銀行から「試算表を見せてください」といわれることがあります。では、銀行が融資先の試算表で何を見ているのか?これを社長が知らずにいると、融資を受けにくくするおそれがあります。
試算表を見せてください、といわれる
銀行から「試算表を見せてください」といわれることがあります。では、銀行が融資先の試算表で何を見ているのか?先に結論を述べるのであれば次のとおりです。
- 決算以降の業績
- 社長の管理能力
- 粉飾決算の確率
詳しくは後述しますが、これらを社長が理解することで、試算表を銀行に提出するときに気をつけるべき点がわかったり、銀行に求められずとも自主的に試算表を提出する動機にもなるはずです。
逆に、銀行が試算表で見ているものをわからずにいると、試算表を提出するタイミングが悪かったり、そもそも試算表をつくっていなかったり…結果として融資を受けにくくしてしまいます。
そういったことにならないよう、銀行が融資先の試算表で見ているものを押さえておきましょう。
銀行が融資先の試算表で見ているもの
決算書が1年にいちどの本決算でつくられる書類であるのに対して、試算表は1か月にいちどの月次決算でつくられる書類です。
なかには、そもそも試算表をつくっていない会社や、決算書ほど内容を気にしていない社長もいます。そういった会社や社長はとくに注意が必要です。銀行は試算表「も」見ているのであり、具体的に何を見ているのかを理解しておきましょう。
決算以降の業績
銀行が融資先の試算表で見ているもの、1つめは「決算以降の業績」です。これにより銀行は、直前決算日から現在までの業績を把握することになります。
たとえば、3月決算の会社が9月くらいに融資を受けようとすると、直前決算日からは6か月です。すると、直前の決算書の業績(状態)が、いまなお続いているかはわかりません。直前の決算書は黒字でも、いまは赤字だということもあるわけです。
したがって、直前の決算書を提出して数か月ていどたってから融資を受けようとするときなどは、銀行に試算表の提出を求められるものと考えておきましょう。
では、試算表がありさえすればよいかといえば、そうでもありません。試算表には、相応の正確性が必要です。具体的には、売上や仕入は発生主義で計上されているか、棚卸の処理はされているか、減価償却費は計上されているかなど。これらを聞かれて、社長が「よくわからない…」ということであれば要注意です。
まずは、顧問税理士に確認をしてみるのがよいでしょう。そのうえで、社長自身も理解に努めることが大切になります。
試算表があっても内容が不正確であれば、銀行は業績を把握することができません。そうなれば、融資は受けにくくなってしまいます。銀行に試算表を見せても、「決算書ができてから(=いまは融資の検討ができない)」などといわれるような場合は、試算表の不正確が原因かもしれません。
決算書は正確でも、試算表は不正確な会社はあるものです(顧問税理士がいたとしても)。銀行に試算表を提出する前に、正確性については確認を怠らないようにしましょう。提出してからでは「あとの祭り」です。
社長の管理能力
銀行が融資先の試算表で見ているもの、2つめは「社長の管理能力」です。銀行が試算表から見ているものは、試算表に並ぶ表面的な数字だけではありません。試算表をとおして、社長の能力まで見ているのです。
そもそも試算表をつくっていない会社があります。銀行から「試算表を見せてください」といわれてから、あわてて試算表をつくるような会社です。ふだんから試算表をつくっていれば即座に提出できるのですから、提出までに時間がかかるようだと、試算表をつくっていないことが銀行にもすぐにわかります。
銀行は「試算表もなしに、社長は正しい経営判断ができるのか?(できない)」と考え、社長の管理能力が疑われるのはデメリットです。よって、試算表の有無によって、社長の管理能力を見られていることは理解しておきましょう。
また、試算表はあったとしても、できあがりが遅い場合も同様です。3か月も4か月も前の試算表しかできていませんとなれば、やはり、「そんな古い情報で、社長は正しい経営判断ができるのか?(できない)」となってしまいます。遅すぎる試算表は、銀行の印象を悪くするばかりです。
以上をふまえて、たとえば4月分の試算表であれば、5月20日までにはつくれるようになりましょう。ただし、理想をいえば、5月10日までにはつくりたいところです。それができれば、銀行からは「試算表を経営判断に活かせる会社」と見てもらえるでしょう。
なお、前述したように試算表が不正確な場合も、社長の管理能力を疑われることになります。不正確な試算表は、経営判断には使えない情報であり、そのような試算表を良しとしている社長は大丈夫なのか?(大丈夫じゃない)と、銀行から見られてしまうわけです。
粉飾決算の確率
銀行が融資先の試算表で見ているもの、3つめは「粉飾決算の確率」です。試算表を定期的に提出している会社を、銀行は「粉飾決算の確率が低い会社」と見ています。
ここでいう粉飾決算とは、1年にいちどの本決算でつくる決算書について、資産や利益を水増しすることです。粉飾の手法は多岐にわたりますが、銀行に試算表を定期的に提出している会社は、採れる手法の範囲がせばまります。
なぜなら、過去の経理処理については試算表を通じて銀行に報告済みであり、過去にさかのぼって資産や利益を水増しすることはできないからです。それでも粉飾決算をしようとすれば、決算日直前の経理処理に限られるため、これまで提出してきた試算表の数字と、決算書の数字とが乖離することから粉飾決算は容易に見破られることになります。
だとすれば、試算表を定期的に銀行に提出する会社は、業績に自信がある会社(粉飾決算をする意思がない会社)だとも見えるわけです。よって、銀行から言われずとも、会社のほうから自主的に、かつ定期的に、試算表を提出することをおすすめします。
具体的には、4半期にいちどのペースで提出するのがよいでしょう。そのタイミングで銀行担当者とは面談をして、業績の話はもちろん、現状の課題や取り組み、今後の見込みなどを共有できると、銀行の安心・信頼をえやすくなります。
すると、業績悪化時でも銀行は経緯を把握できているために、柔軟な対応を取りやすくなるものです。つまり、業績悪化時でも銀行の親身な対応を期待できるようになるのは、会社にとってメリットにもなるはずです。
まとめ
銀行から「試算表を見せてください」といわれることがあります。では、銀行が融資先の試算表で何を見ているのか?以下の3点についてお伝えしました。
- 決算以降の業績
- 社長の管理能力
- 粉飾決算の確率
これらを社長が知らずにいると、融資を受けにくくするおそれがあります。そもそも試算表をつくっていない会社や、決算書ほど内容を気にしていない社長は要注意です。銀行は試算表「も」見ているのであり、具体的に何を見ているのかを理解しておきましょう。