銀行融資、借りれるだけ借りるの真意

銀行融資、借りれるだけ借りるの真意

借りれるだけ借りるとは、ただ借りればよいというハナシではありません。もう少し解像度を上げて、借りれるだけ借りるの真意についてお伝えをしてみます。

目次

否定の理由はさまざまある

会社の銀行融資について、僕は「借りれるだけ借りましょう」と言い続けています。いっぽうで、借りれるだけ借りることに対しては、否定的な意見もあります。

借りれるだけ借りるなど乱暴だ。借りても返さなければいけない。借りたおカネはなくなってしまうものだ。借りれるだけ借りるよりも、借りたいときに借りれる会社になったほうがいい。などなど、否定の理由はさまざまです。

知っています。そういった否定の理由も理解したうえで、それでもなお僕は「借りれるだけ借りましょう」と言っているのです。そこで、本記事では「借りれるだけ借りる」について、もう少し解像度を上げてお話をしてみます。いうなれば、借りれるだけ借りるの真意であり、内容としては次のとおりです。

  • プロパー融資を目一杯
  • 日本公庫からも借りる
  • 据え置く前提で借りる

これらについて、このあと解説をしていきます。

借りれるだけ借りるの真意

借りれるだけ借りるとは、ただ借りればよいというハナシではありません。それがわからずに、借りれるだけ借りることを否定するのは尚早というものです。そのうえ、必要な借入を避けるようでは、かえって資金繰りを悪くしてしまいます。借りれるだけ借りるの真意を知りましょう。

プロパー融資を目一杯

借りれるだけ借りるの真意、1つめは「プロパー融資を目一杯」です。

借りれるだけ「借りる」の対象は、プロパー融資を指しています。プロパー融資とは、民間金融機関の融資のうち、信用保証協会の保証が付かない融資です。これに対して、信用保証協会の保証が付いた融資(以下、保証付き融資)もあります。では、銀行はどちらが融資をしやすいか?

保証付き融資です。会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれるため、プロパー融資に比べると銀行のリスクは格段に小さくなります。だとすれば、プロパー融資は保証付き融資に比べて、銀行が融資をしにくいことはわかるでしょう。

以上をふまえて、プロパー融資を目一杯借りておくことです。この点、自社の業績がよいときが「借りどき」となります。銀行のリスクも小さくなりますから、そもそも融資がしにくいプロパー融資であっても、融資できる可能性が高くなるからです。

いっぽうで、保証付き融資は目一杯借りるのではなく、余力を残しておきます。保証付き融資には、制度上の限度額(無担保の一般保証ならば8,000万円)があるため、目一杯借りていると、いざというときの資金調達手段がなくなってしまうからです。

保証付き融資は銀行にとってリスクが小さく、融資がしやすいのですから、いざというときのために温存しておくのは大事なことだといえます。また、保証付き融資に余力があるからこそ、銀行はプロパー融資を検討しやすくもなることを忘れてはいけません。

日本公庫からも借りる

借りれるだけ借りるの真意、2つめは「日本公庫からも借りる」です。

会社の銀行融資には、民間金融機関からの融資のほかに、公的金融機関からの融資もあります。公的金融機関の代表が、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)です。この点、民間金融機関からは融資を受けていても、日本公庫からは融資を受けていない会社があります。

だとすれば、日本公庫からも借りましょう。これもまた、「借りれるだけ借りる」にあたります。日本公庫からも融資を受ければ、単純にその分だけ預金が増えるのがメリットです。そもそも、借りれるだけ借りるのは「預金を増やす」のが目的であり、借金を増やすことではありません。

預金がなくなれば会社はおしまいなのですから、いかに預金を増やすかは大事なことです。これに関して、なくなってから借りればいいとか、借りたいときに借りれるようになればいいとのハナシもありますが、借りたいときほど借りれないのが銀行融資でもあります。

会社が借りたいときというのは、えてして困っているときです。困っているときにおカネを貸すほど、銀行は親切ではありません。これは銀行の悪口ではなく、銀行が事業として融資をしている以上は当然のことです。だから、借りれるうちに借りれるだけ借りておくことをおすすめしています。

その一環として、日本公庫からも借りましょう。日本公庫の役割は「民間金融機関の補完」であり、プロパー融資に比べれば借りやすい融資ではあります。ですが、過去に借入の実績がなく、いざとなってから初めて借りようとするのでは、借りにくくもなってしまいます。ふだんから借入をしておくことで、日本公庫との関係づくりもしておきましょう。

据え置く前提で借りる

借りれるだけ借りるの真意、3つめは「据え置く前提で借りる」です。

借りれるだけ借りるを否定する理由として、「借りても返さなければいけない」や「借りたおカネはなくなってしまうものだ」などがあることは前述しました。ところが、これらは借りれるだけ借りるのを否定する理由にはなりえません。

なぜなら、借りれるだけ借りたおカネは、据え置くことを前提にしているからです。言い換えると、借りれるだけ借りることの目的は、預金残高を増やすことにあります。すぐには使わないおカネをあえて借りることで、預金残高をより増やして、資金繰りの安全度を上げるのです。

それでも、借りたら毎月の返済があるじゃないかとおもわれるかもしれませんが、手元に据え置いているおカネから返すだけなので、借りる前に比べて返済負担が増えるわけではありません。

また、借りれるだけ借りたおカネなど、ムダ使いをしてなくなってしまうものだというのであれば、それは「ムダ使い」が原因なのであり、借りれるだけ借りたことが悪いのではありません。ムダ使いをするような会社は、借りたおカネでなくとも(売上で増やしたおカネとか)なくすものです。それを借入のせいにするのでは、問題のすり替えというものでしょう。

などといえば、さいごは「借りてまでおカネを増やすなどもったいない」との意見もあります。借りれば利息を払わねばならないからです。

では、金利3%で、1,000万円を余分に借りたときの利息はいくらかといえば、月2.5万円です。利息の節税効果を加味すると、実質1.7万円くらいになります。それだけのコストで1,000万円のおカネを余分に持つことができるのを、メリットだと感じる社長はいるものです。

社長の本業は「経営」であり、月1.7万円で「資金繰り」の悩みや手間から解放されるのであれば、月1.7万円のコストなど経営改善による利益増で十分に回収できるとの考えに依ります。

まとめ

借りれるだけ借りるとは、ただ借りればよいというハナシではありません。そこで、もう少し解像度を上げて、借りれるだけ借りるの真意についてお伝えしました。

  • プロパー融資を目一杯
  • 日本公庫からも借りる
  • 据え置く前提で借りる

これらがわからずに、借りれるだけ借りることを否定するのは尚早というものです。そのうえ、必要な借入を避けるようでは、かえって資金繰りを悪くしてしまいますので気をつけましょう。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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