「短期継続融資はやめておけ」は本当か?

「短期継続融資はやめておけ」は本当か?

「短期継続融資で借りるのはやめておいたほうがいい」というハナシがありますが。むしろ、短期継続融資で借りれるようにしたほうがいい。その理由について、お話をしていきます。

目次

むしろ、短期継続融資で借りれるように

会社の銀行融資について、短期継続融資という借りかたがあります。ちなみに、短期継続融資とは?具体的には「短期の手形貸付」や「当座貸越」をいいます。この点、「短期継続融資で借りるのはやめておいたほうがいい」というハナシがあるようです。

が、僕は「やめずにむしろ、短期継続融資で借りれるようにしたほうがいい」とおすすめをしています。意見は人それぞれ、さまざまあってしかるべき。そのうえで、僕がどう考えているかをお話ししてみます。

なぜ短期継続融資をおすすめできるのか?その理由は3つ、次のとおりです。

  • 一括返済は非現実的
  • プロパー融資もある
  • 利息よりも預金残高

これらについて、もしかすると「勘違い」をしていることがあるかもしれません。勘違いしたままでいると、短期継続融資を過度に避けることになり、ひいては資金繰りを悪くしてしまいます。そのあたりに気をつけながら、上記3つの理由を確認していきましょう。

なぜ短期継続融資をおすすめできるのか

短期継続融資にはデメリットがあります。ただし、そのデメリットを過剰に受け止めているのであれば、勘違いだといってよいでしょう。デメリットを正しく理解することが、短期継続融資の積極的な活用につながります。

すなわち、デメリットの正しい理解が、なぜ短期継続融資をおすすめできるのかの理由にもなるということです。

一括返済は非現実的

なぜ短期継続融資をおすすめできるのか、理由の1つめは「一括返済は非現実的」です。

短期継続融資とは、「短期の手形貸付」や「当座貸越」だといいました。このうち短期の手形貸付は、期日が1年以内の手形貸付であり、期日には審査のうえで問題なければ更新(手形の書き換え)されます。つまり、実質的に「借りっぱなし」です。

いっぽうの当座貸越は、銀行が決めた限度額の範囲内であれば、自由に借りたり返したりができる融資をいいます。やはり、実質的に「借りっぱなし」とすることが可能です。ゆえに、既存の融資(長期の証書貸付=毎月分割返済)を短期継続融資に置き換えることで資金繰りがよくなります。

ところが、短期の手形貸付が期日に更新できず、一括返済を求められたら困る。当座貸越も契約期間(多くは1年ていど)を更新できず、一括返済を求められたら困る。だから、短期継続融資はやめておいたほうがいい、というハナシがあります。たしかに、その可能性はゼロではありません。

ですが、銀行も一括返済を求めれば会社がタイヘンになることはわかっています。よって、期日や契約は更新できずとも(会社の業績悪化などが理由で)、一括返済までは求めずに、長期の分割返済に切り替えるケースが大半だといってよいでしょう。一括返済は「非現実的」なのです。

したがって、非現実的な一括返済を過度には心配しないこと。それよりも、短期継続融資を活用することで、資金繰りがよくなるメリットに目を向けてみましょう。

プロパー融資もある

なぜ短期継続融資をおすすめできるのか、理由の2つめは「プロパー融資もある」です。

短期継続融資には、「短期の手形貸付」と「当座貸越」とがあることは前述しました。最近では、当座貸越が増えている傾向があります。そのうえで、地方銀行や規模の大きな信用金庫を中心に、プロパー融資による短期継続融資も見られるようになりました。

短期継続融資は銀行にとってはリスクが高い(貸しっぱなし)ことから、当座貸越で融資をするときには「信用保証協会の保証付き」もあるわけですが、会社にとっては好ましいことではありません。限度額まで借りていない場合であっても、限度額の保証をとられてしまうからです。

ところが、当座貸越だからといって必ずしも保証付きということではなく、プロパー融資も可能であることを覚えておきましょう。銀行に短期継続融資の相談をするときには、「プロパー融資で」とお願いをしてみるということです。

もちろん、「保証付きでなければムリ」と言われることはありますが、こちらからお願いしてみなければはじまらないものでもあります。銀行としては保証付きのほうが安心なので、銀行のほうからプロパー融資を提案してくれるケースは稀なのです。

何にせよ、短期継続融資は保証付きでしか借りれないと決めつけないようにしましょう。利益が出ている会社や預金残高が多い会社などはとくに、プロパー融資を受けられる可能性が高いです。

なお、短期継続融資の対象は経常運転資金であり、基本的には「経常運転資金の額(売掛金+棚卸資産−買掛金)が融資額の目安になります。あわせて覚えておきましょう。

利息よりも預金残高

なぜ短期継続融資をおすすめできるのか、理由の3つめは「利息よりも預金残高」です。

短期継続融資の金利は、長期の証書貸付に比べて高くなることがあります。前述したとおり、銀行にとってはリスクがある融資だからです。ゆえに、短期継続融資はやめておいたほうがいいとのハナシもあります。利息の支払いが多くなるのでもったいないとの考えです。

本当にそうなのでしょうか?仮に、長期の証書貸付に比べて、短期継続融資の金利が1%ほど高かったとします。1,000万円の融資を受けるにあたりどれほどの差になるのか、金額で比較してみましょう。

1,000万円×1%=10万円なので、1年で10万円です。法人税率が30%だとすれば、利息の節税効果を加味すると、実質的な負担は1年で7万円となります。ひと月あたりにすれば、6千円弱です。

つまり、長期の証書貸付と比べると、月6千円弱の追加負担で「借りっぱなし」にできることになります。長期の証書貸付は毎月分割返済によって預金が減っていくのに対して、短期継続融資であれば、借りっぱなしなので預金残高を高く維持できます。月6千円弱の負担であれば、利息よりも預金残高を優先するのが賢明だとする考え方もあるはずです。

利益がなくても会社はつぶれませんが、おカネがなくなれば会社はつぶれます。利益も大事ではありますが、おカネも大事です。利益(利息)にばかり目を奪われないようにしましょう。

まとめ

「短期継続融資で借りるのはやめておいたほうがいい」というハナシがありますが。むしろ、短期継続融資で借りれるようにしたほうがいい。その理由について、お話をしました。

  • 一括返済は非現実的
  • プロパー融資もある
  • 利息よりも預金残高

これらについて勘違いがあると、短期継続融資を過度に避けることになり、ひいては資金繰りを悪くしてしまいます。短期継続融資の理解を深め、短期継続融資を活用することで、資金繰りをよりよくできないかを検討してみましょう。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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