運転資金の追加融資で注意すべきことがあります。知らずにいると、受けられたはずの融資が受けられず、ムダに資金繰りを悪くしかねません。
運転資金は設備資金以外のためのおカネ
会社の銀行融資について、運転資金の追加融資で注意すべきことがあります。
ここでいう追加融資とは、運転資金を資金使途とする融資をいちど受けたのちに、追加でさらに、運転資金を資金使途とする融資を受けることです。なお、資金使途とは「借りたおカネの使いみち」であり、運転資金と設備資金の大きく2つに分かれます。
このうち、設備資金とは設備投資のためのおカネであり、運転資金は設備資金以外のためのおカネです。具体的には、仕入代金や経費の支払いに充てるおカネが運転資金となります。では、その運転資金の追加融資で注意すべきこととは3つ、次のとおりです。
- 前回から6か月はあける
- 設備資金とあわせて借りる
- そもそもしっかり借りておく
これらについて、このあと順番に解説していきます。知らずにいると、受けられたはずの融資が受けられず、ムダに資金繰りを悪くしかねません。そうならないように、必ず理解しておきましょう。
運転資金の追加融資で注意すべきことは
運転資金の追加融資で注意すべきこととして、3つお伝えしていきます。
いずれも、銀行融資は「会社が借りたいとき」に借りられないことをあらわしています。借りるにもタイミングがあり、銀行が「貸すのに適している」と考えるタイミングに借りることが大切です。いつでも借りられるとは考えないようにしましょう。
前回から6か月はあける
運転資金の追加融資で注意すべきこと、1つめは「前回から6か月はあける」です。
いちど運転資金の融資を受けたあとまもなく、次の運転資金の融資を受けようとすると、銀行から断られる可能性が高くなります。いうまでもなく、「このあいだ貸したばかりだろう」ということであり、銀行としては融資先の資金繰りに不安も感じるからです。
では、「まもなく」とはどれくらいをいうのかといえば、「6か月」が目安になります。前回、運転資金の融資を受けてから6か月に満たなければ、それは「まもなく」であり、銀行は融資しづらいということです。いっぽうで、6か月を過ぎてあいだが空いているほど融資しやすくなります。
実際には6か月に満たない場合でも、追加融資を受けられることはあるでしょう。ですが、それはレアケースと考えておかねばなりません。とくに、前回融資から2〜3か月に満たないという状況ではまずムリです。「貸したおカネが2〜3か月で足りなくなるなど、無計画以外のなにものでもない」というのが銀行の見方になります。
なお、6か月を過ぎていれば必ず追加融資ができるかといえば、もちろんそうではありません。会社は、なぜまた運転資金が必要なのかを説明する必要があり、「6か月前とは状況が変わった(6か月前には想定していなかったことが起きた)」という事実があるかがポイントになります。
設備資金とあわせて借りる
運転資金の追加融資で注意すべきこと、2つめは「設備資金とあわせて借りる」です。
設備投資をするときには、設備資金の融資を受けるのが財務のセオリーです。このとき、設備投資をすれば、あわせて運転資金が必要になることを忘れてはいけません。たとえば、設備が稼働するまでのコストや、稼働後に軌道に乗る(利益が出る)までの資金繰りには、運転資金としてのおカネがいります。にもかかわらず、設備資金だけを借りて、運転資金を借り忘れているケースはあるものです。
また、設備投資は必ずしもうまくいくとも限らず、うまくいかない場合(想定した設備投資の効果として利益が出ない場合)にはその分、資金繰りが厳しくなります。ですから、そこも想定して運転資金を借りれるだけ借りておくのが賢明でしょう。余分に借りて利息を払うなどもったいないとおもわれるかもですが、余ったおカネはうまくいったときには返せばよいだけの話です。
これが、設備投資がうまくいかず、資金繰りが厳しくなってから借りるのは難しいものがあります。銀行としては、うまくいっていない会社に融資をするのはリスクでしかないからです。なので、銀行のリスクが小さいうちに借りる、リスクが現実化する前に借りるのがポイントになります。
そもそもしっかり借りておく
運転資金の追加融資で注意すべきこと、3つめは「そもそもしっかり借りておく」です。ここまでの2つの注意点をふまえて、運転資金は、そもそもしっかり借りておくことをおすすめします。
運転資金の融資を受けるにあたり、「できるだけ少なく借りよう」と考える社長はいるものです。できるだけ借入を増やしたくないとの気持ちはわかりますが、結果として、6か月満たないうちに追加融資を必要とする可能性を高めてしまいます。
また、銀行としても少額を貸すより、多額を貸すほうがよいのです。少額でも多額でも、銀行の貸す手間や時間はそれほど変わらないので、だとすれば、少額ではコスパが悪く取り組みにくいことはわかるでしょう。ゆえに、借りるときには借りられるだけ借りることです。
運転資金の融資額は、おもに経常運転資金(売掛金+棚卸資産−買掛金)がベースになりますが、加えて「手元資金の積み上げ」も含まれます。銀行としても、経常運転資金ギリギリのおカネでは資金繰りに余裕がないことはわかっているので、プラスアルファ上乗せの融資をすることもあるわけです。
いくら上乗せできるかは、会社の状況や銀行の思惑などがありますからケースバイケースではあるものの、経常運転資金の額を超えて運転資金を借りることが可能であることは覚えておきましょう。自社の業績が良いときや、銀行が貸したいとき(銀行の決算近くなど)はとくにです。そのチャンスを逃さず、そもそもしっかり借りておくことで追加融資に頼らずともよくなります。
まとめ
運転資金の追加融資で注意すべきことがあります。知らずにいると、受けられたはずの融資が受けられず、ムダに資金繰りを悪くしかねません。そうならないように、以下の3つを必ず理解しておきましょう。
- 前回から6か月はあける
- 設備資金とあわせて借りる
- そもそもしっかり借りておく
いずれも、銀行融資は「会社が借りたいとき」に借りられないことをあらわしています。借りるにもタイミングがあり、銀行が「貸すのに適している」と考えるタイミングに借りることが大切です。いつでも借りられるとは考えないようにしましょう。