融資相談は、つなぐより、整理する

融資相談は、つなぐより、整理する

「いちど銀行に相談してみては」と返していた、昔の僕の話です。あれは支援だとおもっていたけど、いまから見ると、すこし違ったのかもしれません。

目次

「いちど銀行に相談してみては」と返していたころの話

今回は、両方に向けて書いてみます。
税理士の側には「つなぐ前に何をするか」を、社長の側には「銀行に行く前に何を考えるか」を。

先に本記事の要点からいうと…

  • 「銀行に相談してみては」は、紹介ですらなく、課題の丸投げになりがち
  • 整理しないままつなぐ・つながれるのは、両側にとって動けない時間になる
  • 整理がある状態でつなぐと、銀行への相談は別ものになる

それでは、順を追ってお話ししていきましょう。

「いちど、銀行に相談してみては」。
昔の僕は、融資相談を受けると、よくそう返していました。

相手は銀行融資の専門家なのだから、社長が直接話したほうが早い。
そう考えていたのですね。

ただ、いま振り返ると、あれは支援というより、課題の丸投げに近かったとおもいます。

ここから、もうすこし整理してみます。
税理士の側の話と、社長の側の話、両側の角度で。

あれは支援ではなく、丸投げだった

何が「丸投げ」だったのか。
ここを、すこし掘り下げてみます。

社長が「うちって、銀行から借りられるかな」と聞くとき、その背景には、複数の問いがあります。

ざっくり言うと、こんな3つです。

  • いま、借りるべきなのか
  • 借りたら、これからの資金繰りはどうなるのか
  • 借りない場合、何が起きるのか

「銀行に相談してみては」と返してしまうと、この3つの問いを整理しないまま、社長を銀行に送り出すことになります。

すると、何が起きるか。
社長は、3つの問いを抱えたまま銀行に行きます。
そして、銀行に行ったところで、この3つの問いは、銀行側では整理してくれません。

「銀行は、整理された申込みに判断を返す側」 なのですね。社長の状況を一から整理するのは、その手前にある仕事です。

そう考えると、整理しないまま銀行に送り出すのは、紹介ですらありません。
社長が抱えている課題を、そのまま渡してしまっている。
だから僕は、これを「丸投げ」だと考えています。

実は、僕がこの感覚に気づくまでに、けっこう時間がかかりました。
社長に「銀行に相談してみては」と返したら、それで仕事はおわった気がしていたからです。

ところが、社長の側はそうじゃない。
銀行で話がうまくいかなければ、結局また僕のところに戻ってくることもあります。
「やっぱり、よくわからなくて…」と。

それだけならまだいいほうかもしれません。
「この税理士に相談しても、丸投げか」と思われてしまえば、もう融資の話は持ちかけてもらえなくなることもあるのです。

どちらにせよ、整理を後回しにしただけ。
税理士の側でも、社長の側でも、誰の仕事もうごいてはいなかったのです。

社長側も、つないでもらうだけで満足してはいけない

ここから、視点を社長の側に切り替えてみます。

これは、税理士から「銀行に相談してみては」と返された社長だけの話ではありません。じぶんの判断で「銀行に相談しに行こう」とする場面でも、おなじです。

整理がないまま銀行に行くと、社長の側でも、こんなことが起きやすくなります。

  • 銀行の見方に委ねるだけになってしまう
  • よくわからないまま、書類だけ揃えておわる
  • 借りる・借りない、の判断軸を持たないまま、先に進むことになる

このどれも、社長にとっては「課題の先送り」になりがちです。

なぜそうなるのか。
銀行員の方は、社長の申込みに対して、プロとして判断を返してくれる相手です。整理して持っていけば、それにちゃんと向き合ってくれる方々ですよね。

裏を返せば、整理は、社長の側で揃えて持っていくもの。
だから、社長の側にも「整理してから銀行に行く」が要るのです。

具体的には、銀行に行く前に、さきほどの3つの問いを、じぶんごととして描いておくのです。

「うちは、いま借りるべきなのか」
「借りたら、これから資金繰りはどう動くのか」
「借りなかったら、何が起きるのか」

ここを描けているかどうかで、銀行員との会話は、別ものになります。

裏を返せば、社長の側で整理ができている状態をつくれれば、税理士からの「銀行に相談してみては」も、すこし違った意味を持つようになるのかもしれません。

整理がある状態でつなぐ。
整理がある状態でつながれる。
ここから先は、別の景色になるのですね。

いまは、つなぐ前に「なぜ、いま借りるのか」を一緒に描く

じゃあ、いまの僕は何をしているか。

社長から融資の相談を受けたとき、まずやろうとしているのは、答えを出すことではありません。
「いまの状況を、いっしょに整理してみませんか」という姿勢です。

整理するのは、さきほどの3つの問いです。
この3つを、紙に書き出すような感じで、社長といっしょに描きます。
描いてみると、たいてい、なにかしらの輪郭が見えてきます。

「いまは借りなくてもいい局面だな」
「借りるとしたら、この使い方になる」
「借りなかったら、半年後にここがしんどくなるかもしれない」

これは、僕が答えを出したわけではありません。
社長の状況を、いっしょに整理しただけです。
ただ、整理しただけで、社長は次の動きが見えるようになります。

実は、いまでも、すぐに「じゃあ、銀行に」と言いたくなる瞬間はあります。
ただ、そこでひとつ、立ち止まる。
3つの問いを並べてみる。
そうすると、つなぐ前にやれることが、ちゃんと見えてくるのですね。

整理という言葉は、ちょっと地味です。
答えを出すほうが、専門家っぽい。
でも、社長が本当にほしいのは、専門家の答えそのものより、 「次の一歩が見えること」 だったりするのだと、僕は考えています。

これが、いまの僕の関わり方です。

つなぐより、整理する

ここまでを、もういちど整理してみます。

融資の相談で大事なのは、銀行につなぐことそのものではない。
つなぐ前に、整理があるかどうか。
それで、銀行に行ったあとの景色が、ぜんぜん違ってきます。

整理は、誰の仕事か。
これは、税理士の側と社長の側、両側にあります。

税理士の側は、「社長の状況をいっしょに整理する」役割。
社長の側は、「銀行に行く前に、じぶんの問いを描いておく」役割。

両側に整理がある状態で、銀行につなぐのであればつなぐ。
これが、僕がいま考えている融資支援のかたちです。

逆に言うと、整理がない状態でつなぐと、両側ともに動けない時間が長くなります。
社長は、銀行で言われたとおりに動いてしまう。
税理士は、紹介で仕事をしたつもりになってしまう。

つなぐより、整理する。
これは、税理士から社長へ向ける問いでもあり、社長がじぶんに向ける問いでもあるのかもしれません。

まとめ・つなぐより、整理する

「いちど銀行に相談してみては」。
かつての僕は、その返事で、支援したつもりになっていました。
紹介ですらないのに、相談を促しただけで、仕事をしたつもりになっていたのですね。

社長の側から見ても、銀行に行けば何かしら答えが出る、というのは幻想かもしれません。
銀行は、判断する側であって、整理してくれる場所ではない。
だから、社長の側にも、銀行に行く前に問いを描いておく時間がいるのです。

要点をまとめてみます。

  • 「銀行に相談してみては」は、紹介ですらなく、課題の丸投げになりがち
  • 整理しないままつなぐ・つながれるのは、両側にとって動けない時間になる
  • 整理がある状態でつなぐと、銀行への相談は別ものになる 最初の1歩

紙でもメモでもいいので、つぎの3つの問いを書き出してみてください。

  • いま、借りるべきなのか
  • 借りたら、これからの資金繰りはどうなるのか
  • 借りない場合、何が起きるのか

書き出してみると、いま、何が見えていて、何が見えていないかが、すこし整理されてきます。
これが、銀行につなぐ前の入口になります。

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どちらも、「つなぐ前に整理する」ための研究室です。
よかったら、入口として使ってみてください。
きっかけにしてもらえたら、うれしいです。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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