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外に投げるなら、「銀行に聞いてみては」と同じ

外に投げるなら、「銀行に聞いてみては」と同じ

財務コンサルの会社に、税理士事務所が加わったそうです。税務は税理士事務所が、財務は財務の会社が。役割分担をする形です。外に出すか、じぶんで持つか。僕がどちらを選んでいるかを、書いてみます。

目次

財務コンサルの会社に、税理士事務所が加わりました

きょうは、顧問先から融資や資金繰りの相談を受けている税理士のかたに向けて書いてみます。

先に本記事の要点からいうと…

  • 財務を外に出すか、じぶんで持つか。どちらも成り立つ形
  • ただ「外に投げる」という判断は、かつて僕が「銀行さんに相談してみては」と言っていたのと、構造が同じだった
  • 税務には、答えを決めるためのルールがある。財務には、社長の意思まで決めてくれるルールがない。だから、伴走の余地はそちらにある

先日、こういう動画を見かけました。

「財務コンサルだけでは終わらない。Arribaが税理士事務所を設立した理由」

株式会社Arribaという会社があります。元銀行員のかたが集まって、中小企業の財務担当者をアウトソーシングで引き受ける事業をされている。社長と銀行のあいだ、社長と税理士のあいだに入る立場です。

その会社に、税理士事務所が加わりました。Arriba税理士事務所といいます。所長は、税理士歴18年以上の松井友行税理士です。

新しく事務所を立ち上げたわけではありません。もともと松井税理士が個人で開業されていた事務所が、屋号を変えて参画した形です。株式会社Arribaとは、別の事務所になります。

ホームページには、こう書かれています。

Arribaグループとして、税務と財務を役割分担して支援

税務は税理士事務所が、財務・資金調達・銀行対応は株式会社Arribaが。そういう形です。

動画のなかでは、これまで税理士と協力しながら進めるなかで、必ずしもどの税理士とも同じようには動けなかった、という話も出ていました。決算の着地を整えて、翌期の資金調達につなげていく。そこまで一緒にやれるかどうかは、相手によって変わる、と。

これは、わかる話です。

そして、形としても合理的だとおもいます。税務は税務の専門家が、財務は財務の専門家が。それぞれの持ち場で力を出したほうが、社長にとってもいいはずです。

ここまで読んで、「ウチもどこかと組んだほうがいいのかな」とおもった税理士のかたもいるかもしれません。

その前に、僕自身の話をさせてください。

かつての僕も、外に投げていました

いまの僕は、銀行融資の支援を仕事のひとつにしています。顧問先からもスポット相談でも、融資や資金繰りの話を受けています。

ただ、はじめからそうだったわけではありません。

勤めていたころ。顧問先の社長から融資の相談を受けたとき、僕はこう答えていました。

「銀行さんに、相談してみては?(そのほうが確実ですよ)」

親切のつもりでした。じぶんより詳しい人に聞いてもらったほうが、正しい答えが返ってくる。そう考えていたのです。

でも、あれは 投げていただけ でした。

社長は、目の前にいる僕に聞いたのです。毎月、会って言葉を交わしている人に。それを、別のところへ回したのが僕でした。

だとすると、こうなります。

財務を外の会社に任せるというのも、投げ先が変わっただけで、投げていることは同じなのではないか。

銀行に投げるか、財務コンサルに投げるか。渡した先の精度は、たしかに違うでしょう。専門の人が受けてくれるなら、社長にとっての答えはよくなる。そこは、間違いありません。

ただ、投げるという動作そのものは、変わっていません。

こう書くと、外に出す形を悪く言っているように読めるかもしれません。そうではないのです。僕自身が投げる側にいたわけで、この形を外から批評できる立場ではありません。

そのうえで。じぶんはどちらを選ぶのか、という話をします。

税務と財務は、決まり方が違う

まず、税務と財務のあいだに線を引かせてください。ここが、僕の判断の土台になっています。

税務は、税法にしたがって判断するものです。

事実が確定しているなら、それに沿って計算するしかありません。もちろん、その事実をどう認定するか、どの方法を選ぶか。そこには判断が入ります。ただ、判断の拠りどころは、こちらの気持ちではなく法令のほうです。

動画のなかで、松井税理士が「血の通った税務をやりたい」という話をされていました。意思疎通のない税務は、税務ではない、という趣旨です。

その気持ちは、わかる気がします。

ただ、僕は少し違うことを考えています。税務そのものに血が通うかというと、そこは納得しづらいところがあるのですね。

伝え方には、姿勢が出ます。どう説明するか、どこまで噛み砕くか。そこには、たしかに人が出る。でも、事実が決まっているなら、税額も決まります。そこに僕の考えが入る余地は、ありません。

いっぽうで、財務や資金繰りには、ルールがないのです。

たとえば、役員報酬。

「節税を考えると、いくらにしたらいいですか」

こう聞かれることが、あります。

僕はいつも、税金は判断基準の1つに過ぎません、という話をします。

役員報酬を下げれば、たしかに個人の負担は軽くなります。ただ、そのぶん会社に利益が残るので、法人税は増える。そして、社長個人の手取りは減ります。

そこで、聞くわけです。それで、生活は大丈夫ですか、と。

会社におカネを残すより、じぶんで使いたいという社長もいます。お子さんの教育費がかかる時期なら、なおさらです。逆に、いまは会社に厚くしておきたい、というかたもいる。

どれが正解か。決まっていません。

だから、まずは個人でいくら必要か。節税の加減は、そのあとの話になります。

そして、この「いくら必要か」に答えられるのは、社長だけです。税法は、そこまで教えてくれません。

税務は、法令に答えを寄せる。財務は、社長の意思に答えを寄せる 。僕は、そう分けています。

そして、伴走の余地がより大きいのは、後者のほうです。決まっていないからこそ、聞き取る余地が生まれます。

目指しているところは、たぶん同じ

ここで、さきほどのホームページに戻ります。

松井税理士の紹介文に、こう書かれていました。

過度な節税だけを目的とするのではなく、正しい税務会計を土台に、会社に利益と資金を残すこと

これは、僕が役員報酬の話でしている内容と、向いている方向が同じです。

節税を目的にしない。着地のほうを先に見る。おそらく、同じことを言っています。

なので、僕はこの形を否定しません。同じ景色を見ている人が、違う道を選んだ。そういうことなのだとおもいます。

違うのは、体制のほうです。

税務と財務を、2人で分けて持つのか。ひとりで両方持つのか。そこだけが違う。

そして僕は、ひとりで持つほうを選んでいます。

それでも、じぶんで持つほうを選ぶ

なぜか。

税理士なのだから、税務ができるのは当たり前だと考えているからです。

厳しい言い方に聞こえるかもしれません。でも、税務ができるというのは、この資格の前提のほうです。そこは、差がつくところではないのだとおもいます。

差がつくのは、その先に何を持っているか です。

僕の場合は、それが財務でした。銀行融資と資金繰りです。

財務でなくてもいいと、僕はおもっています。人事でも、事業計画でも、ITでも。社長の話をさいごまで聞ける領域が、税務の外にひとつあればいい。

ただ、その部分を外に出してしまうと、手元には税務だけが残ります。

どこまでを、じぶんの持ち場にするか。似た話を、以前べつの記事にも書きました。

👉 回せる数と、見きれる数

その記事は、顧問先の「数」の話でした。今回は「幅」の話です。

数と幅。決めかたは違いますが、どちらも先に決めておかないと、あとからでは選べません。

窓口が分かれると、社長は迷う

もうひとつ、社長の側から見た話も書いておきます。

僕は、スポット相談も受けています。顧問契約ではなく、そのときだけの相談です。

以前、こういうことがありました。(守秘義務は守りつつ…)

相談に来られた社長には、財務を見てくれている会社(コンサルタント)が、すでについていました。そして、その相談ごとについても、そちらで聞いたあとでした。

聞いたあとのものを、もういちど持ってこられたのです。

このとき僕がおもったのは、社長の側の手間についてでした。

窓口が分かれていると、社長は 「これは誰に聞く話か」を、じぶんで振り分けることになる 。そこが、けっこうな負担なのではないか、ということです。

税金の話は税理士に。資金繰りの話は財務の担当に。分かれていれば、わかりやすい。

でも、実際の相談は、そんなふうに分かれて出てきません。

さきほどの役員報酬が、まさにそうです。あれは税金の話であり、社長の生活の話であり、会社の資金繰りの話でもあります。ひとつの相談のなかに、3つとも入っている。

分かれた窓口のどちらに持っていっても、返ってくるのは片側の答えです。

ただ、これは連携の設計しだいで小さくできる話でもあります。Arribaさんのように、はじめからグループとして組まれているなら、社長が迷う場面は少ないのでしょう。

そのうえで、僕は分けないほうを選んでいる。それだけのことです。

僕もまた、Arribaさんと方向性は同じなのであり、実行するにあたっての手段が違うだけ。そういう話をしています。

まとめ|投げるか、持つか

きょうは、財務を外に出すか、じぶんで持つかについて書いてきました。

要点を、3つにまとめておきます。

  • 財務を外に出すか、じぶんで持つか。どちらも成り立つ形。ただ「外に投げる」という判断は、かつて僕が「銀行さんに相談してみては」と言っていたのと、構造が同じだった
  • 税務は、法令に答えを寄せる。財務は、社長の意思に答えを寄せる。だから、伴走の余地は財務のほうにある
  • 税務ができるのは、税理士の前提のほう。差がつくのは、その先に何を持っているか

最初の1歩

  • この1か月に顧問先から受けた相談で、「それは銀行(あるいは、ほかの専門家)に聞いてみてください」と返したものがなかったか、思い出してみる

思い出したら、そのとき社長がなぜ僕に聞いたのかも、いっしょに考えてみてください。たぶん、答えの正確さだけを求めていたわけではないはずです。

顧問先からの融資相談に向き合っている税理士のかたへ。「何を聞き、何を見て、どう整理するか」を、YouTubeでも順番にお話ししています。

顧問税理士の融資支援チャンネル / 税理士ジョー
👉 https://www.youtube.com/channel/UCpB_p3zZIQQ1feQRnl8oaXQ

投げるか、持つか。どちらを選んでもいいのだとおもいます。

ただ、その領域を外に出したあと、じぶんの手元に何が残っているか。いちど、数えてみてもいいのではないでしょうか。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
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