運転資金は、本来プロパー融資で借りるのがセオリーです。にもかかわらず、なぜ銀行は保証付き融資を勧めてくるのか?その原因は、自社の「売掛金」と「在庫」にあるかもしれません。
「運転資金はプロパーで」が通じない原因
以前の記事(「運転資金の借入を返済してはいけない」)で、「運転資金の借入は、本来、返済の必要がなく、短期継続のプロパー融資で借りるのがセオリーだ」というお話をしました。
その記事を読んで、実際に銀行に「運転資金なのでプロパー融資で」と交渉してみた社長もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その結果、銀行から「いや、保証協会の保証付きでないと難しいですね」と、渋い顔をされてしまった…というケースは少なくないものと想像します。
ではなぜ、セオリーであるはずのプロパー融資を、銀行は断るのか?
「ウチの会社の信用がないからだ…」と落ち込むのはまだ早いです。銀行がプロパー融資をためらうのには、また別の原因もあります。そして、その原因は社長の側で解決できる可能性があるのです。
本記事では、なぜ運転資金をプロパー融資で借りられないのか、その原因と、どうすれば借りられるようになるのか、具体的な対策について解説していきます。
この記事のポイントは以下のとおりです。
- なぜプロパー融資がセオリーなのか?
- 売掛金、棚卸資産に不良や架空がある
- 売掛金、棚卸資産の妥当性を証明する
運転資金をプロパー融資で借りられない原因
銀行が運転資金のプロパー融資に応じられないのには、原因があります。それを理解するために、まずは「なぜ運転資金はプロパー融資がセオリーなのか」という理屈から確認していきましょう。
ポイント1:なぜプロパー融資がセオリーなのか?
まずは、以前の記事のおさらい的な内容ですが、運転資金の代表格は「経常運転資金」であり、その経常運転資金は「売掛金+棚卸資産ー買掛金」という算式で表されます。これは、会社が事業を続ける限り、必要となるおカネです。
銀行がこの運転資金を融資するとき、その返済原資は「売掛金と棚卸資産の現金化」にある、と考えています。つまり、銀行にとって売掛金と棚卸資産は、実質的に「担保」のようなものなのです。
価値のある担保(売掛金・棚卸資産)がきちんと存在するならば、銀行はわざわざ信用保証協会の保証を付けずとも、自行の責任(プロパー)で融資ができるはず。担保があってなお、信用保証協会の保証を付けるというのでは、過剰保証というものです。
これが、運転資金はプロパー融資がセオリーだという理由になります。
ポイント2:売掛金、棚卸資産に不良や架空がある
ではなぜ、それでも銀行はプロパー融資をためらうのか? 答えはシンプルです。「担保(みたいなもの)であるはずの売掛金や棚卸資産の価値が、信用できないから」です。
決算書の貸借対照表に載っている売掛金や棚卸資産が、本当に額面どおりの価値があるのか、銀行は常に疑いの目で見ています。具体的には、以下のようなことを懸念しています。
- 不良債権の疑い
売掛金のなかに、回収見込みのないもの(倒産した相手先、長期滞留しているものなど)が含まれていないか? - 不良在庫の疑い
棚卸資産(在庫)のなかに、もう売れないもの(季節外れ、破損・劣化品、滞留品など)が含まれていないか? - 架空資産の疑い
最悪の場合、実態のない売上(架空売上)を計上して売掛金を水増ししたり、在庫の数を偽って(架空在庫)資産を多く見せたりしていないか?
このように、価値のない「不良資産」や、存在しない「架空資産」に、銀行はおカネを貸すことはできません。担保としての価値がないからです。
その疑いが払拭できない限り、銀行はリスクを取れず、「信用保証協会の保証がなければ…(自行でリスクは取りたくない)」という判断になるわけです。
ポイント3:売掛金、棚卸資産の妥当性を証明する
前述した銀行の懸念を払拭し、プロパー融資を引き出すために社長がやるべきことは、「ウチの会社の売掛金と在庫は、ここ(決算書や試算表)に書いてあるとおり、きちんと価値のあるものです」と、客観的な証拠をもって証明することです。
いっぽうで、「信じてください」という言葉だけでは不十分だと心得ましょう。具体的な証明方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 売掛金について 「売掛金内訳一覧」を提出しましょう。得意先別に売掛金の推移・残高を一覧にしたものであり、どの得意先に対して、いつ発生した売掛金が、いくらあるのかを一覧にしたものです。これを銀行に見せることで、売掛金が実際に存在していて、長期間滞留しているものもない、ということをアピールできます。
- 棚卸資産について 「棚卸資産内訳一覧表」を提出しましょう。どの商品が、いくつ、いくらで、どこに保管されているかを示す資料です。 さらに効果的なのは、銀行の担当者を倉庫や店舗など現場に案内して、「これが実際の在庫です」と現物を見せることです。きちんと整理整頓された状態で、価値のある在庫が確かにあることを見てもらえれば、銀行の信頼度は劇的に高まります。
このように、自社の資産内容をオープンにして、透明性を高める努力をすること。それが、銀行の「本当にこの資産は大丈夫か?」という疑念を払拭し、「この会社ならプロパー融資で支援できる」という判断を引き出すための、有効な手段になるのです。
まとめ
運転資金をプロパー融資で借りられない…そのおもな原因は、銀行が自社の「売掛金」と「棚卸資産」の価値を信用しきれていないことにあります。
銀行にとって、これらは融資の「担保(みたいなもの)」です。その担保に、不良資産や架空資産が混じっているのではないか、と懸念しているのです。
この懸念を払拭して、プロパー融資を引き出すためには、社長みずからが、内訳一覧表の提出や、在庫の現物を見せるなどして、資産の妥当性を客観的に証明することが不可欠となります。
プロパー融資は、単にお願いして勝ち取るものではありません。日ごろから資産を健全に管理し、その健全性を銀行に対して開示できる「管理体制」と「透明性」を築き上げた結果として、得られるものだと考えましょう。