このたび、顧問税理士向けの融資相談対応 実務キットをBrainにて発売しました。発売を機に、この教材をつくった背景にある考えをひとつ書かせてください。
融資相談の重たさの正体は、知識不足ではないのかもしれないのですね。
融資の話が来そうで、ちょっと重たい
先日、顧問税理士向けの融資相談対応セミナーを開催しました。
そのセミナーと同テーマを扱う教材をこのたびBrainにて発売したこともあり、税理士が融資相談に感じる重たさについて、あらためて整理してみます。
先に本記事の要点からいうと…
- 融資相談が重たく感じる原因は、知識不足ではなく「手順が見えていないこと」かもしれない
- 知識には限界がある。でも、手順に限界はない
- 完璧な答えを出さなくていい。手順に沿って整理して前に進めるだけで、社長の役に立つ
セミナー受講者へのアンケートには、こんな声がありました。
融資相談に関しては自信のないジャンルでしたが、こういった「型」を意識してのアプローチですと、ひとまず型に沿って整理していきさえすれば結論が出る、という安心感が持てました。
「自信のないジャンル」。
この言葉が、妙に残りました。
融資の話が振られそうだ、と感じて少し身構える。
あのお客さまから「融資」という言葉が出たらどう返そう、と頭をよぎる。
相談を受ける前から、重たさはもう始まっている。
そういう感覚を抱えたまま顧問業をしている税理士の方は、少なくないのではないでしょうか。
実は、僕自身にも覚えがあります。
知識を増やせば消えるとおもっていた。でも、そうではありませんでした。
そのことに気づくまで、だいぶ遠回りをしたわけで…
「知識が足りないから」ではなかった
重たさの原因は、知識不足だと考えがちです。
もちろん、融資の知識は大事なもの。持っておいたほうがいいのに間違いありません。
ただ、知識だけで対応しようとすると、困ったことが起きます。
知識がある範囲なら答えられる。でも、知らない話が出てきたとたんに、「わかりません」で話がぶつ切りになってしまうのです。
このぶつ切りを避けるために、税理士がとりがちな対応がもうひとつあります。
付き合いのある銀行を紹介する、というもの。
それはそれで、ひとつの選択肢ではあります。
ただ、「丸投げ」と言えなくもない部分はあります。
税理士としての関わり方が、そこで見えにくくなってしまうこともあるのですね。
知識が足りないときに社長の相談に対応する方法が、銀行紹介くらいしかない…
これが、重たさの本当の正体なのかもしれません。
自信が持てたのは、知識が増えたときじゃなかった
僕は、銀行融資の支援をほぼゼロから始めました。
独立する前、税理士事務所の一担当者だったころは、融資の話が出ると距離を取る側だったのです。
そこから独立して、勉強し、実践を重ねていきました。
本を読んだり、実際の相談に向き合ったり。その繰り返しです。
そのあいだ、ずっと不安もありました。
知識を増やしているはずなのに、重たさが消えない。次の相談で詰まったらどうしよう、という感覚がついてまわる。
ところが、あるとき気づいたのです。
自信が持てるようになったのは、知識が増えたからではなかった。
じぶんのなかで「手順」が固まったとき だと。
何を聞くか。
何を見るか。
どう返すか。
どこまで関わるか。
その順番が、じぶんのなかでカチッとはまったとき、融資相談に対する不安が大きく減ったのですね。
知識には、限界があります。
どれだけ勉強しても、必ず知らない話は出てくるものでもあります。
でも、手順には限界がない。
知らない話が出てきても、「いまはここまでがわかった。ここから先はこう進めます」と言える。
手順があれば、知識の限界を超えて動ける、ということです。
手順があれば、完璧じゃなくていい
セミナーのアンケートには、もうひとつ印象に残る声がありました。
まさに今、顧問先から融資の相談を受けているところでしたので、早速セミナーの型にはめて状況を整理してみました。追加で何を聞けばいいか、どこまで踏み込んだ回答をすればいいかが明確になり、自信を持って対応できそうです。
「まさに今、相談を受けているところ」。
そう言えるほど、融資相談は顧問税理士の日常に入ってきているのだとおもいます。
そして、この方が受け取ったものは、新しい知識ではありません。
追加で何を聞けばいいか。どこまで踏み込めばいいか。
その手順が明確になった、ということです。
手順があれば、わからないなりに次を考えられる。
その場で結論まで出せなくてもいい。
「今日はここまでで、次はこの部分を確認してから返しますね」と伝えられる。
社長を放置しなくて済むし、じぶんの不安も少しずつ減っていく。
完璧な答えを出さなくていい。
整理して、前に進める。それだけで社長は「相談してよかった」になります。
知識不足を埋めることよりも先に、手順を持つこと。
それが、融資相談の重たさをほどく入口ではないでしょうか。
まとめ
融資相談の重たさについて、まとめてみます。
- 重たさの原因は、知識不足ではなく「手順が見えていないこと」かもしれない
- 知識には限界があるもの。いっぽうで、手順に限界はない。手順があれば知らない話にも動ける
- 完璧な答えを出さなくていい。手順に沿って整理して前に進めるだけで、社長の役に立つ
最初の1歩
- [融資相談が重たいとき、重さの正体が「知識」なのか「手順」なのか、いちど切り分けてみる
じぶんのなかで手順が固まったとき、不安は大きく減りました。
その経験をもとに、顧問税理士の方が融資相談を受けたときの「聞いて・見て・返す順番」を整理したのが、今回の教材です。
よろしければ、のぞいてみてください。
知識には限界がありますが、手順に限界はありません。
融資相談の重たさが、ほんの少しでも軽くなるきっかけになればうれしくおもいます。

