メルマガ3000号記念イベント|9/29・30 くわしく

決算書が読めないのではなく、目が一つしか渡されていない

「決算書が、いまいちよくわからなくて」
そう言った社長は、数字が苦手なわけではありませんでした。
渡されていた目が、一つだったのです。

目次

その決算書は、誰に向けて作られた一枚ですか

きょうは、決算書を毎年受け取っているのに「わかった」という感じがしない、という社長に向けて書きます。

先に本記事の要点からいうと…

  • 1枚しかない決算書を、税務署・銀行・社長の3人が読んでいる
  • 社長に渡されているのは、税務申告のための目
  • 読めるようになる必要はない。目を、1つ増やせばいい

「決算書が、いまいちよくわからなくて」という言葉は、社長からときどき聞くものです。

決算書を前にして、税理士の説明も受けて、それでも手応えがない。

このとき社長は、たいてい、じぶんのせいだとおもっています。数字が苦手だから。勉強していないから。そういう理由を、じぶんで用意しているわけです。

ですが、僕はそこを疑っています。

読む力の問題ではなく、渡されているものの問題ではないか、と。

そもそも、その決算書は、誰に向けて作られた1枚なのでしょうか。

1枚しかないのに、読み手は3人いる

決算書には、読み手が3人います。税務署と、銀行と、社長です。

税務署が見るのは、税金の計算が合っているかどうか。

銀行が見るのは、貸したおカネが返ってくるかどうか。

社長が見たいのは、会社がこれからどうなるか。

ただ、税務署と銀行には、それを見るための目があります。社長には、見たいものだけがある。

1枚しかないのに、読む目的が3つあるわけです。

そして、中小企業の決算書には、こういう現実があります。税務申告をするために作られている、という現実です。

税務申告をしなければいけないから、決算書を作る。決算書には本来、「会社の業績を正しく表す」という意味があって、社長がそれを経営に活かすところまで行けるといいのですが、そこまでたどり着いていないケースが、少なくありません。

これは、誰かが手を抜いているという話ではないのですね。期限があって、申告をしなければ会社が困る。だから、そこから先に手をつける。順番としては、当たり前のことです。

ただ、その結果として、社長の手元に残るものが決まってきます。

決算書といっしょに渡されるのは、税務申告のための目です。今期はいくら儲かって、税金がいくらになるのか。その目で読むぶんには、決算書はちゃんと読めます。

読めないのではなく、 その目で読めることは、すでに読めている

では、同じ1枚を、銀行はどう読んでいるのでしょうか。

同じ数字を、銀行は別の目で見ている

たとえば、利益です。

社長が見るのは、出た利益の額面です。今期は良かった、悪かった、と。

いっぽうで銀行は、その額面をそのまま受け取らないことがあります。一時的に出た利益ではないか、来期も残る利益なのか。中身を見直したうえで、この会社にどれだけ稼ぐ力があるのかを見ようとする傾向があります。

貸借対照表も同じです。

社長が見るのは、そこに書かれている計上金額です。ですが銀行が見ようとしているのは、その資産にいくらの価値があるのか、のほう。帳簿に書いてある金額と、いま持っている価値は、別のものだからです。

同じ数字を見ているのに、見ているものがちがう。

このあたりの具体は、以前に書きました(→ 利益剰余金はいくら?と聞かれて固まる前に読む記事)。売掛金・在庫・固定資産について、それぞれ何を確かめるといいのかを並べてあります。

ここでお伝えしたいのは、確かめ方そのものよりも手前のことです。

社長が悪いのでもなく、銀行が意地悪をしているのでもない。ただ、渡されている目が1つで、その目には映らないものがある、という話なのです。

とはいえ、こう書いている僕自身が、最初からそう考えていたわけではありません。

僕は、決算書の表面だけを社長と話していた

税理士になって、独立して、しばらく経ってからのことです。

継続的な勉強会に参加するようになって、銀行が決算書をどう読んでいるのかを、少しずつ知りました。一度でわかったのではありません。何度も聞いて、じぶんの手元の決算書に当ててみて、徐々にです。

あー、銀行からはそう視えてたのか。

そうおもったときに、いっしょに来たものがあります。

僕は、決算書の表面だけを、社長と話していたな、と。

利益が出ましたね、去年より良いですね。そういう話を、僕はしていました。銀行がその利益をどう受け取るのかを、僕は知らなかった。貸借対照表に並んだ資産についても、計上金額をそのまま前提にして話していました。

後悔というより、 恥ずかしさで背筋が冷えるような感じ でした。

やっかいなのは、徐々にわかった、というところです。

一度にひっくり返ったのなら、その日を境に分けられます。ですが徐々に見えてくると、気づいたときには、もう戻れないところまで来ている。あの社長にも、この社長にも、僕は表面の話をしていた。

さかのぼって意味が変わる過去が、それなりの量になって残るわけです。

だから僕は、この話を、社長の力不足として書くことができません。

だから僕は、「読めるようになりましょう」とは言わない

社長は、何も間違っていません。 渡されていなかっただけです。

税理士を信じているから、疑わない。疑わないから、別の読み方があることにたどり着かない。信じていることが、そのまま見えなさになっている。これは、社長の不注意ではないとおもうのです。

だから、「税理士に聞けば教えてくれますよ」とも書きません。信じている相手を疑ってください、という注文ほど、難しいものはないからです。

僕がお伝えしたいのは、目を1つ増やす、というだけのことです。

読めるようになる必要はありません。決算書を勉強し直す必要も、たぶんありません。いま渡されている目のとなりに、もう1つ置いてみる。それだけで、同じ1枚から見えるものが変わってきます。

ついでに、白状しておきます。

僕もいま、全部が見えているわけではないのです。

銀行融資は、表向きは企業と企業のやりとりですが、実際に向き合うのは社長と銀行員という、1人と1人です。人が入るぶん、そこには固有のものが出てきます。だから、すべてを完璧に見通すことはできません。

できるのは、たくさんの場面を見て、最大公約数を探しておくことくらいです。そのうえで、その会社ではどうなのかを、そのつど確かめにいく。

見えるようになる、がおわることはありません。それでも、1つ目より2つ目のほうが、確実に見えます。

まとめ|読めないのではなく、渡されている目が一つしかない

きょうは、決算書の読み手について書いてきました。

要点を、3つにまとめておきます。

  • 1枚しかない決算書を、税務署・銀行・社長の3人が読んでいる。読む目的は3つある
  • 中小企業の決算書は、税務申告をするために作られている。だから社長に渡されるのは、その目
  • 読めるようになる必要はない。目を1つ増やせば、同じ1枚から見えるものが変わる

最初の1歩

決算書を受け取った日のことを、思い出してみてください。 最初に説明された数字は、何だったでしょうか。

利益か、税額か。おそらく、そのあたりだとおもいます。

それが、いま社長に渡されている目です。悪いものではありません。ただ、1つだということが、わかればいい。

その1枚は、誰に向けて作られたものだったのか。


「じゃあ、2つめの目はどこにあるのか」。そう感じたら、つぎは、その目を借りにいく番です。

銀行が決算書のどこを見て、何を確かめようとしているのか。無料メール講座 『銀行融資ラボ』 でも、その順番を扱っています。

『銀行融資ラボ』(登録は無料です)

よかったら、のぞいてみてください。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
くわしいプロフィールはこちら

目次