決算書の内容は悪くないはずなのに、なぜか銀行の反応が鈍い…。そんなときは、社長の「時間の使いかた」が見られているのかもしれません。銀行員が社長の信用力を測る、意外なモノサシについて解説します。
銀行員が「この人なら大丈夫」と判断する瞬間
銀行融資の審査において、決算書(定量評価)が重要であることは言うまでもありません。ですが、銀行はそればかりではなく、「社長個人(定性評価)」も見ています。
では、銀行員は社長の何を、どのような基準で見ているのでしょうか?
高尚な経営理念や、壮大なビジョンでしょうか?もちろんそれらも大切ですが、もっと手前にある、日常の些細な「行動習慣」にこそ、社長の本質が現れると銀行は考えています。
なかでも、銀行員がもっともシビアに見ているのが、社長の「時間」に対する感覚です。
なぜなら、銀行業とは「期日(時間)までにおカネを返してもらう」商売だからです。時間を守れない社長は、約束(返済)も守れないのではないか。銀行員は本能的にそう疑います。
今回は、銀行員が密かにチェックしている、社長の信用を落とす「時間の習慣」を3つ紹介します。これらは、特別な能力がなくても、今日から意識するだけで変えられることばかりです。
信用を落とす「時間の習慣」3選
1.アポイントに「5分前」行動ができない
「5分くらいの遅刻なら、電話するほどでもないだろう」
そう考えて、約束の時間ギリギリや、数分遅れて銀行に到着していませんか?
銀行員にとって、時間は信用そのものです。たとえ数分の遅刻であっても、それが常態化している社長に対しては、「自己管理ができていない」「相手の時間を奪うことに抵抗がない」というネガティブなレッテルを貼るものです。
逆に、常に「5分前」には到着している社長はどうでしょうか。
「余裕を持って行動できる計画性がある」「不測の事態も想定して動いている」と映ります。この「準備の習慣」こそが、会社経営における「資金繰りの計画性」への信頼につながるのです。
2.レスポンス(返信・回答)が遅い
銀行から資料の提出を求められたり、質問を受けたりしたとき、「あとでやろう」と後回しにしていませんか?
レスポンスの遅さは、単に忙しいからではありません。「優先順位がつけられない」、あるいは「都合の悪いことから逃げている(不誠実)」というサインとして受け取られます。銀行融資に強い社長は、総じてレスポンスが速いものです。
たとえすぐに回答できない内容であっても、「確認して、〇月〇日までにご回答します」という、いわゆる「一次回答」を即座に行う習慣を持っています。
「おカネの切れ目は縁の切れ目」と言いますが、銀行対応においては「連絡の切れ目が縁の切れ目」になりかねません。肝に銘じておきましょう。
3.「小さな約束」を忘れる
「こんど、その資料を送っておきますね」「紹介いただいた件、確認してみます」
面談の場の雑談で、こんな「小さな約束」をすることはありませんか?
社長にとっては社交辞令のつもりでも、銀行員はメモを取って覚えています。そして、その小さな約束が守られなかったとき、「この社長は調子のいいことばかり言う」「口先だけだ」と黙って評価を下げます。
「小さな約束」を守れない人が、「大きな約束(大きな額の融資契約)」を守れるはずがない。これが銀行員の偽らざる本音です。
口にしたことは必ず実行する、あるいは、できないことは安請け合いしない。この規律もまた、重要な「時間の習慣」のいちぶだといえます。小さな約束こそ、確実に守りましょう。
まとめ
今回ご紹介した3つの習慣、
- 5分前行動をする
- 即座にレスポンスする
- 小さな約束(期日)を守る
これらは、けして難しいことではありません。しかし、これを徹底できている社長は、意外と少ないのが現実です。だからこそ、これらを「習慣」にまで落とし込むことができれば、それだけで他の社長と差別化され、銀行からの信頼を積み上げることができます。
「神は細部に宿る」と言いますが、銀行融資においては「信用は細部に宿る」のです。
なお、こうした「定性評価」を高めるための社長の行動については、僕のKindle本『銀行に好かれる社長の習慣 ~定性評価で差がつく35の行動原則』でも、さらに詳しく、体系的に解説しています。
「時間」のほかにも、「数字への向き合いかた」や「銀行との対話術」など、銀行員が思わず応援したくなる社長の習慣を35個厳選しました。
AmazonのKindle Unlimited(読み放題)の対象にもなっていますので、ご興味があれば、ぜひパラパラと眺めてみてください。
あなたの「習慣」が、会社の未来を変えるきっかけになることを願っています。

