プロンプトを工夫しても、AIから返ってくる答えは、なんとなく「じぶんの話じゃない」。
ちゃんとしてる。でも、刺さらない。
実は、AIに渡すべきは「指示」ではなく、もっと別のものではないか。という話をします。
AIが「無難な答え」しか返してこない理由
ChatGPTやClaudeなど、生成AIを使う人が、目にみえて増えてきました。
そのときによく感じるのが「正しいけど、なんかちがう」という違和感ではないでしょうか。
先に本記事の要点からいうと…
- AIから無難な答えしか返ってこないのは、AIが「あなたが誰なのか」を知らないままだから
- プロンプトを磨くだけでは、この問題は解消しきれないものがある
- AIに渡すべきは、こまかな指示よりも、こちら側の輪郭だと考える
たとえば、こういうことです。
ある社長から「AIに節税のアイデアを聞いてみたんですけど…」と相談されたことがあります。
画面を見せてもらうと、たしかに正しいことが並んでいる。倒産防止共済、小規模企業共済、生命保険…
ただ、その社長の業種や規模、性格に踏み込んだ話は、ひとつもありませんでした。
AIは、なぜそうなるのか。
答えは、シンプルです。
AIは「あなたが誰なのか」を知らないから、最大公約数の正解を並べるしかありません。
つまり、こちらが「あなたはこういう人と話しているんだよ」と先に渡しておかないと、AIはずっと「知らない人」のままで答え続けてしまうのです。
これがいちばんの原因なのですね。
Claudeとは、CLAUDE.mdとは
ここで、軽く前置きを。
このあとの話で、僕は「Claude」と「CLAUDE.md」という言葉を使います。Claudeを使っていない方には、なじみがないとおもうので、ごく簡単に。
Claude(クロード) は、ChatGPTなどの仲間にあたる生成AIです。Anthropic社が開発しています。僕は、ふだんの仕事や発信で、相棒として使っています。
CLAUDE.md は、そのClaudeに「じぶんのこと」を事前に渡しておく、専用のファイルです。会話のたびに、Claudeはこのファイルを読み込んでから返答してくれます。いわば、AIへの自己紹介書のようなものです。
ChatGPTにも「カスタム指示(Custom Instructions)」という似た仕組みがありますし、ほかの生成AIにも同種の機能が用意されているはずです。
ですので、Claudeを使っていない方も「ふだん使っているAIに、同じ考え方を当てはめると?」という視点で、読み進めていただけたらとおもいます。
迷ったときの優先順位を書いておく
僕が、CLAUDE.mdに書いていることの1つめ。
それは「迷ったときの優先順位」です。
AIが判断に迷ったとき、何を最優先するかの順番を書いておく。
僕の場合、1位は「じぶんらしさがあるか」です。
正確さでも、効率でもなく、らしさを先に置いています。
これを書いておくと、AIの判断がブレにくくなります。
たとえば、文章を整えてもらうとき、正確さを最優先にすると、内容は合っているけれど、どこか他人の文章みたいになる。
らしさを最優先にすると、多少の不正確さはあっても、じぶんの口から出たような文章に近づきます。
どちらがいいかは、用途によります。
ただ、何も書いていないと、AIは勝手に「最大公約数の正解」を選んでしまうのですね。
だからこそ、優先順位を渡しておくことに意味があるわけです。
社長の仕事に置き換えてみるなら、こういうことです。
社員に判断を任せるとき「品質と納期、どちらが優先?」と決めておかないと、迷ったときに人それぞれの判断になってしまいますよね。
AIも同じで、優先順位がないと、迷ったときに「無難な側」に倒されてしまうものです。
一般論に流れたら引き戻す指示を書いておく
2つめは「一般論に流れたら、引き戻す指示」です。
AIは、放っておくと、どうしても無難な一般論に向かってしまいます。
たとえば「銀行融資の戦略を考えて」と頼むと、教科書に書いてあるような答えを並べてくる。
それはそれで正しいのですが、僕がほしいのは、僕の状況にあわせた答え、なのですね。
そこで、CLAUDE.mdには、こう書いてあります。
「一般論が続いたら、僕の具体的な体験に引き戻す問いを立てよ」
すると、AIが「これまでの経験で、近い場面はありませんでしたか?」と、聞き返してくれるようになります。
こちらが体験を話すと、その体験を踏まえた答えが返ってくる。
「一般論止まり」が、ほどかれていくわけです。
これは、AIの弱点を、ルールで補う考え方です。
AIは、あらゆる人の最大公約数を答えるのが得意です。
いっぽうで、目の前の「あなた」に踏み込むのは苦手なところがあります。
だから、踏み込むためのスイッチを、こちらが先に置いておきます。
ちなみに、これは人間同士の会話でも、同じことがいえそうですよね。
相手が一般論ばかりだったら「具体的にはどんな場面で?」と聞き返す。
そうすることで、会話の解像度が上がっていくわけです。
会話のリズムまで設計しておく
3つめは「会話のリズム」です。
CLAUDE.mdには、口調や呼び方だけでなく、返答の順番まで定義してあります。
たとえば、こんな順番です。
「まず受け止める→整理する→背中を押す」
僕がなにかを相談したとき、AIはまず「うん、それ気になるよね」と受け止めてくれます。
そのあとで「整理すると、こういう論点になる」と整理に入ります。
さいごに「だとすれば、こう動いてみたら?」と、背中を押してくれます。
この順番が決まっているだけで、会話の心地よさが、まるで違ってきます。
作業効率の話ではなく、会話の質そのものを設計している、という感覚に近い。
いうなれば、AIのキャラ設定です。
正直、はじめのうちは「キャラ設定なんて大げさかな」と感じていました。
でも、無機質なAI相手に、本気で壁打ちできるかというと、僕にはできなかったのです。
こちらが深く考えるためには、相手にも「手触り」がいる。
気づけば、AIに向かって「なんて言おうか」と固まることが、ぐっと減っていました。
これは、Claudeだけの話ではない
ここまで、CLAUDE.mdに書いていることを、3つご紹介してきました。
ただ、僕がほんとうに伝えたいのは、Claudeの使い方の話ではなくて。
AIに「何をさせるか」より「誰と話しているか」を渡しておく という考え方の話です。
これは、Claudeに限らず、どんなAIにも当てはまります。
ChatGPTでも、Geminiでも、ほかのAIでも、似たような仕組みは用意されているはずです。
「プロンプトを工夫する」という発想は、AIに正しい命令を出す話。
それはそれで、もちろん大事です。
でも、それだけでは、AIはずっと「知らない人」のまま、なのですね。
そうではなくて、こちら側の輪郭を先に渡しておく。
じぶんの優先順位、じぶんの弱点を補ってほしい指示、じぶんが心地よい会話のリズム。
そういうものを渡しておくことで、AIは「じぶん専用の相棒」に近づいていきます。
CLAUDE.mdは、AIへの「指示書」というより、AIへの「自己紹介書」に近いものです。
そう捉えてみるだけで、AIとの付き合い方が、少し変わってくるのではないでしょうか。
まとめ
さいごに、本記事の要点を3つ。
- AIから無難な答えしか返ってこないのは、AIが「あなたが誰なのか」を知らないから
- 渡すべきは「指示」ではなく、優先順位や引き戻しのスイッチ、会話のリズムなど、こちら側の輪郭
- AIに「何をさせるか」より「誰と話しているか」を渡しておくと、返ってくる答えが変わってくる
最初の1歩
ふだん使っているAIの「設定」や「カスタム指示」の画面を、いちど開いてみる。
そこに、何が書かれているか。書かれていないなら、何を書いておきたいか。
それを5分だけ眺めてみるところから、始めてみてはどうでしょうか。
AIの答えは、画面の中でつくられているようでいて、ほんとうは、その手前で決まっているのかもしれません。

