「知り合いの会社は、銀行に頼んだら、経営者保証を外してもらえたらしい」。個別相談で、そんなお話を聞くことがあります。言ってみることは、たしかに大事です。でも、外してもらえるような状況かは、ケースバイケース。たったひとつの話を、そのまま自社に持ち込む前に、いちど、いっしょに立ち止まってみたい。そんな話をします。
知り合いの会社が、外してもらえたらしい
きょうは、経営者保証を、この先どうしていきたいか、頭のどこかで考えはじめた社長に向けて書いてみます。
先に本記事の要点からいうと…
- 知り合いの成功例(たったひとつの話)を、そのまま自社に持ち込まない
- 抜き出したいのは、「なぜ、その会社は、外せたのか」の中身
- そのうえで、じぶんの会社の言葉で、当てはめ直す
先日、ある社長からのご相談で、こんな場面がありました。
もろもろの本題が一段落して、雑談のような時間になった、そのときのことです。社長が、ふと、こう切り出されました。
「知り合いの会社が、銀行に言ったら、経営者保証を外してもらえたらしいんですよ」
社長の目は、ほんの少しだけ、前のめりでした。
「うちも、そうしてもらえるんじゃないか」。そういう思いが、にじんでいました。
僕も、「たしかに、言ってみることは大事」だとおもいました。
ただ、その足で「よし、じゃあ言ってみましょう」とは、進みませんでした。
なぜ、その足で進まなかったのか。そのあたりの話を、順にしてみます。
気持ちはわかる。でも、そのまま持ち込むと、こじれる
社長の気持ちは、痛いほどわかります。
「知り合いはできた。だったら、うちだって、できるかもしれない」
そう考えたくなるのは、自然なことです。僕自身、こういう話を聞くと、社長といっしょに、いっとき「うちも、いけるかも」と期待しかけるところがあります。
ただ、すぐに、「知り合いは外れたと聞きました。うちも、外してもらえませんか」と切り出すのは、少し、待ったほうがいいでしょう。
というのも、銀行の側は、社長の「熱量」を見ているわけではないからです。
銀行が見ているのは、その会社が、外せる状態にあるのかどうか。財務の中身、法人と個人のおカネのわかれ方、日ごろの情報のやりとり。そういった材料から、冷静に判断しています。
だから、 「頼めば外れる」だけで押し込もうとすると、外せる条件の確認から、かえって遠ざかってしまう 。
「うちだって同じくらい頼んでいるのに」という熱意だけで銀行に向き合うと、話は、空回りしがちです。
銀行に聞くこと自体が、悪いわけではありません。むしろ、聞くことは、大事です。ただ、聞く前に、なにを見られるのかを、こちらで整理しておきたい。そういうことなのだとおもいます。
成功談も、失敗談も、おなじ「たったひとつの話」
ここで、少しだけ、視点を広げてみます。
社長が耳にする「知り合いの会社の話」は、成功談だけではありません。
「あの会社は、こうやって潰れたらしい」
「あの銀行は、頼んだら、金利が下がったらしい」
「あそこは、追加融資を断られたらしい」
いろんな話が、飛び交っています。そして、社長は、そのひとつひとつに、少しずつ、引っぱられているものです。
僕は、成功談も、失敗談も、実は「おなじ箱」に入っていると考えています。
「(経営者保証が)外れた」も、「外れなかった」も。
「借りられた」も、「借りられなかった」も。
結局は、そこにあるのは、「ひとつの事例」でしかない。
なので、その1件を、そのまま自社に貼りつけようとすると、無理が出ます。
危ういのは、「成功談か、失敗談か」ではなくて、ひとつの話を、中身を抜かないまま、まるごと真似ようとする態度のほう。
あるいは、まるごと避けようとする態度のほう。そこが、いちばん、気をつけたい入口だとおもうのです。
抜き出すのは、「なぜ、その会社は、外せたのか」の中身
では、どうするか。
たったひとつの話は、そのままでは使えません。でも、そこから、あるものを抜き出せば、その1件は、はじめて、よその会社でも使える形に変わります。
抜き出したいのは、「なぜ、その会社は外せたのか」の中身のほうです。
たとえば、経営者保証について、外せるかどうかを検討していくうえでの視点は、いくつかあります。法人と個人のおカネがきちんと分かれているか。財務の中身が、ある程度、整っているか。そして、銀行に必要な情報を、ふだんから渡していけているか。
これは、いわゆる「経営者保証に関するガイドライン」で示されている、3つの視点でもあります。
「あの会社が、外してもらえた」の裏側には、たいてい、そのあたりに手をかけてきた時間があります。
1日で整ったわけではありません。「頼む」のひとことで、片づいたわけでもないのですね。
抜き出したいのは、「言ってみたら外れた」の外側だけじゃなくて、「外せる状態になるまでに、なにを積み上げてきたのか」の中身のほうです。
そこまで抜き出せて、はじめて、その1件は、じぶんの会社にも「参考にできる話」に変わります。
うちの場合は、どうか——じぶんの会社の言葉で、当てはめ直す
中身を抜き出せたら、あとは、じぶんの会社に当てはめ直す。ここが、いちばん、時間のかかるところです。
たとえば、こんな問いを、じぶんに置いてみます。
- うちは、法人と個人のおカネのやりとりが、きれいに分かれているか
- ここ数年の財務の中身は、外から見ると、どう映るか
- 銀行に対して、じぶんから、必要なタイミングで情報を渡していけているか
これは、答えを、その場で出す話ではありません。むしろ、答えを、じっくり探していく、問いです。
ひとつでも、「うーん、そこは、あまり自信ないなぁ」というところが見つかったら、そのひとつが、いま、じぶんの会社の伸びしろでしょう。
そして、ここが、社長ひとりで、抱え込みやすいところでもあります。
じぶんの会社を、じぶんの目線だけで見つづけていると、どこが弱いかは、意外と、見えにくいものです。むしろ、外の目(顧問税理士でも、銀行の担当者でも、いっしょに立ってくれる伴走者でも)を通したほうが、当てはめは、進みやすい。
「知り合いは、外してもらえたらしい」を、ただの世間話でおわらせない。その先に、じぶんの会社の当てはめまで、持っていく。そこまでいけたら、その1件は、社長にとって、たしかに意味のある、1件になります。
まとめ
きょうは、個別相談で聞いた「知り合いの会社が、経営者保証を外してもらえたらしい」という話を入口に、たったひとつの話を、じぶんの会社に効かせるための、持ち帰り方について書いてきました。
要点を、3つに、まとめておきます。
- 知り合いの成功例(たったひとつの話)を、そのまま自社に持ち込まない。「頼めば外れる」だけで押し込むと、外せる条件の確認から、かえって遠ざかる
- 成功談も、失敗談も、おなじ「たったひとつの話」。危ういのは、中身を抜かないまま、まるごとコピーする態度のほう
- 抜き出したいのは、「なぜ、その会社は、外せたのか」の中身。そのうえで、じぶんの会社の言葉で、当てはめ直す
最初の1歩
こんど、知り合いの成功例を耳にしたら、いちど、こう問い返してみる。
「その会社は、なぜ、外せたのか?」
そして、もうひとつ。
「その理由は、うちにもあるか?」
このふたつの問いを、いちど通してみる。そこから抜けてくるものが、じぶんの会社にも効いてきます。
「その会社は、なぜ、外せたのか?」を、じぶんの会社に当てはめ直していく。そういう視点を、順番にお届けしているのが、無料メール講座 『銀行融資ラボ』 です。
たったひとつの話を、じぶんの会社の判断材料に変えていく。よかったら、のぞいてみてください。

