「利益こそが一番大事」などと言われる時代に、あえて「売上」の重要性を考えてみませんか? 銀行も、そして会社の未来も、結局は売上から始まったりもするものです。
脱・売上至上主義は正しいのか?
最近の経営論では、「売上至上主義は古い」「これからは利益重視の時代だ」といった声をよく耳にします。たしかに、売上だけを追い求めて利益を度外視する経営が危険であることは、言うまでもありません。
しかし、その反動で「売上はそこそこでいいから、とにかく利益を確保しよう」と考えてしまってはいないでしょうか。もしそうなら、それは会社の成長機会をみすみす逃しているかもしれません。
利益が重要であることは大前提です。しかし、僕が多くの会社の数字を見てきた中で、「なんだかんだ言っても、売上はやっぱり大事だ」と強く感じています。それは、銀行も同じです。
今回は、なぜいまあえて「売上」に注目すべきなのか、その理由と、銀行が売上をどう見ているのか、そして売上をどう増やすべきかについて、あらためて考えていきたいとおもいます。
この記事のポイントは以下のとおりです。
- 売上は利益の源泉だから
- なんだかんだ銀行は売上が好き
- どうやって売上を増やすべきか
いまあえて、売上の話をしよう
利益至上主義が叫ばれるなかで、なぜいま僕が「売上」にこだわるのか。その理由を3つの視点から解説していきます。売上と利益の、切っても切れない関係が見えてくるはずです。
売上は利益の源泉だから
売上がなければ利益もない
これは、商売のきわめてシンプルな原則です。会社の利益は、どこから生まれるのでしょうか? それは「売上」から、その売上を得るためにかかった「費用」を差し引いた残りです。
つまり、売上は利益の「源泉」に他なりません。極端な話をすれば、売上がゼロ円の会社から、利益が生まれることはありえません。
また、利益を増やすためには、「費用を減らす」か「売上を増やす」かの2択しかありません。費用削減には限界がありますが、売上増加の可能性は(理論上は)無限大です。
会社の成長のエンジンは、いつの時代も売上なのです。
売上は「会社の活気」のバロメーター
売上が伸びている会社は、その会社の商品やサービスが世の中(市場)に受け入れられ、顧客から支持されている証拠です。それは、社内の雰囲気にも活気をもたらし、社員のモチベーション向上にもつながることでしょう。
いっぽうで、売上というトップラインを意識しなくなると、会社全体のエネルギーが内向きになり、縮小均衡に陥ってしまう危険性があります。
なんだかんだ銀行は売上が好き
銀行が見ている成長性
銀行が融資審査で会社の何を見るか。もちろん「利益」はとても重要です。しかし、それと同じくらい、あるいはそれ以上に「売上が伸びているかどうか(成長性)」を重視しています。
なぜなら、売上の増加は、その会社が属する市場の成長性や、その中での競争力を示す、もっともわかりやすい指標だからです。利益が一時的に落ち込んでいても、売上が力強く伸びていれば、「この会社には将来性がある」と銀行は判断しやすくなります。
インフレ時代の売上の意味
特に、最近のようなインフレ(物価上昇)の時代においては、売上の重要性はさらに増します。
世の中のモノやサービスの値段が上がっているのですから、まともな商売をしていれば、会社の売上もそれに伴って増加していくのが自然です。銀行もそう考えています。
もし、世の中がインフレなのに自社の売上が横ばい、あるいは減少しているとしたら、それは「実質的な衰退」を意味するわけです。銀行は、その会社が価格転嫁できずに競争力を失っているのではないか、と厳しい目を向けることでしょう。
どうやって売上を増やすべきか
戦略のフレームワーク「アンゾフのマトリクス」
「売上を増やせ」と言われても、具体的にどうすればよいのでしょうか。ここで役立つのが、「アンゾフのマトリクス」という売上戦略のフレームワークです。「製品(商品・サービス)」と「市場(顧客)」をそれぞれ「既存」と「新規」に分け、4つのパターンで成長戦略を考えます。
- 市場浸透戦略(既存製品×既存市場): いまの顧客に、今の製品をもっと買ってもらう。
- 新製品開発戦略(新規製品×既存市場): いまの顧客に、あたらしい製品を買ってもらう。
- 新市場開拓戦略(既存製品×新規市場): いまの製品を、あたらしい顧客に買ってもらう。
- 多角化戦略(新規製品×新規市場): あたらしい顧客に、あたらしい製品を買ってもらう。
銀行のウケが悪い、安易な多角化
社長がまず取り組むべきは、低コストかつ、もっとも成功確率が高いとされる「①市場浸透戦略」です。逆に、最もリスクが高く、銀行からの評価も得にくいのが「④多角化戦略」です。
社長が「今度、まったく新しい事業を始めようと思うんだ」と相談してきたとき、銀行員は内心、「本当に大丈夫か…?」と身構えます。本業との関連性が薄い、ノウハウのない分野への安易な多角化は、失敗する確率が非常に高いことを銀行は知っているからです。
売上を増やすことは重要ですが、それはあくまで自社の強みが活かせる領域で行うべきです。銀行は、地に足のついた堅実な成長戦略を評価します。
まとめ
「利益さえ出ていればいい」という考えは、ときに会社の成長を妨げる危険な思考です。
- 売上は利益の源泉であり、会社の活気を示す重要な指標
- 銀行もなんだかんだ、売上の伸びを重視している
- 売上を増やす際には、安易な多角化に走るのではなく、まずは既存の事業領域で、できることをやり尽くすことが重要
利益はもちろん大切です。しかし、その利益を生み出す源泉である「売上」から目をそらしてはいけません。自社の売上は、市場の成長と比べてどうなのか。そして、その売上をどうやって伸ばしていくのか。
いまいちど、会社の売上について、考えてみるのはいかがでしょうか。