制度融資を利用するときの注意点

制度融資を利用するときの注意点

会社の銀行融資の種類として「制度融資」があります。そのメリットばかりに目が向いていると、見落としがちな注意点をお伝えしていきます。

目次

メリットばかりに目が向かぬよう

会社の銀行融資の種類として「制度融資」があります。制度融資とは、銀行だけではなく信用保証協会や自治体も関わる融資です。自治体が融資のあっせんや貸出原資を預託することで、銀行はより融資が実行しやすくなったり、会社は自治体から利息や信用保証料の補助を受けられたり、といったメリットがあります。

いっぽうで、利用するときの注意点もあるので気をつけましょう。具体的には3つ、次のとおりです。

  • 時間がかかる
  • 費用がかかる
  • 気遣いがいる

メリットばかりに目が向いていると、見落としがちな部分でもあります。こんなはずではなかった…と後悔することがないように、これらの注意点を押さえておきましょう。

制度融資を利用するときの注意点

メリットが魅力的な制度融資ではありますが、気をつけるべき注意点もあります。見落としているとデメリットにも繋がるところです。このあと、3つの注意点を順番に確認していきます。

時間がかかる

制度融資を利用するときの注意点、1つめは「時間がかかる」です。

冒頭、制度融資とは「銀行だけではなく信用保証協会や自治体も関わる融資」だといいました。ゆえに、融資が実行されるまでに時間がかかります。銀行だけが関わる融資(いわゆるプロパー融資)であれば銀行の審査だけで済みますが、制度融資では信用保証協会や自治体による審査も必要です。

関係者が多くなるほど、審査にも時間がかかることはわかるでしょう。ケースバイケースではありますが、申し込みから入金までが2~3ヶ月くらいのイメージです。これに対して、自治体が関わらない保証付き融資であれば1~2ヶ月くらい。プロパー融資であれば1か月未満となります。

したがって、制度融資は「時間がかかる」のが注意点であり、急ぎのときには適さない融資です。

もっとも、急ぎで融資を受けることがそもそもよくないことは、あわせて覚えておきましょう。言うまでもなく、危険な資金繰りだといえますし、急ぎで融資を受けようとする会社は銀行から嫌われます。計画性のない会社であり、場当たり的な資金繰りしかできない会社と見られるからです。

制度融資に限らず、融資の相談は余裕を持ってできるようにしましょう。それが可能であれば、銀行などの審査に時間がかかったとしても焦らずに済みます。

費用がかかる

制度融資を利用するときの注意点、2つめは「費用がかかる」です。

前述のとおり、制度融資は信用保証協会が関わる融資であり、融資を受けるにあたって会社には信用保証料の負担が生じます。自治体が全額補助してくれるケースもありますが、会社に負担が残るケースもあります。であれば、信用保証料という費用がかかるのは制度融資の注意点です。

いっぽう、プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)であれば、信用保証料の負担はなく、その分の費用はかかりません。よって、「そもそも、制度融資を利用する必要があるのか?」という見極めも大切です。

おカネを貸す銀行にとって、制度融資にはメリットがあります。信用保証協会が保証をしてくれるのであればリスクが小さく、自治体が貸出原資を預託してくれるのであれば貸しやすくもある。「だったら、プロパー融資ではなく制度融資をおすすめしよう」と考えることもあるわけです。

銀行がおすすめするからといって鵜呑みにしていると、本当はプロパー融資も受けられるのに、わざわざ費用をかけて(信用保証料を支払って)制度融資を受けていた…なんてことにもなりかねません。プロパー融資を受けられるチカラがある会社(≒利益・預金が多い会社)は要注意です。

最近では、いわゆる短期継続融資を対象にした制度融資もあります。短期継続融資とは、経常運転資金分(売掛金+棚卸資産−買掛金)の融資を受けるにあたり、期日一括返済とし、期日がきたら審査のうえで期日を更新する(つまり、借りっぱなし)という融資です。

その短期継続融資を制度融資で受けると、信用保証協会の保証が付くわけで「過剰保証」だといえます。なぜなら、経常運転資金自体が銀行にとっては「担保のようなもの」だからです(会社は、売掛金・棚卸資産を現金化すればそのおカネで返済ができる)。にもかかわず、会社が信用保証料を負担するのは…

短期継続融資は本来、プロパー融資で受けるべきであり、銀行がおすすめするからといって制度融資を受け入れるのではなく、プロパー融資での交渉からはじめましょう。

気遣いがいる

制度融資を利用するときの注意点、3つめは「気遣いがいる」です。

制度融資は銀行にとってリスクが小さく、貸しやすい融資だと前述しました。ゆえに、「どうせ融資をするなら、制度融資で融資をしたい」と考えている銀行もあります。この点で、これまで融資を受けたことがない銀行から制度融資の営業を受けたとしたらどうでしょう?

「利息も信用保証料も補助してもらえるし、だったら借りようかな」と考えて、すぐに借りてしまう社長もいます。ですが、これを見た既存の取引銀行(とくにメインバンク)がどう思うかは想像してみたほうがよいでしょう。おもしろくないと感じる銀行もある、ということです。

「その制度融資だったら、ウチが融資をしたかったのに。なんで、いままで取引もなかった銀行から借りてしまうのか」と考える銀行もあります。

典型例がコロナ禍におけるゼロゼロ融資です。ゼロゼロ融資は、銀行の新規開拓融資にも利用されたため、まさにいままで取引もなかった銀行からゼロゼロ融資を受けた会社が少なくありませんでした。結果として、メインバンクの融資残高よりも、ゼロゼロ融資の残高のほうが大きくなり、メインバンクとの関係性が悪くなってしまった…という会社もあります。

したがって、制度融資を利用する場合には、既存の取引銀行(とくにメインバンク)に対して気遣いがあったほうがよいでしょう。つまり、「他行から〇〇の制度融資の提案を受けています(御行でも取り扱いができるますか)」などと、まずはひと声かけてみるということです。

こういった気遣いができると、銀行との長期的な関係づくりに繋がります。

まとめ

会社の銀行融資の種類として「制度融資」があります。そのメリットばかりに目が向いていると、見落としがちな注意点をお伝えしました。

  • 時間がかかる
  • 費用がかかる
  • 気遣いがいる

こんなはずではなかった…と後悔することがないように、これらの注意点を押さえておきましょう。知らずにいると、思わぬデメリットを被ることにもなりかねません。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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