必要ないおカネを借りてもおカネがなくなるだけ、というハナシがありますが。必要ないおカネなどないし、必要になったら借りればいいというのは綺麗事。その理由について解説します。
おカネがなくなるのは別の原因だ
会社の銀行融資について、僕はよくこんなことをいっています。
「いまは必要ないおカネも、借りれるならば借りましょう」
これに対して、「必要ないおカネを借りても、そのおカネはなくなるだけ。だから必要ないおカネなど借りるな」という意見もあります。
が、それでもやはり、前述した僕の考え(いまは必要ないおカネも、借りれるならば借りる)に変わるところはありません。なぜなら、まず、おカネがなくなるのは「別の原因」だからです。つまり、借りたおカネをなくすような会社であれば、借りずともおカネはなくなります。
たとえば、赤字が続いている会社や、ムダ使いをする社長の会社です。ちなみに、ここでいうムダ使いとは、利益を生み出さない支出をいいます。たとえば、オーバースペックの設備を導入する、ステータス目的の社長車を買う、会社のおカネを社長個人に貸し付けるなど。
そういった別の原因があるにもかかわらず、あたかも借入によっておカネがなくなるかのようなハナシは「問題のすり替え」にほかなりません。
そもそも、会社における銀行融資(借入)は「預金の最大化」を実現できる手段であり、おカネがなくなるのとは真逆です。よって、「必要ないおカネを借りても、そのおカネはなくなるだけ」という話には、勘違いがあることを理解しましょう。
必要ないおカネなどないのが現実
とはいえ、「必要ないおカネ」を借りる必要があるのか?と、おもわれるかもしれません。結論、あります。なぜなら、「必要ないおカネ」などないからです。もう少し具体的にいうと、「いますぐにはおカネが必要ないとしても、将来にわたって必要ないとまではいえない」ということです。
いうまでもなく、事業は山あり谷ありです。良いときもあれば悪いときもあります。悪いときに必要になるのがおカネです。少々赤字が続いたとしても、おカネ(預金)があれば、そのいあだはしのぐことができます。
おカネがあるほど長い時間を耐えられるのであり、おカネがあるほど打ち手も多くなるので、おカネがある会社ほど、谷を乗り越えられる可能性は高まるのです。
理想をいえば、利益を出すことで預金を積み上げることですが、前述したとおり山あり谷ありでもあるので、利益だけで十分なおカネを持つには時間もかかります。そのあいだに、おカネが不足してつぶれてしまうのでは元も子もありません。
いざというときに備えて、年間売上高の半分くらいの預金は積み上げたいものです。それだけあれば、コロナ禍のように売上が激減したとしても半年は耐えられますから、立て直しまでの時間をかせぐことができます。事業転換に必要な資金としても役立つでしょう。
では、それだけの預金を持つことができている会社がどれほどあるのか?割合でいえば少数です。だから僕は、「(いまは必要ないおカネも)借りれるならば借りましょう」とお伝えしています。
必要なときに借りるのはムリゲー
必要ないおカネなどないのはわかった。でもそれなら、「必要なときに借りればいいじゃないか」という意見もあるでしょう。また、「必要なときに借りれる会社を目指しましょう」とのアドバイスもあります。が、はっきりいってムリゲーです。
大企業ならまだしも、中小企業(なかでもとくに小企業)にあっては「必要なときに借りる」など綺麗事だといってよいでしょう。目指すこと自体を否定はしませんが、現実的ではないことを理解しておく必要があります。
そもそも「必要なとき」とはどんなときなのか?おカネが必要なときであり、業績が悪くなっていて困っているときが少なくありません。大企業のように大きな信用と実績があればともかく、それらに不足がある中小企業に、銀行がカンタンにはおカネを貸さないことはあきらかです。つまり、業績が悪ければ「審査」によって弾かれることになります。
では100歩譲って、業績が良くておカネに困っているとしたらどうでしょう?業績が良いという点では、銀行が「貸せる」と考えても、「いまではない」と考えるかもしれません。銀行には、貸したいタイミングというものもあり(営業目標との兼ね合いなど)、いうなれば「思惑」があるからです。
このように、銀行による審査と思惑とがあるため、会社が「必要なときに借りる」のはムリゲーであり、「必要なときに借りれる会社を目指す」のも現実的ではありません。
よって、いずれ必要になるかもしれないおカネであれば、いまは必要ないとしても、「借りれるうちに借りておきましょう」ということをおすすめしています。会社が借りるにも貸すのは銀行であり、「必要だから・借りたいから」といって必ずしも借りられないのが銀行融資です。
まとめ
必要ないおカネを借りてもおカネがなくなるだけ、というハナシがあります。が、必要ないおカネなどないし、必要になったら借りればいいというのは綺麗事です。
本記事では、その理由について解説しました。必要なときに借りれる会社を目指すよりも、借りれるうちに借りれる(タイミングを逃さず)会社を目指すのがおすすめです。そのほうが、難易度は易しく、より早く資金繰りを安定させることができます。