会社の銀行借入について、適正額はいくらなのか。「借りれるだけ」というのが僕の結論です。その理由とは?借りれるだけとは具体的にどれだけなのか?についてお伝えします。
暴論だと怒りを買っても
会社の銀行借入について、「適正額はいくらか?」という話になることがあります。もう少し平たくいうと、「いくらまでなら借りてもよいか?」といった疑問です。
これに対して僕が考える結論は、「借りれるだけ」です。などといえば、「コイツはまたおかしなことをいっている…」と呆れられるか、「暴論だ!」だと怒りを買うことになりかねませんが。でもしかたがない。本気でそう考えているのですから。
いっぽうで、債務償還年数や借入金月商倍率、あるいはインタレスト・カバレッジ・レシオなど、銀行借入の適正額の目安として役立ちそうな指標もあります。そのうえで、「借りたいときに借りれる会社になりましょう」との正論もあるわけですが。僕にしてみれば、「そちらのほうが暴論」であって、「ただの綺麗事ではないのか?」と疑うところでもあります。
とはいえ、意見の対立で喧嘩をする意図はなく、ひとつの考え方として、ひとつの注意喚起としてお話をしようというだけです。
ではなぜ、銀行借入の適正額は借りれるだけなのか?借りれるだけとは具体的にどれだけなのか?そのあたりについてはこのあと、次のような流れでお伝えしていきます。
- 借りれるだけとはつまり…
- 保証付き融資は空き枠を残す
- 日本公庫からは常に借りておく
それでは順番に確認していきましょう。
借りれるだけとはつまり…
冒頭、銀行借入の適正額は「借りれるだけ」だといいました。もう少し正確にいうと、「預金が十分に増えるまでは借りれるだけ」です。預金が十分の目安として、僕は「平均月商の6か月分」をおすすめしています。その根拠については、以下の別記事で書きました。
端的にいえば、それだけの預金があれば「半年のあいだ売上がゼロでも耐え忍ぶことができるから」です。ところが、多くの中小企業ではそれだけの預金を自力(利益)で用意するのは困難です。
だから銀行借入を活用しましょう、といっています。それだけの預金がないのであれば、借りれるだけ借りましょう、といっています。すると「暴論だ!」とのハナシにもなるわけです。支払い利息の負担だってあるのだし、借りたいときに借りれる会社になればいい、というのであれば正論です。
ところが、借りたいときほど借りることができないのが中小企業でもあります。これについては、以下の別記事でくわしく書きました。
借りたいときに借りれる会社は理想であり、そこを目指せというのは正論ではあるものの現実的ではない。目指すのであれば、それをようく理解したうえでお願いしたい。というのが僕の思いです。実際、理想を目指すあまり、目の前の資金繰りで苦労されている会社があります。本末転倒です。
話を戻すと、「借りれるだけ」とはつまり、「平均月商の6か月分の預金になるまで借りれるだけ」ということになります。
保証付き融資は空き枠を残す
平均月商の6か月分の預金になるまでは、借りれるだけ借りましょうという話をしました。ここでひとつ注意点があります。それは「借りかた」です。結論として、借りれるだけ借りるのは「プロパー融資」であり、「保証付き融資」ではありません。
そもそも、民間金融機関からの融資は、プロパー融資と保証付き融資とに分かれます。このうち保証付き融資とは、信用保証協会の保証が付いた融資です。会社が返済できないときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれるため、銀行にとっては貸しやすい融資にあたります。
いっぽうのプロパー融資は、信用保証協会の保証がない融資です。会社が返済できないときには、銀行が100%損をこうむります。よって、銀行にとっては貸しにくい融資です。
それなら、保証付き融資で借りればいいかというとそうではありません。なぜなら、保証付き融資には制度上の限度額があるからです。たとえば、一般保証・無担保なら8,000万円であり、会社の規模や業況によってはそれ以下にもなります。
にもかかわらず、借りやすい(銀行にとっては貸しやすい)からといって、保証付き融資ばかりで借りていると限度額に達して、空き枠がなくなってしまうのが問題です。空き枠がないと、いざというとき(業績悪化時など)に保証付き融資が受けられないばかりか、プロパー融資が受けにくくなってしまいます。プロパー融資が受けにくくなるのは、保証付き融資の空き枠がない会社に銀行がリスクを感じるからです。
したがって、借りれるだけ借りましょうといっても、保証付き融資を枠(限度額)いっぱいまで借りるのではなく、空き枠は残しておきます。いっぽうで、プロパー融資については借りれるだけ借りることを目指します。プロパー融資に制度上の限度額はないからです。
日本公庫からは常に借りておく
前述した保証付き融資とプロパー融資は、民間金融機関の融資です。これに対して、公的金融機関の融資があります。中小企業における公的金融機関といえば、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)です。その日本公庫からは、常に借りておくことを考えましょう。
日本公庫には、「民間金融機関の補完」という役割があります。よって、民間金融機関が融資をしづらい場面であっても比較的借りやすいのが特徴です。とはいえ、ふだんは何のお付き合いもなく、ある日突然に「業績が悪化したから」といって融資を受けようとすれば難易度は上がります。
いざというときに日本公庫から借りれる選択肢を残すためにも、ふだんから借入をしておくこと、お付き合いを深めておくことが大切です。借入をして、毎月返済を続けることが、日本公庫に対する何よりの信用になります。返済を続けていれば、おのずと借入余力もできるので(返済した分をまた借りる難易度は低い)、それこそ借りたいときにも借りやすくなるのです。
中小企業のなかには、日本公庫からまったく借りたことがない会社もあれば、借りたことはあっても完済したきりでその後の借入がない会社もあります。いざというときのためにも、日本公庫からは常に借りておきましょう。これもまた、借りられるだけ借りるということであり、銀行借入の適正額のうちだとの考えです。
まとめ
会社の銀行借入について、適正額はいくらなのか。「借りれるだけ」というのが僕の結論です。その理由とは?借りれるだけとは具体的にどれだけなのか?についてお伝えしました。
- 借りれるだけとはつまり…
- 保証付き融資は空き枠を残す
- 日本公庫からは常に借りておく
「借りたいときに借りれる会社になりましょう」との話もありますが、借りたいときほど借りれないのが中小企業です。借りれるうちに借りれるだけ借りることが、銀行借入の適正額になる。この考え方についても検討してみましょう。正論どおりにはいかないのが現実でもあります。