実は「社長の奥さん」が融資審査で重要なワケ

実は「社長の奥さん」が融資審査で重要なワケ

銀行融資は、社長と会社だけの話だと思っていませんか?実は社長の奥さんや家族の存在が、銀行評価や融資審査に影響することも…その意外な3つの理由を解説します。

目次

銀行融資と社長の家族の関係性

銀行から融資を受けるときの審査というと、まず思い浮かべるのは、会社の決算書の内容、事業計画の妥当性、そして社長ご自身の経営手腕といったところでしょう。もちろん、それらが審査の根幹であることは間違いありません。

しかし、とくに中小企業においては、それ以外にも銀行員が「密かに」あるいは「当然のこととして」注目している要素があります。それは、意外におもわれるかもしれませんが、「社長の家族」、とりわけ奥さん(社長が女性であれば旦那さん、以下同じ)の存在や関わり方なのです。

「まさか、家族のことまで銀行が見ているの?」「プライベートなことじゃないか!」と驚かれたり、不快に感じたりする社長もいらっしゃるかもしれません。でも、銀行が社長の家族に関心を持つことには、ちゃんとした理由があるのです。

今回は、銀行融資において、なぜ社長の奥さん(あるいは家族)の存在が意外と重要視されることがあるのか、その代表的な3つの理由について解説していきます。結論として以下のとおりです。

  • 理由1:経理の信頼性を左右することがあるから
  • 理由2:公私混同の有無や生活安定度を測るため
  • 理由3:事業継続のキーパーソンとなり得るから

それではこれらについて、なぜ銀行が、社長の家族の存在や関与に注目するのか、その具体的な理由を掘り下げていきましょう。

社長の家族が注目される3つの理由

銀行は、貸したおカネがきちんと計画どおりに返済されるかどうかを、さまざまな角度から慎重に判断します。そのなかで、社長の家族、とくにもっとも身近な存在である奥さんの存在が、間接的に、ときには直接的にどのように影響してくるのか?具体的な理由を見ていきましょう。

理由1:経理の信頼性を左右することがあるから

中小企業においては、社長の奥さんが会社の経理業務全般を担当している、あるいは深く関与しているケースは多くあります。そのような場合、奥さんの経理スキルや仕事に対する真摯な姿勢、几帳面さといった要素が、そのまま月次決算の精度や、作成される試算表・決算書の信頼性に直結します。 銀行は、融資審査の入口として、まず試算表や決算書の数字が信頼できるものであるかどうかを重視するものです。この点、奥さんが経理をしっかりと管理し、正確でタイムリーな会計処理が行われている会社は、銀行から「この会社の数字は信用できる」という評価を得やすくなります。

これに対して、経理処理がどんぶり勘定であったり、社長の個人的な支出と会社の経費の区別が曖昧であったり、試算表の作成が大幅に遅れたりするような状況であれば、銀行は会社の数字そのものを信用できなくなります。これは、融資審査において大きなマイナスポイントです。

奥さんが経理を担当されている場合、銀行の目には、その経理管理の甘さの責任の一端が(結果として)奥さんにもあるように映ってしまうことも、残念ながらあり得るのです。

  • 銀行が見ているのは「管理体制」

銀行が最終的に見たいのは、奥さんが経理に関与しているかどうかということ自体よりも、「会社として、信頼できる経理・財務管理体制が構築されているか」という点です。奥さんが経理に関与されているのであれば、その専門性や業務への関与度合い、そして社長自身が経理情報をどこまで把握して経営に活かしているか、といった点が注目されます。

理由2:公私混同の有無や生活安定度を測るため

銀行は、融資した資金が事業目的以外に使われること(資金使途違反)や、社長が会社のおカネを私的に流用していないか、といった「公私混同」の有無をとても気にします。また、社長自身の私生活が安定していることは、経営への集中度や精神的な安定にも繋がるとも考えています。

社長の金銭感覚や、家庭と仕事のバランス、日々の生活の安定度といったものは、直接的には銀行には見えにくい部分です。しかし、銀行員は社長との面談や、ときには奥さんも交えた会話のなかで、そうした社長のパーソナルな側面を探ろうとすることがあります。

たとえば、社長の個人的な浪費が激しい場合、それが家庭生活にも影響を及ぼし、奥さんの表情や言動に現れることがあるかもしれません。あるいは、奥さんが社長の事業を深く理解し、協力的であるかどうかも、銀行員にとっては社長の経営への安心感を測る材料になることがあります。

  • 銀行が見ているのは「社長の堅実性」

銀行は、社長が公私をきちんと区分して、堅実な生活を送っているかどうかを見ています。そして、家族(とくに配偶者)が社長の事業を理解し、良き協力者・理解者となっているかどうかという点も、社長の経営者としての資質を判断するうえでの、参考情報としているのです。

理由3:事業継続のキーパーソンとなり得るから

中小企業の経営は、社長個人の能力やリーダーシップに大きく依存していることが少なくありません。そのため、もし社長が急な病気や不慮の事故などで、経営の第一線から長期間離れなければならなくなった場合、会社の事業はどうなるのか?借入金の返済は滞りなく続けられるのか?銀行は大きな不安を抱えます。

このような「もしも」のときに、奥さん(あるいは他の家族)が会社の状況(事業内容の概要、主要な取引先、資金繰りの基本的な状況など)をあるていど把握していて、事業の継続や銀行とのコミュニケーションを(一時的にでも)担える状態にあるかどうかは、銀行にとって重要な関心事です。銀行としては、社長が倒れたとたんに「誰と話せばいいのか?」「会社はどうなってしまうのか?」がまったくわからなくなるのが、いちばん困る事態なのです。

将来的に、子どもなど親族へ事業を承継することを考えている社長も多いでしょう。その際、奥さん(あるいは他のご家族)がそれを理解し、協力的であることは、円滑な事業承継にとってたいへん重要です。

承継準備期間中の家族内でのコミュニケーション、後継者となる子どもの育成サポート、あるいは相続が発生した際の諸手続きなど、家族の関与がスムーズなバトンタッチを後押しします。銀行も、事業承継の計画性や実現可能性を評価するときには、社長家族の意向や協力体制を気にしています。

  • 銀行がみたいのは「継続の準備度」

結局のところ、銀行は「社長が急に不在になるというリスクに対して、会社として、あるいは家族としてどのような備えができているか」を見ています。奥さん(ご家族)が、その備えの一翼を担えるのかどうか?

そして、事業承継を考えているのであれば、その意思と、実現に向けた家族内での同意がどのくらい形成されているのか、といった点が注目されます。

社長としては、日ごろから、会社の重要な情報(事業の概要、主要な取引銀行、顧問税理士の連絡先、緊急時の対応手順など)を奥さん(ご家族)と共有しておくことが大切です。また、事業承継を視野に入れているのであれば、早い段階から家族会議を開き、将来について話し合い、意思統一をはかっておくことが望ましいでしょう。

まとめ

銀行融資において、社長の奥さん(あるいは家族)の存在が、

  • 理由1:経理の信頼性を左右することがあるから
  • 理由2:公私混同の有無や生活安定度を測るため
  • 理由3:事業継続のキーパーソンとなり得るから

という3つの側面から、意外にも影響を与える可能性があることについてお話ししてきました。これは、銀行が社長の家族関係に過度に干渉するという意味ではありません。

中小企業においては、「社長個人の信用」と「会社の信用」、そしてときには「家族の協力体制」が、分かちがたく結びついている現実があります。銀行は、会社の安定性や継続性を多面的に評価するうえで、そうした要素も無視できないと考えているのです。

社長としては、まず自身の会社経営や財務状況について、日ごろから奥さん(家族)と情報を共有して、理解と協力を得ておくことが、結果として銀行からの信頼にも繋がり、より強固な経営基盤を築くうえで大切になるでしょう。

最終的には、会社と社長、そしてそれを支える家族も含めた「全体の信頼性」と「安定感」が、銀行評価、ひいては会社の未来にとって重要な意味を持つということを、頭の片隅に置いておいてくことが大切です。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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