日銀の利上げもあり、いまは借入金利が上昇傾向にあります。ですが、会社が銀行借入をするのであれば、金利を気にしてはいけません。なぜなら、資金繰りが悪くなるからです。
むしろ巷の金利が上がるほど
会社が銀行借入をするのであれば、金利を気にしてはいけません。もう少し正確にいうのであれば、「目先の金利が高いことを気にしてはいけない」ということになります。
ところが、目先の金利が高いことを嫌って銀行借入を避ける社長も少なくはないようです(実際にそのようなご意見をいただいたり、見聞きしたりもしています)。
ではなぜ、銀行借入は金利を気にしてはいけないのか。端的にいえば、資金繰りが悪くなるからです。金利を気にするあまり、銀行に金利引下げ交渉をしたり、借入自体を避けるようだと資金繰りは悪くなります。
と聞いて、「そんなバカな」とおもわれるかもしれません。金利が高いほうが返済がタイヘンになるのだから資金繰りが悪くなるはずであり、借入をしたほうが返済負担が増えるのだから資金繰りが悪くなるはずだ。金利を気にしたほうが資金繰りは良くなるなずだ。そうおもわれるかもしれません。
でも、それは違います。ということについて、次のような流れでお話をしていきます。
- おカネが不足すれば本末転倒
- 金利以外の条件に目を向ける
- 銀行の金利に高すぎるはない
日銀の利上げもあり、いまは借入金利が上昇傾向にあります。今後しばらくは金利上昇が続くでしょう。その場合であっても、「金利を気にしてはいけない」との考えに変わるところはありません。むしろ巷の金利が上がるほど、金利を気にしないことが重要になります。いまのうちに、その考え方を理解しておきましょう。
おカネが不足すれば本末転倒
冒頭、会社が銀行借入をするのであれば、金利を気にしてはいけないといいました。なぜなら、資金繰りが悪くなるからだともいいました。
この点、「借入をすれば、利息を払わなければいけない。だから、借入はしないほうがいい」という社長がいます。預金が十分にある会社ならば、それもよいでしょう。ですが、預金が十分でないのに借入をしないでいると資金繰りが悪くなります。
結果、資金ショートして会社をつぶすのではいけません。そこまではいかずとも、預金が十分でないほど、社長は資金繰りに追われて経営がおろそかになります。そうして業績が悪くなれば、預金をさらに減らしてしまうことになるでしょう。いずれにせよ、金利を気にしておカネが不足すれば本末転倒です。
また、借入するにしても、金利を引き下げようと銀行に交渉を迫る社長がいます。やはり、預金が十分にある会社ならば、それもよいでしょう。ですが、預金が十分でないのに交渉をして、銀行から融資を断られてしまうのでは元も子もありません。
いまは借入金利が上昇傾向であることは前述しました。すると銀行は、あまり金利にうるさい会社には貸さないという選択ができます。高い金利で借りてくれるところにだけ貸すだけでも、いままでと同じか、それ以上の利息を得られるからです。
したがって、金利の引き下げ交渉は「ほどほど」が大切になります。ムダに金利を引き上げられるのは困りますが、市場金利の上昇ていどの相応の引き上げであれば飲み込むことです。それもできないような会社は、金利負担力(収益力)のない会社と見られてもしかたありません。すると、銀行の足は遠のき、将来にわたって借入しづらくもなってしまいます。
目先の金利ばかりに目を奪われないようにしましょう。事業の持続・成長という、長い目で資金繰りを考えるようにしましょう。
金利以外の条件に目を向ける
借入金利について、市場金利の上昇ていどの相応の引き上げであれば飲み込むことだといいました。とはいえ、ただただ鵜呑みにするのはどうなのかとの思いはあるでしょう。ならば、金利以外の条件に目を向けることです。
金利は、融資条件のひとつにすぎません。ほかにも、融資金額、返済期間、担保・保証の有無といった条件もあるのです。銀行が金利を引き上げるというのなら、代わりに別の条件を交渉してみましょう。
たとえば、「金利の引き上げを受け入れる代わりに、経営者保証は外してほしい」といったことが考えられます。これであれば、借入によって資金繰りがラクになるのに加えて、社長個人の返済義務がなくなるのは大きなメリットだといってよいでしょう。増える利息は、そのための必要コストだと考えればけして高いものではないはずです。
繰り返しになりますが、目先の金利を嫌って、借入自体を避けるのは得策ではありません。借入をしない分だけ預金残高は少なくなり、資金繰りは悪くなります。銀行は貸すのが商売ですから、借入を避けるような会社は、長い目で見れば嫌われることにもなりかねません。
ですから、銀行との関係性を維持するためにも借入を続けることは大事なのであり、銀行に支払う利息はそのための必要コストでもあります。そのコストは受け入れたうえで、金利以外の条件に目を向けてみましょう。金利以外の条件を改善できれば、コストを受け入れやすくもなるはずです。
銀行の金利に高すぎるはない
銀行に支払う利息は必要コストだといいました。でも、その利息が高いのだ、金利が高いのだと主張する社長がいます。気持ちはわかりますが、論理的ではありません。理屈のうえでは、銀行の金利が高すぎることはないからです。
そもそも、ここしばらくは低金利時代だったのであり、むしろ低すぎるくらいの水準でした。これからは金利が上昇するといっても、いきなり5%だ10%だといったことはありません。銀行は高利貸しではないのです。
仮に、1,000万円を年利3%で借入した場合、利息は年間30万円となります。節税効果を考慮すると実質20万円くらいです。ひと月あたり1.6万円の利息で、1,000万円の預金を持てることになります。金利3%というと高く聞こえるかもしれませんが、額にすればそうでもないとの見方もできるでしょう。
また、世の中の金利が上がるということは、会社もそれだけ利益率を上げられる環境にあるともいえます。だから、市場金利の上昇ていどの引き上げも飲み込めない会社は、金利負担力(収益力)のない会社と見られてしまうこともあるのです。
では、市場金利の上昇とはどれほどなのか。日銀が毎月、WEBで公表している「貸出約定平均金利」が参考になります。金融機関の種類(都市銀行、地方銀行、信用金庫)ごとに、過去6か月の貸出金利の平均を確認することができます。これと、自社の借入金利とを比較してみるとよいでしょう。
そのうえで、銀行が要求する引き上げが、市場金利の上昇ていどであれば良しとすることです。いっぽうで、市場金利の上昇以上に引き上げを求められている場合には、市場金利の上昇とは別の理由があることになります(自社の業績が悪いとか)。そのときには、貸出約定平均金利を引き合いに出して、銀行に確認をしてみるとよいでしょう。
以上をふまえて、銀行の金利に高すぎることはないとわかります。金利を気にするよりも、金利を気にするあまり預金が十分ではなくなり、資金繰りが悪くなることを気にしましょう。金利が高くても預金があればつぶれませんが、預金がなくなれば会社はつぶれます。
まとめ
会社が銀行借入をするのであれば、金利を気にしてはいけません。なぜなら、資金繰りが悪くなるからです。この考え方について、以下の流れでお話をしました。
- おカネが不足すれば本末転倒
- 金利以外の条件に目を向ける
- 銀行の金利に高すぎるはない
日銀の利上げもあり、いまは借入金利が上昇傾向です。そのように巷の金利が上がるほど、金利を気にしないことが重要になります。いまのうちに、その考え方を理解しておきましょう。