月次決算の大切さは、社長ならだいたい知っているはずです。ですが、試算表があることと、月次決算が機能していることは同じではありません。
この記事では、「できているつもり」がなぜ危ういのかを、経営判断と銀行対応の両面から整理します。
「やっているつもり」が、いちばん危うい
月次決算は大事。
そんなこと、社長ならたいてい知っていますよね。税理士に言われた。本で読んだ。セミナーでも聞いた。なので、「またその話か」とおもうかもしれません。
ですが、僕が現場で見てきたのは、 「知っている」会社ほど、じつは危ういことがある という現実です。
試算表がある。
会計ソフトも入っている。
顧問税理士もいる。
でも、それで月次決算が機能しているとは限りません。
先に要点からいうと…
- 月次決算は「やっているつもり」では意味がない。 機能しているかどうか がすべて
- 試算表の遅れは、経営判断だけでなく銀行対応まで後手にしやすい
- 2026年3月の新制度は、月次で数字を見られる会社が、これまで以上に重視される サインのひとつ とも見える
「知っている」と「できている」は、べつもの
月次決算は大事。
これは、社長ならだいたい知っています。
ですが、知っていることと、できていることは別です。
ここを一緒くたにすると、厄介です。
なぜなら、社長自身が「ウチはやっている」とおもい込んでしまうからです。
月次決算が本当に機能している会社は、僕の感覚では、けして多くありません。どちらかといえば少数派でしょう。
会計ソフトはある。
試算表もある。
顧問税理士もいる。
でも、その試算表が経営判断や銀行対応に 使える状態か となると、話は変わります。
この溝を埋めないかぎり、月次決算は「知識」のままで、「機能」にはなりません。
試算表があるだけでは、月次決算とはいえない
月次決算が機能していない会社で、まず多いのがこれです。
試算表はある。
でも、毎月は出てこない。
あるいは、毎月出てきてはいるけれど、2か月遅れ、3か月遅れになっている。
社長としては、「一応やっているから大丈夫」という感覚かもしれません。資料が届いているのだから、ゼロではない。そう言いたくなる気持ちもわかります。
ですが、そこは少し厳しく言います。
試算表を受け取っているだけなら、それは月次決算ではなく月次受領です。
月次決算の価値は、 毎月の数字を、毎月のうちに、あるていど早く見られること にあります。
2か月前の成績表を見せられても、打てる手は限られるでしょう。売上は落ちていないか。粗利は崩れていないか。資金繰りに嫌な気配はないか。そうした異変は、本来なら早く知りたいはずです。
社長が見るべきは、昔の成績表ではありません。
いまの会社の体温です。
遅い試算表は、経営と銀行対応の両方を苦しくする
試算表が遅いことの影響は、じつは経営判断だけにとどまりません。銀行対応にも効いてきます。
たとえば、売上が落ち始めていたとします。粗利も少し崩れている。でも、その数字が見えるのが2か月後だったら、社長が異変に気づくのは、かなり進んでからです。
気づくのが遅れれば、動くのも遅れる。
当たり前なのですが、ここが軽く見られがちなのですね。
値決めを見直す。
経費の増え方を確認する。
銀行への相談を前倒しする。
こうしたことは、早く気づけるほど打ちやすい。
逆に、数字が遅いと、どれも後手に回ります。
銀行も同じです。困りきってからの相談より、まだ打ち手がある段階での相談のほうが、前向きに考えやすい傾向があります。
ですが、試算表が遅いと、社長じしんが危機に気づくのも遅れる。結果として、銀行へ行くタイミングまで遅くなる。
この差は、じわじわ効きます。
音もなく効きます。あとから効きます。
だから、厄介です。
もうひとつの落とし穴は、社長が数字を見ていないこと
試算表が出ていても、社長が見ていなければ、月次決算はただの作業で終わります。
税理士から毎月、試算表が届く。
メールで届く。
紙で届く。
打ち合わせで渡される。
でも、社長は忙しい。
数字より先に、目の前の仕事がある。
ですが、月次決算は、数字が出ることが目的ではありません。
社長が数字を見て、会社の状態をつかむこと。
異変に気づくこと。
必要なら、資金繰りや銀行対応につなげること。
そこまで行って、はじめて意味が出てきます。
忙しいから見ない。その気持ちは自然です。
でも、社長が見ない数字は、経営を守ってくれません。
月次決算の重みは、いま少しずつ増している
ここまでの話は、なにも新説ではありません。
月次決算が大事だという話は、昔からあります。
ですが、 いまはその「大事」の重みが増してきている と僕は感じています。
たとえば、2026年3月に「モニタリング強化型特別保証制度」という制度が始まりました。ざっくりいえば、毎月きちんと数字を見て、必要な報告や管理をしていく会社を、保証付き融資の面から後押しする仕組みです。
この制度を使うかどうかは、会社によるでしょう。
ですが、大事なのは制度名そのものではありません。
制度が示している方向 です。
月次で数字を見られる会社を、これまで以上に重視していく。
その流れが、制度という形で見え始めた。
そう考えるのが自然ではないでしょうか。
つまり、制度を使う・使わないにかかわらず、月次決算ができる会社と、できない会社の「見られ方」には、これから差がつきやすくなる。そう見ておいたほうがよさそうです。
でも、いま気づけたなら、まだ間に合う
ここまで読んで、「ウチは全然できていない」と感じた社長もいるかもしれません。
ですが、必要以上に悲観しなくて大丈夫です。
月次決算は、一気に完成させるものではありません。
試算表を早くする。
その次に、見る数字を絞る。
必要に応じて、資金繰りや銀行対応につながる数字まで整えていく。
そうやって、少しずつでいいのです。
いちど止まっても、また動き出せばいい。
完璧を待っていたら、たぶん一生始まりません。
まずは、次の打ち合わせで税理士に「試算表は翌月何日くらいに出せそうですか」と聞いてみる。
あるいは、届いている試算表を10分だけでも見てみる。
そのくらいで十分です。
「ちょっと聞いてみよう」
その一歩だけでも、月次決算は動き出します。
まとめ
- 月次決算は「知っている」だけでは足りない。 機能しているかどうか が分かれ目
- 試算表の遅れは、経営判断と銀行対応の両方を後手にしやすい
- 月次で数字を見られる会社を重視する流れは、これから強まりうる
最初の1歩
- 自社の試算表が「翌月何日に出ているか」を確認してみる
- 出ている試算表を、社長自身が見ているかどうか振り返る
- 次の税理士との打ち合わせで、「月次決算をもう少し整えたい」と話題にしてみる
この記事の内容は、僕が先日出版した
『社長のための月次決算/銀行に見せられる数字の整え方』(Kindle)
をもとにしています。
本では、試算表・借入金一覧表・資金繰り表・予実管理の整え方を、社長向けにもう少し踏み込んで整理しました。気になった社長は、のぞいてみてください。
月次決算を整えるにあたって、自社の状況をいちど棚卸ししてみたい社長は、 個別相談 という選択肢もあります。よろしければ、ご検討ください。

