相手の目を見て、話していたいから

相手の目を見て、話していたいから

半年前から、打ち合わせのメモを取らなくなりました。代わりに、机にボイスレコーダーを置いています。そうしたら、戻ってきたものがあったのですね。

目次

メモを手放したら、会話が戻ってきた

今回は、半年使ってみた「ボイスレコーダー+AI」の運用について、書いてみます。
「会話に、戻ってこられた」という、ささやかな手応えのあった話です。

先に本記事の要点からいうと…

  • 道具より、運用の順番。ボイスレコーダーじゃなく、iPhoneのボイスメモでも代用できる
  • AIに渡しているのは、テンプレと、整理のルール。これがないと、AIは平均化装置になってしまう
  • 戻ってきたのは、効率の話じゃなくて。「聴く」「考える」「行動する」時間だった

それでは、順を追ってお話ししていきましょう。


このところ、お客さまなどとの打ち合わせの机に、ボイスレコーダーを置くようになっています。
半年ほど前からの、ささやかな習慣の変化です。

会話に、戻ってこられた

書きながらいま気づくのは、いちばん効いたところは、想像と少し、ちがっていたということです。

「効率化されました」、ではなかった。
もっと、手前のところで、なにかが、変わっていたのですね。

ひとことで言うと、こんな感じです。

会話に、戻ってこられた。

メモを取りながら聞く、というのは、それ自体、悪い方法ではありません。
書きながら聞くことで、頭のなかが整理されていく感じもあります。

ただ、メモに集中していると、どこかで、会話の集中が落ちる瞬間があるのですね。

ペンや入力の先に、視線が落ちる。
うなずきの間が、すこしだけ、遅れる。
相手の声と、僕の反応のあいだに、ほんのわずか、不自然な間が、はさまります。

それから、もうひとつ。
人力で取るメモには、どうしても、抜けが出てきます。
あとから「あれ、なんて言ってたっけ?」と、思い出す時間が、けっこう、かかるのですね。

これが、僕にとっては、地味に、ネックでした。

ずっと、使ってこなかった

ボイスレコーダー自体は、昔からあった道具です。
とくべつ、新しいものではありません。

それなのに、僕は、ずっと使ってこなかったのですね。

理由はシンプルで、録音したあと、それをどう活かすかが、面倒だったからです。
聞き返す時間も、文字に起こす時間も、整理する時間も、ぜんぶ、それなりにかかります。

それなら、最初からメモを取ったほうがはやい。
ずっと、そう、おもっていました。

生成AIが、つながった

変わったのは、生成AIを、日常で使うようになってからでした。

文字起こしのテキストを、AIに渡す。
議事録のかたちに、整えてもらう。
TODOを、抜き出してもらう。

手元を動かすのは、貼り付けと、ちょっとした指示だけ。
あとは、AIが、そこそこのところまで、持っていってくれます。

「あ、これなら、ボイスレコーダーにも意味が出てくるなあ」
そう、おもえたのですね。

ようやく、僕のなかで、 ボイスレコーダーと生成AIが、つながった瞬間 でした。

ただ、半年やってみてわかったのは、肝心なのは道具のほうじゃなかった、ということです。

道具は、なんでもいい

僕がいま使っているのは、Soundcore Workという、Anker製のAIボイスレコーダーです。
襟元につけたり、机に置いたりして使う、小さなマイク型。

ただ、そういった特別な道具がなくても、なんとかなるともいえます。

iPhoneのボイスメモアプリでも、いまは録音と文字起こしまで、できてしまうからです。
無料ですし、追加の道具もいりません。

正直に言うと、ボイスレコーダーは、あってもなくてもいい。
そう、おもっています。

大事なのは、順番

それなら、なぜ、わざわざボイスレコーダーを使っているのか。

理由はあって、専用の道具のほうが、襟元につけたりできるし、録音開始・停止の操作もお手軽だから。

ただ、これも、ささやかな話です。

肝心なのは、もうすこし手前、運用の「順番」のほうにあります。

録る → 文字起こしをする → AIに整理してもらう → 蓄積する → 次回前に予習する。

この順番が組めていれば、道具は、わりとなんでもいいでしょう。
逆に、ここが組めていないと、どんなに高性能なボイスレコーダーを使っても、録ったままで、活きてこないはずです。

Soundcoreアプリも、文字起こしまでで止めている

実をいうと、僕は、Soundcoreのアプリでは、文字起こしまでしかやっていません。

このアプリには、AI要約とか、TODOの抜き出しといった機能も、ちゃんとあります。
ですが、僕は、そこは使わず、文字起こししたテキストをコピーして、別のAI環境、具体的にはCursorに貼り付けています。
(Cursorというのは、AIを組み込んで使えるエディタのようなツールです)

なぜそうしているか。
そのほうが、僕の手元にある「テンプレ」と「整理のルール」を、ちゃんと反映してくれるからです。

ここが、たぶん、いちばん地味で、いちばん効いているところだと感じています。

僕がAIに渡しているもの

ここからは、すこし、運用の具体に入ります。

僕は、お客さまごとにフォルダを作って、こんな構造で記録を残しています。

[お客さまの名前]/
  ├ 基本情報.md(会社の基本情報、契約状況など)
  ├ TODO.md(進行中のタスク管理)
  └ 履歴/
      ├ 2026-05-11.md
      ├ 2026-06-15.md
      └ ...

このうち、AIにいちばん任せているのが、「履歴/YYYY-MM-DD.md」と「TODO.md」のほうです。

履歴ファイルのテンプレ

履歴ファイルは、こんな構造のテンプレを用意してあります。

  • 打ち合わせ概要(日時・場所・参加者)
  • 議題・目的
  • 会話内容(論点ごとに見出しで分けて整理)
  • 決定事項
  • 💡 発生したTODO(優先度付き)
  • 次回予定

こういったテンプレを、AIにあらかじめ渡してあります。

文字起こしのテキストを貼り付けて、「このテンプレに沿って、整理して」と指示すると、AIは、項目別に、きれいに振り分けてくれます。

たとえば、30分の打ち合わせで、議題が5つ並んだとき。
AIは、ぜんぶの議題を拾って、決定事項とTODOを抜き出し、次回への持ち越し事項まで分けてくれます。
(これが人力だと、それなりに時間がかかることはわかるでしょう)

TODO側の整理ルール

履歴ファイルの「💡発生したTODO」に書かれたものは、お客様ごとのTODO.mdに転記しています。

TODO.mdは、こんな構造です。

  • 🔴 優先度:高(期限あり)
  • 🟡 優先度:中(通常タスク)
  • ⏸️ 待ち(先方アクション)
  • ✅ 完了

これも、AIに「このルールで整理して」と渡してあります。

すると、AIは、新しいTODOを優先度別に振り分けて、サマリーの件数まで自動でカウントしてくれるのですね。

ぜんぶ、人力でやっていたことを、AIが肩代わりしてくれている、ということになります。

文脈を、ちゃんと渡してから通す

ひとつだけ、強調しておきたいことがあります。

このテンプレと整理ルール、AIに「渡しておく」ことが、本当に大事です。

なにも渡さずに、文字起こしのテキストだけ、ポンとAIに投げる。
すると、AIは「世の中の平均」にあわせて、無難な議事録を作ります。
僕の業務スタイルに合った、ちょうどいい粒度のものは、まず、出てきません。

「AIに通すと平均化される」と、よく言われます。
これは半分ほんとうで、半分ちがう、と僕はおもっています。
文脈や、テンプレや、ルールを、ちゃんと渡してから通すと、AIは平均化装置ではなくて、僕の手の延長になってくれるのですね。

録ったあとは、Obsidianに蓄積する

整理してもらった履歴ファイルとTODO.mdは、Obsidianに蓄積しています。

Obsidianというのは、簡単にいうと、テキストファイルをノートのように管理できるツールです。
僕は、お客さまごとのカルテを、ここに置いています。

何が起きるかというと、過去の記録が、いつでも、すぐに取り出せるようになるのですね。

たとえば、「前回までの打ち合わせで、A社の社長は何を気にしていたか」を確認したいとき。
ファイルを開けば、議題も、会話の流れも、決定事項も、TODOの進捗も、ぜんぶ揃っています。
記憶を頼りに思い出す時間が、ほぼ、なくなりました。

単発じゃなく、ループとして回る

ここが、地味に、効いているところです。

「録っているから、聴ける」のは、ひとつの会話だけじゃなくて。

録音 → 文字起こし → AIで整理 → Obsidianに蓄積 → 次回前に予習。

この、ぜんぶがつながったループとして、回っていきます。

ひとつひとつは、たぶん、目立つ変化じゃありません。
ただ、ループが回りつづけることで、僕とお客様のあいだに、共有された記憶のようなものが、積み上がっていくのです。

これは、僕ひとりの記憶を、はるかに超えるところまで、行ってくれます。

次回の打ち合わせ前も、AIに任せている

ループのなかで、もうひとつ、AIに任せている部分があります。

次の打ち合わせの前に、Claude(AI)に、Obsidianの該当フォルダを読み込んでもらって、予習のためのメモを作ってもらう、というやり方です。

予習メモには、こんなことが入ります。

  • 直近までの打ち合わせの要旨
  • まだ完了していないTODOの一覧
  • 前回からの宿題
  • 今回の打ち合わせで確認すべきこと

これらを、打ち合わせの前にざっと目を通しておけば安心です。

「前回ご相談いただいた件、その後どうなりましたか」

打ち合わせのときには、こんなことが、自然に言えるようになります。

「前回ご相談いただいた、〇〇の件、その後どうなりましたか」
「前々回お話しした、××のTODO、僕のほうでこう動きました」

過去の文脈を踏まえた状態で、会話に入れることができます。

これは、お客さまにとっても、たぶん、すこし、うれしい場面かもしれません。
「ちゃんと覚えていてくれているんだな」と、感じてもらえる場面でもあるからです。

ループが、完成する

ここまで来ると、ループが、完成します。

録音 → 文字起こし → AIで整理 → Obsidianに蓄積 → AIで予習 → 次の打ち合わせ → また録音。

一周してみると、ひとつひとつの作業は、それほど大したものじゃありません。
ですが、つながったループとして回りつづけることで、「会話に戻ってこられる」のは、その一回限りじゃなくて、ずっとつづくものになっていきます。

これが、半年やってみて、僕が、いちばん腑に落ちたところでした。

残ったのは、効率の話じゃなかった

ここまで書いてきて、もういちど、振り返ってみます。

ボイスレコーダーを置いて、AIに整理を任せて、Obsidianに蓄積して、AIに予習までしてもらう。

たしかに、作業時間は、ぐっと、減りました。
打ち合わせのあとの整理時間は、ほぼゼロです。
「確認漏れがないかな」と気にしていた、夜の不安も、消えました。

これだけ並べると、いかにも「AIで効率化しました」みたいな話に、聞こえるかもしれません。

ただ、僕の感覚では、たぶん、逆なのです。

戻ってきたのは、「聴く」「考える」「行動する」時間

AIに作業を渡したから、僕は、人間にしかできないところに、戻ってこられました。

打ち合わせの場では、お客さまの目を見て、話を聴いていられる。
打ち合わせの前は、過去の文脈を踏まえて、じぶんの考えを深めておける。
打ち合わせのあとは、必要な行動を、すぐに、起こしにいける。

聴く。考える。行動する。
ぜんぶ、僕じゃないと、できないことです。

そして、いま、僕は、この3つに、ちゃんと時間を使えるようになっています。

準備は、相手への誠実さでもある

ひとつ、つけ加えたいことがあります。

打ち合わせ前の予習も、AIに任せている、と書きました。
でも、これは、サボっているわけじゃない、というのが、僕のなかでの整理です。

予習を「作業」として人力でこなすか、AIに任せるか。
これは、同じ準備でも、ぜんぜん、ちがいます。

人力で予習をすると、「過去の議事録を読み返す」「TODOを整理する」「次回の議題を考える」、ぜんぶで30分とか1時間とかかかるでしょう。
そのあいだに、考えることや、行動できる時間は、削れていきます。

ですが、AIに予習を任せると、僕は「お客さまの状況を踏まえて、じぶんなら何を提案するか」を、ゆっくり考える時間が、できます。
「いま、こちらから動いたほうがいい行動」があれば、打ち合わせ前に、動きにいけます。

つまり、準備は「作業」だけじゃなくて、「考えること」と「行動すること」の部分があるのだとおもうわけです。
作業のところはAIに任せて、僕は、考えることと行動することのほうに、時間を使う。

これは、結果として、相手への誠実さにも、つながっていくものと考えています。

記憶でカバーできるなら、それでいい

もう一段、正直に書いておくならば。

ここまでの話は、ぜんぶ「(人間の)記憶でカバーできるなら、要らない」ものでもあります。

過去のお客さまとの会話を、ぜんぶ覚えていられる。
TODOも、頭のなかで漏らさず追える。
次回の議題も、すっと出てくる。

そういう方なら、たぶん、この仕組みは、なくてもいいのですね。

ただ、僕は、そこまで自信がありません。
だから、記録に頼っています。

そして、そう正直に認めるところから、始まる仕組みもあるんじゃないかな、とおもっています。

同じ時間を使うのなら

さいごに、ひとつ。
僕のなかには、こんな前提があるのですね。

同じ時間を使うのなら、作業じゃなく、考えることや行動に使いたい。

AIに任せることは、サボることでも、効率化することでもなくて。
作業に消えていた時間を、「考えること」と「行動すること」の側に、戻してあげること。

たぶん、それが、僕にとっての「AIとの付き合い方」の、いちばんの核なのだとおもいます。

まとめ

きょうは、半年使ってみた「ボイスレコーダー+AI」の運用について、書いてきました。

要点を、3つにまとめておきます。

  • 道具より、運用の順番が肝。ボイスレコーダーじゃなくて、iPhoneのボイスメモでも代用できる。順番が組めていれば、道具は替えがきく
  • AIに渡しているのは、テンプレと整理ルール。これがあるから、AIは平均化装置じゃなくなる。文脈を渡してから、通す
  • 戻ってきたのは、効率の話じゃなかった。「聴く」「考える」「行動する」時間が、戻ってきた

最初の1歩

今回の最初の1歩は、こちらです。

  • 次の打ち合わせで、いつものメモに、録音を併用してみる

いきなりメモを手放さなくても、だいじょうぶです。
まずは、いつもどおりメモを取りながら、iPhoneのボイスメモなどで、録音もしておく。
打ち合わせが終わったら、その録音をAIに渡して、議事録やTODOに整理してもらう。

その一回だけでも、「録っておくと、あとから聴ける」というささやかな安心が、感じられるとおもうのですね。

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このテーマは、僕のSubstack「モロトメジョーの独白」のほうにも、独白寄りで書いた記事があります。

「録っているから、聴ける。」というタイトルで、こちらでは、運用の話より、もっと内側で感じていることを書きました。

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「同じ時間を使うのなら、作業じゃなく、考えることや行動に使いたい」。
そう、おもえる方の参考になれば、うれしいです。

きょうは、そんなところで。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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