【全東信の破産】助けは、間に合うとは限らない

【全東信の破産】助けは、間に合うとは限らない

取引先が倒産して、売上が宙に浮く。じぶんは何も悪くないのに、巻き込まれてしまうことがあります。そんなとき、「あとで手を打てばいい」は、間に合わないかもしれない。
2026年で最大規模と報じられる全東信の破産を入り口に、そんな話をします。

目次

巻き込まれる、ということ

今回は、じぶんの会社が「巻き込まれる」という話から、はじめてみます。
きっかけは、いま各所で報じられている、全東信の破産です。

先に本記事の要点からいうと…

  • 取引先の倒産のような外部要因は、こちらの努力では避けきれない。ある日、巻き込まれることがある
  • 「起きてから動けばいい」は、間に合わないことがある。コロナの緊急融資に、多くの会社が殺到したように
  • 大事なのは、平時に「おカネの入口を分けておく」「すぐ動ける関係をつくっておく」こと。足場は、事が起きる前にしか組めない

さて。まず、何が起きたのかを見ておきます。

2026年7月、全東信という会社が破産しました。クレジットカードの決済を代行する会社です。お店がカード決済で受け取るはずの売上金を、カード会社より先に立て替えて振り込む。そういうサービスで、飲食店を中心に、加盟店は20万店にのぼっていたと報じられています。

ところが、この会社が突然、倒れた。
すると、少なくとも2万店を超えるお店で、受け取るはずだった売上金が、宙に浮いてしまいました。1店あたり、数十万円から数百万円という規模だといわれています。

ここで、想像してみてください。

じぶんのお店は、ふつうに営業していた。お客さまは、いつものようにカードで支払ってくれた。売上は、たしかに立っている。
なのに、そのおカネが、入ってこない。
じぶんは、何も間違っていないのに。

あるお店の方が、SNSでこんなことを書いていました。
「組合がつなぎ融資をしてくれるらしい。でも、本来いらなかったはずの借金だ。悔しい」

この「悔しい」に、僕は、しばらく手が止まりました。

借りること自体が、つらいのではない。
じぶんの落ち度でもないのに、 本来なら背負わなくてよかったはずの借入を、背負わされる 。その理不尽さが、悔しいのですね。

これ、コロナのときと同じでした

この構図、どこかで見たな。
そう感じた方も、いらっしゃるかもしれません。

僕は、コロナのときを思い出しました。

あのときも、多くの会社が、じぶんの落ち度とは関係なく、売上を奪われました。緊急事態宣言、時短、休業。どれも、社長がどうにかできるものではありません。まさに、外から降ってきた話でした。

そして、そこで何が起きたか。

ふだんから手元のおカネが薄かった会社は、いっせいに、急な資金確保に追われることになりました。
国も、金融機関も、緊急の融資制度を用意してくれました。ここは、本当にありがたいことでした。

ですが、そこに、あまりにも多くの会社が殺到したのです。

申し込みが集中して、実際におカネを受け取るまでに、時間がかかる。そういう場面が、あちこちで起きました。
電話はつながらない。窓口には人があふれ、書類の確認を待つ列ができる。「1日でも早く」という会社が、何週間も順番を待つ。そんな景色を、僕は、すぐそばで見ていました。

ここに、大事な教訓があるとおもっています。

助けの手は、たしかに差し伸べられる。
でも、その手が、 じぶんのところに届くまでの「時間」 は、また別の話です。

「何かあってから、手を打てばいい」
これは、一見すると正しく聞こえます。ですが、多くの会社が同時に困る場面では、この考え方は、間に合わないことがある。

外から降ってくる災いは、こちらの都合を待ってはくれません。
そして、そのあとに走る窓口には、同じように困った人が、すでに行列をつくっているのです。

正直に書いておくと、外部要因は、こちらの努力ではどうにもならない部分が大きい。だから、「備えておきましょう」と言うことに、僕自身、ためらいがないわけではありません。
それでも、やっぱりお伝えしたい。助けが届くまでには、時間がかかる。そのことだけは。

制度は用意される。でも、間に合うとは限らない

今回の全東信の件でも、動きは早かった。

たとえば、日本政策金融公庫は、破産を受けて「特別相談窓口」を設けています。影響を受けた中小企業・小規模事業者などが対象で、経営環境の変化に対応するための融資制度も案内されています。(制度の対象や条件は変わりうるので、利用を考える際は、最新の公式情報でご確認ください)

こうして、素早く受け皿が用意されること自体は、やはりありがたいことだとおもいます。

ですが、ここで立ち止まっておきたいのです。

「制度がある」ということと、「じぶんが間に合う」ということは、実は別の話です。

制度は、あくまで入口。
その入口に、たくさんの人が同時に押し寄せたとき、順番はどうしても生まれます。書類をそろえ、審査を受け、実際に振り込まれるまで。そこには、必ず時間がかかる。

日々の支払いは、待ってくれません。
仕入れの代金、家賃、給料。これらは、「融資が下りるまで待ってください」とは、なかなか言えないものです。

「制度があるから大丈夫」
そう聞くと、少し安心します。
でも、その窓口に走るのは、じぶんひとりではない。ここは、忘れないでおきたいところです。

入口を、1社に握らせない

では、どうするか。

全東信の件が教えてくれるのは、 おカネの「入口」を、1社にすべて預けてしまう怖さ です。

売上を受け取る仕組みを、1社に握らせていた。その1社が倒れた瞬間に、売上そのものが止まってしまった。これが、今回いちばん痛かったところです。

だとすれば、備えの方向は、はっきりしています。
売上の入口を、1本に寄せすぎないこと。

決済でいえば、すべての売上入金を、1つの入口に集めすぎていないか。まず、そこを見直しておくことです。

もちろん、決済会社を何社も常時使い分けるのは、手数料やレジまわりの手間もかかります。すべてのお店にとって、現実的とは限りません。

ですが、売上が入ってくる道そのものが、まるごと1本に乗ってしまっていないか。もし止まったとき、別の入口に切り替える余地があるか。
そこを平時に確かめておくことには、意味があるとおもいます。

そして、これは決済にかぎった話ではありません。
おカネを調達する経路も、同じです。

付き合う銀行が1行だけだと、その1行の判断ひとつで、資金繰りが左右されます。ふだんから複数の金融機関と関係を築いておくと、いざというときの選択肢が広がります。銀行は、整えられた相談に、判断を返してくれる相手です。その相手を、複数持っておく。

入口も、経路も、1本に頼らない。
派手ではありませんが、これが、巻き込まれたときに効いてくる備えなのです。

平時に、足場をつくっておく

もうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。

融資は、困ってから駆け込むもの、というイメージがあるかもしれません。
ですが、いちばん借りやすいのは、実は、困っていないときなのですね。

業績が落ち着いていて、資金繰りにも余裕がある。そういう平時にこそ、銀行との関係を育て、必要なときに動ける枠をつくっておく。
これが、「すぐ動ける状態」をつくる、ということです。

ここで、以前の記事ともつながってきます。
手元のおカネを厚くしておくこと。これも、もちろん大事な備えです。ただ、今回いちばんお伝えしたいのは、厚みそのものよりも、 「いざというとき、すぐに動ける足場があるかどうか」 のほうです。

足場は、事が起きてからでは、組めません。
嵐のさなかに、足場を組みはじめる人はいない。晴れているうちに、静かに組んでおくものです。

もちろん、「とにかく借りて、経路を増やせばいい」という話ではありません。
返せる見通しがあること。毎月の返済が、資金繰りを圧迫しすぎないこと。このあたりを外すと、備えのはずの借入が、かえって会社を苦しくすることもあります。

そのバランスを見ながら、平時のうちに、足場を組んでおく。
巻き込まれてからでは、その足場を組む時間さえ、ないかもしれないのです。

まとめ

今回は、全東信の破産を入り口に、「事後では間に合わないことがある」という話を書いてきました。

要点を、3つにまとめておきます。

  • 取引先の倒産のような外部要因は、こちらの努力では避けきれない。ある日、巻き込まれることがある
  • 制度や助けは用意されても、みんなが殺到すれば、じぶんに届くまでに時間がかかる。コロナの緊急融資が、それを見せてくれた
  • 備えは、平時にしか組めない。おカネの入口を分け、すぐ動ける関係をつくっておくこと

最初の1歩

いまの会社のおカネの流れを、2つに分けて書き出してみる。

1つめは、売上が入ってくる入口。
現金か、振込か、カード決済か。決済代行をはさんでいるなら、そこが1社に集まっていないか。

2つめは、資金を調達する経路。
付き合っている銀行は何行あるか。公庫との接点はあるか。いざというとき、すぐ相談できる相手がいるか。

もし、どちらも「1本」だったなら。
それは、危ないというより、 足場を1本増やす余地がある 、ということなのだとおもいます。いまのうちに、その1本を、どう増やしておくか。

その整理から、いっしょにはじめたい社長へ、無料メール講座 『銀行融資ラボ』 をお届けしています。

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巻き込まれてから走り出すのではなく、晴れているうちに足場を組んでおく。
その組み方を、ラボの中でも、いっしょに考えていけたらとおもいます。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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