠に、預金が少ない試算表(預金残高が平均月商の1か月分未満など)を平然と銀行に提示している会社があります。ふだんから、社長が試算表で預金を確認していればありえないことです。
では、どうするか?預金が多いうちに、融資の相談をすることです。試算表を毎月作成していれば、預金残高の動きも見えてきます(完全に見えるようにするためには、資金繰り表の作成が必要ですが)。そのうえで、預金残高が減ってきている・減りそうだというのであれば、その前のタイミングで融資の相談をするのです。
試算表に記載されている預金が多いときと少ないときとでは、融資の受けやすさが変わります。同じ業績・同じ試算表であっても、融資の受けやすさは試算表を提示するタイミングしだいだともいえます。だとすれば、銀行から試算表の提示を求められるのを待つだけではなく、会社のほうから自主的に提示して融資の相談をすること大切だとわかるでしょう。
試算表を見るときには、利益ばかりではなく預金の確認も忘れずに。
まとめ
会社が融資を受けるにあたって、銀行から試算表の提示を求められることがあります。ゆえに、銀行融資に強い試算表の特徴を押さえておきましょう。融資の受けやすさに影響するところです。
- ずっと黒字
- 精度が高い
- 預金が多い
たとえ業績が同じであったとしても、これらの特徴を知っているかいないかで融資の受けやすさが変わりうるのがポイントです。